DIME MAGAZINE
『けんもほろろ』という言葉を一度は耳にしたことがあっても、正しい意味を理解している人は少ないのではないでしょうか。『けんもほろろ』の意味のほか、語源や具体的な使用シーン・例文、類義語についても紹介します。
「けんもほろろ」とは
『けんもほろろ』という言葉を正しく使うために、まずは意味や語源について確認していきましょう。
言葉の意味
『けんもほろろ』には、人の頼み事や相談などを無愛想に拒絶するという意味があります。例えば誰かから依頼を受けたとき、相手の話をしっかりと聞いたうえでできない理由を述べて断るのではなく、いとも簡単にできないと断ってしまう様子を表現する際に使用されます。
他者に拒絶されたとき、自分が拒絶したときのいずれのケースでも用いることが可能で、このほか『取り付くしまもない』さまを表す言葉として用いられる場合もあります。
語源は雉の鳴き声
『けんもほろろ』語源は、雉（キジ）の鳴き声が関係しており、雉の鳴き声は『けん』や『ほろろ』という擬音語で表すことができます。
雉の鋭くて遠くまで響くハスキーな鳴き声は聞く人によっては無愛想に聞こえる場合があり、『けん』『ほろろ』の鳴き声を重ね合わせて、現在の『けんもほろろ』という言葉が生まれたと考えられています。
このほか雉の鳴き声と、思いやりがない・けちで欲深い様子を表す『慳貪（けんどん）』、荒々しく人を叱り付ける様子を表す『剣突（けんつく）』が掛け合わさったという説もあります。
羽音を指すという考え方も
『けんもほろろ』の『ほろろ』は、雉の鳴き声であると同時に、雉が飛び立つ際の羽音や羽ばたく様子を表しているという説もあります。
『ほろろ』に関しては、古今和歌集に『春の野の しげき草葉の 妻恋ひに 飛び立つきじの ほろろとぞ鳴く』という和歌があります。この和歌は、恋しい雉に向かって飛び立つときに『ほろろ』と鳴いている情景をイメージしたもので、ここから、雉が羽ばたく様子を『ほろろ』と表現するようになったと考えられます。
語源には諸説あるものの、『けんもほろろ』という言葉は雉の鳴き声や羽音がきっかけとなって生まれた可能性は高いでしょう。
「けんもほろろ」の使い方と例文
(出典) photo-ac.com
『けんもほろろ』は、あっさり拒絶される様子や拒絶された状況を表すことができます。『けんもほろろ』の正しい使い方や、日常会話で使える例文について紹介します。
依頼をあっさり拒絶する様子を表す
『けんもほろろ』だけで依頼をあっさり拒絶される様子を表し、後に『に』を加えて『けんもほろろに』と変化させることで、より詳しい状況を説明することができます。『けんもほろろに』として、拒絶された状況の結末を付け加えると、まとまりのある文章にすることも可能です。
また、『けんもほろろ』だけで拒絶された状況を表すことができるので、自分や他人が相手からあっけなく拒絶された場合にも使えます。
「けんもほろろ」を使った例文
『けんもほろろ』は、以下のような使い方をすることができます。日常的に使える表現ですので、取り入れやすい具体的な例文を見ていきましょう。
- 憧れの先輩に仕事の相談を持ち掛けたところ、けんもほろろに断られて傷心した
- 気合いを入れて企画のプレゼンをしたが、けんもほろろに突き返されてしまった
- 取引先の担当者にけんもほろろな対応をされてしまい涙した
「けんもほろろ」の類義語
(出典) photo-ac.com
『けんもほろろ』は、ほかにも似たような意味合いを持つ言葉があります。ここでは、『けんもほろろ』の類義語を紹介します。
「取り付く島もない」
『取り付く島もない』とは、相手の態度が冷たい様子や、頼れるところがないという意味です。この『島』には『よりどころ』という意味合いがあり、頼りにしたいのに、そのきっかけがつかめずに近寄ることすら難しいことを表しています。
以下、『取り付く島もない』の例文を紹介します。
- 上司は私の話を聞く気は一切なく、取り付く島もない
- 彼はものすごく忙しい様子で、取り付く島もないほど事務的な対応だった
- 売り上げトップの営業マンに秘訣を聞いたが、知らないの一点張りで取り付く島もなかった
「にべもない」
『にべもない』とは、無情にあしらわれる様子や愛想がない様子を表す言葉です。また、素っ気ない話し方という意味合いもあり、会話の中で相手に思いやりや、気遣いを欠いた話し方をする人を指す言葉でもあります。
『取り付く島もない』よりも、『けんもほろろ』と近しい表現として使用できます。
- 先輩への頼み事は、忙しいタイミングだったのかにべもなく断られてしまった
- 取引先に営業をしたが、話も聞いてもらえずにべもない返答でガッカリした
- 休日に友人を食事に誘ったところ、にべもなく断られてしまった
- 素っ気ない人に見えてしまうから、にべもない言い方はしないほうがよい
- 普段はにべもない態度を取っている上司だが、プレゼンを褒めてくれたのでとてもうれしくなった
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