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ディナーがちょっとリッチに!トップソムリエが指南するジョージアワインと和食の〝ダブル世界遺産〟マリアージュ

2021.06.15

今、日本で「ジョージア」という国への関心が高まっている。松屋やファミリーマートで人気に火が点いた「シュクメルリ」を食べたことがある方もいるのではないだろうか。

そして、オレンジワインを始めとしたジョージア・ワインも、日本で少しずつ認知されてきている。実は、そのジョージア・ワインと相性が抜群なのが、日本人に身近な「和食」である。

「クヴェヴリ」と呼ばれるかめ容器で造るジョージア・ワインと和食は、ユネスコ無形文化遺産に登録されている。「ジョージア・ワインと和食のペアリング」セミナーで、ダブル世界遺産を家庭で楽しむ方法を聞いた。外食がなかなか難しい今、そのペアリングに挑戦してみるのはいかがだろうか。

一般的には地中に埋めてワイン造りに使用される「クヴェヴリ」

ナショナル・ワインエージェンシー・オブ・ジョージアに任命された日本市場におけるジョージアワイン・アンバサダーの大橋健一MWが、ジョージア・ワインと和食を家庭で楽しむ方法を日本のトップソムリエと考案し、この度パンフレットが完成した。今回はお披露目も兼ねたセミナーに参加した。

はじめに、シュクメルリの人気に伴いメディアへの出演も多い、ティムラズ・レジャバ駐日臨時大使が挨拶した。

「ジョージア・ワインは8000年の歴史をはじめとして様々な切り口がありますが、その中でも嬉しいのは、和食との相性が非常に良いことです。実際にいろいろなお店で和食との相性を試しましたが、ジョージア・ワインは和食の素材、旨味という繊細な味を引き立て、非常に合います。それぞれ2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された、『同級生』のようなものです。そのペアリングをこれからも大事に訴求していきたいと思っています」

8000年の歴史を誇るジョージア・ワイン

ジョージアは考古学上のワイン発祥国であり、8000年の歴史と500以上の土着品種を誇る。ジョージア・ワインは1500円前後から、テーブルワインとして楽しめるワインも多く販売されている。ジョージアを代表するブドウ品種は以下の3つだ。

ルカツィテリ(白ブドウ) 

柑橘系の香りが特徴。酸は比較的高めで、フレッシュでライトな味わいに仕上がることが多い。

ムツヴァネ(白ブドウ)

洋梨や桃など、種のあるフルーツによく例えられる。酸が抑えられ、少しリッチな印象があるブドウ品種。

サペラヴィ(黒ブドウ)

果肉まで赤いブドウ品種で、濃いめの色調と豊富なポリフェノールを含む。

ジョージア・ワインには、ステンレスタンクや樽で醸造するヨーロピアン・スタイルと、クヴェヴリで造る2つの製法があり、クヴェヴリ醸造がユネスコ無形文化遺産に該当する。

ルカツィテリやムツヴァネをクヴェヴリで造る場合、白ブドウの皮や種ごと漬け込んで発酵・熟成させるため、渋みも感じられるオレンジ色のワインとなる。現地ではアンバーワインと呼ばれている。

ジョージア・ワイン×和食でダブル世界遺産を体験!

今回の料理を考案したのは、「コンラッド東京」エグゼクティブソムリエの森覚氏、ワイン・テイスターの大越基裕氏、ソムリエ・エクセレンスの松木リエ氏。

上記3種のブドウ品種と2つの製法で6パターンのスタイルに分け、「家庭で少し頑張れば作れる料理」を目指して考案された。

セミナーでは8種類のワインをテイスティングした。森ソムリエによるワインと料理の解説や、家庭で真似できるポイントをご紹介したい。
(※)クヴェヴリ醸造によるワインのみが「ダブル世界遺産体験」に該当する。

ルカツィテリ(白ブドウ)のヨーロピアン・スタイル

1.2018 Didebuli Rkatsiteli Tbilvino(1540円)

「レモンやグレープフルーツの柑橘の香りが立ち上がり、ハーブや白い花の香りもあります。ピュアでさわやかさとやや複雑性を伴ったアロマです。ルカツィテリの特徴は『酸』で、後半に苦味が現れます。フレッシュ&フルーティなワインで、家庭で楽しみやすいです」

おすすめの料理

写真左:カニとミョウガの土佐酢和え、写真右:カジキと揚げレンコンの蜂蜜ポン酢

ルカツィテリの「酸」を基調とした味わいに、酸のある料理を合わせている。さらに「旨味」を与える要素があると、ルカツィテリの後味の苦みと同調するという。

「カニとミョウガの土佐酢和え」の土佐酢は、カツオの旨味やフレーバーを加えることで、よりルカツィテリに合う。

「カジキと揚げレンコンの蜂蜜ポン酢」は、ハチミツが入ることで、ワインの後味の苦みと同調してコクが出てくる。また、ルカツィテリは魚介系との相性が非常に良い。

(ポイント)
・ルカツィテリの特徴は柑橘系の香りと酸、後半の苦み。
・塩気がある味付けにルカツィテリは非常に合う。
・料理には酸だけでなく、+αで旨味、コクを加えること。

ムツヴァネ(白ブドウ)のヨーロピアン・スタイル

2.2019 Mtsvane JSC Corporation Kindzmarauli(1628円)

「桃、ネクタリン系の核のあるフルーツの華やかな印象が強く出てきます。穏やかな酸とジューシーな果実味を感じ、後半はやや心地良い苦味がありますが、全体的にはチャーミングなやわらかい印象のワインです。初心者にも飲みやすいと思います」

果実味や酸の穏やかなムツヴァネはお肉との相性が良く、特に豚肉がおすすめだそうだ。

おすすめの料理

写真左:豚肉と長ネギの酒蒸し煮 、写真右:ウドの酢味噌和え

「豚肉と長ネギの酒蒸し煮」は、ワインで蒸すと酸が入るが、お酒で蒸すとやわらかく芳醇な味わいになる。「箸が止まらなくなるくらい本当においしいです!」と森ソムリエは太鼓判を押す。

「ウドの酢味噌和え」は、味噌の甘みとコク、やわらかく深みのある味わいが、ムツヴァネの味わいやテクスチャーに合う。ワインを含むと前半は味噌と合い、後半はウドのミネラル感と旨味がマッチする。

(ポイント)
・果実味と酸の穏やかなムツヴァネには、豚肉や味噌の甘みとコクとの相性が抜群。
・ワインのやわらかいテクスチャーと、豚肉の甘みを伴った油脂分が非常に合う。

ルカツィテリのクヴェヴリ・スタイル(アンバーワイン)

3.2018 Rkatsiteli Nikoloz Antadze(3850円)

「びわのような黄色いフルーツと、苦みを連想させる皮の香りもあります。酸と果実味の丸い印象の中に苦味と渋みがしっかりと溶け込み、全体的にやわらかい味わいです」

4.2018 Hillside Rkatsiteli Archil Nasvlishvili(4180円)

「金柑のはちみつ漬け、オレンジピールの印象が強く、その中にハーブや紅茶のニュアンスがあり、複雑性が感じられるアロマです。味わいは酸で始まり、金柑やオレンジピールのフレーバーが広がり、中盤から酸とともに伸びてくる苦味、渋みが余韻まで長く残ります」

おすすめの料理

写真左:焼き鮭の南蛮漬け、写真右:舞茸と生ハムのかき揚げ

「舞茸と生ハムのかき揚げ」は、ルカツィテリの土っぽい印象の部分で舞茸、塩気と油脂分を欲するところで、生ハムを合わせている。

「焼き鮭の南蛮漬け」は、鮭を焼くひと手間で焦げた印象が加わり、火入れされることである程度テクスチャーがある方が、アンバーワインには合うという。

(ポイント)
・ルカツィテリのアンバーワインに天麩羅は好相性。塩気があるものと滋味深い素材を入れること。
・南蛮漬けは鮭を焼くひと手間と、唐辛子のスパイシーさを加えるのがおすすめ。

ムツヴァネのクヴェヴリ・スタイル(アンバーワイン)

5.2017 Kakhetian Mtsvane Qvevri Vazisubani Estate(2420円)

「熟した柿、オレンジピール、花の香りと、ダージリンティーのような香りもややあります。非常に充実感がある果実味と穏やかな酸があり、クヴェヴリからくる渋みと苦みがきます。芳醇でリッチなストラクチャーのアンバーワインです」

6.2018 Mtsvane Aleski Tsikhelishvili(4400円)

「セイボリーハーブのようなビターで、ワイルドな香りの印象です。香り自体の強さはフルーツ以外が主体で、より複雑性がある印象です。味わいも5.より最初は穏やかに広がりますが、苦味と渋みが強く抽出されているタイプかと思います」

おすすめの料理

写真左:豚の角煮/写真右:豚肉の柚子味噌焼き

味付けは、味噌がポイントになるという。醤油はルカツィテリの方が合わせやすく、ムツヴァネのアンバースタイルの芳醇でリッチなアロマやテクスチャーが、味噌の方向性とよく合うそうだ。

特に穏やかな豚の味わいを活かすなら5.のワインが、豚の動物的な旨味とワイルドさを出すのであれば、6.のワインがおすすめだ。

(ポイント)
・豚肉とムツヴァネは一つのゴールデンルールと言える。アンバーワインのスタイルでも味噌との相性は良い。

サペラヴィ(黒ブドウ)のヨーロピアン・スタイル

7.2016 Mukuzani Best Georgian Wines(3850円)

「色の濃さをしっかりと感じ、香りはボルドーのカベルネ・ソーヴィニヨンにも似ています。黒いフルーツのコンポート、バラ、ヴァニラ系のスパイスの香りが感じられ、複雑な印象です。黒いフルーツを感じる凝縮感のある味わいで、きめ細かいタンニンが特徴です」

なめらかなテクスチャーをもった上質な赤ワインには、煮付けや煮込みが合う。

おすすめの料理

写真左:鶏手羽元の梅煮、写真右:金目鯛のオランダ煮

「金目鯛のオランダ煮」は、揚げることで衣自体に味が染み込んで香ばしさが加わり、赤ワインに合う要素が増える。

「鶏手羽元の梅煮」では、淡泊なものを煮付ける時はサペラヴィに合う。ポイントは、煮切らないこと。素材に染み込ませるが、旨味を汁に残すスタイルが良いとのことだ。

(まとめ)
・魚料理は、魚を揚げる「オランダ煮」がおすすめ。
・サペラヴィのヨーロピアン・スタイルは煮込みとの相性が非常に良い。

サペラヴィのクヴェヴリ・スタイル

8.2019 Kisiskhevi Saperavi Qvevri Teliani Valley(2728円)

「赤いフルーツ、スパイス、ハーブ、ブドウの皮・茎からくるセイボリーハーブなど、香りはアロマティックに出ています。クヴェヴリのサペラヴィは、アフターに苦味、渋みが出てくる分、前半のフルーツの甘みが引き立ちます」

「甘みと苦みのコントラスト」をもとに考案された料理がこちらだ。

おすすめの料理

写真左:サンマの甘露煮/写真右:鰻の有馬煮

特に味わいが強く入るこの2品だが、「鰻の有馬煮」は、山椒がワインのアフターの苦みによく合う。「サンマの甘露煮」も、サンマの苦みが同じようなコントラストを生んでいる。

穴子、お寿司の鰻などにも応用できる。

(まとめ)
・サペラヴィのクヴェヴリ・スタイルに合わせる料理は煮切って、完全に味を入れていくこと。
・料理とワインの甘みと苦みのコンラストを楽しむ。

筆者もルカツィテリのアンバーワインにおすすめの料理を合わせてみた

「焼き鮭の南蛮漬け」は、鮭の皮のやや焦げた部分や昆布だしの旨味が、ワインのほどよい苦みや渋みによく合い、また南蛮酢とワインの酸味も綺麗に同調していた。

天麩羅は、舞茸の風味にアンバーワインのびわや土っぽい印象が、生ハムの塩気とワインの塩味が抜群に合い驚いた。天麩羅の油っこさも残らず、上品なアンバーワインの後味に包まれ、家庭で食べる天麩羅をさらに格上げさせてくれる印象を持った。

「ムツヴァネ」は豚肉に、「サペラヴィ」は煮物に合うなど、すぐに真似してみることが可能だ。そして、それぞれ異なる歴史を歩み文化を築いてきた日本とジョージアが、「料理とワイン」を通して、こんなにも親和性を持つのかと思うと、非常に感慨深いものがある。

「シルクロードの終着点にいる日本の方々がジョージアのワインを楽しんでいるという文化交流が、非常に大切だと思います」と大橋MWは話した。

ジョージア・ワインは千円台から手頃に楽しめるワインも多い。「ダブル世界遺産」を同時に味わうという素晴らしい体験を、家庭の食卓でぜひ楽しんでみてはいかがだろうか。

ジョージア・ワイン取扱いブランドと輸入商社一覧

オンラインサイトへのリンクも多数あるので、こちらよりチェックを。

(パンフレット)ジョージア・ワインと和食のペアリング

本記事で紹介したワインと料理のペアリングをPDFでダウンロードできる。おすすめのワインの提案や、料理を考案した3人のソムリエの解説付き。

【National Wine Agency of Georgia】

公式サイト

日本語による公式サイト。ジョージア・ワインの歴史や輸入ワインに関する情報も充実。

Facebook

Instagram

【講師紹介】

(写真左:大橋健一MW、右:森覚ソムリエ)

大橋健一MW
酒類専門店の株式会社 山仁(栃木県宇都宮市)代表取締役社長。自らのコンサルタント会社株式会社Red Bridge をベースに国内外のワイン&日本酒業界で活躍。世界最大級のワイン・コンクールとなるインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)のパネル・チェアマンも務める。日本酒の分野でも(独)酒類総合研究所の清酒専門評価者の資格も保持している。名実ともに日本酒とワイン、双方のシーンに深く精通した数少ないThe Wine & Sake Expertである。

森覚氏 
「コンラッド東京」エグゼクティブソムリエとして全ワインオペレーションを統括。
第5回全日本最優秀ソムリエコンクール優勝。世界最優秀ソムリエコンクールの日本代表として4大会連続出場。日本ソムリエ協会では常務理事・技術研究部部長を務め、啓蒙活動や後進の育成にも積極的に取り組む。

【主催】
National Wine Agency of Georgia

【協力】
株式会社Red Bridge

取材・文/Mami
(一社)日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
https://mamiwine.themedia.jp/

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