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エコに効果はある?使い捨てスプーン有料化法案に感じる疑問

2021.06.14

去る6月4日、参議院本会議において、プラスチック廃棄物の削減をめざす新法が全会一致で可決、成立となった。飲食店などでの使い捨てのストローやスプーンなどの削減を義務づけるもので、別名、”スプーン有料化”と呼ばれる法案である。

使い捨てプラスチックを大量に無償提供する事業者が削減義務を怠った場合、50万円以下の罰金を科す可能性もあるというのだが、読者の大半の方が既にお気づきであろう。

50万円程度の罰金のこの法案、国会で時間をかけるほど意義深いものなのだろうか、と。。。

レジ袋の削減で環境問題は改善されたのか?

この手の”エコ法案”として、先んじているものがある。そう、レジ袋の有料化だ。

2020年7月より、小売業を営む全ての事業者を対象に、レジ袋有料化を義務付け、現在の削減率は7-8割とも言われる。凄い削減効果、、、でも、実は環境問題に対して殆ど影響がないこと、皆さんはご存知だろうか。

今回のスプーンもそうだが、プラスチックができる流れをきちんと理解していれば自明の理である。プラスチックとは、どこかの大臣の発言ではないが、実は原油から出来ている。原油から石油を精製する過程において必然的に生まれるナフサ。これを分解したときに生まれる物質が、レジ袋を構成するポリエチレンであり、スプーンを構成するポリプロピレンである。

レジ袋が減った結果、皆さんが手に取ったのが不織布などでできたエコバッグ。でも、皆さんご存知だろうか、不織布ってポリプロピレンで出来ているということを。

そう、カタチが変わっただけなのです。

実際、このレジ袋と関係してよく報道されていたのが、”マイクロプラスチック”と呼ばれる問題だ。粉砕された5mm以下の微細なプラスチックが河川を通じて海に流れ、魚などの海洋生態系に多大なる悪影響を及ぼしているという問題だ。ところが、この問題についても、あまり報道されていないが大きな研究発表があった。2021年、カナダの研究チーム(Peter S Ross以下約11名)がNature Communicationsにて発表した。

「北極海の海水に存在しているマイクロプラスチックを調査したところ、9割がポリエステル製であることが判明。主に、家庭で衣類を洗濯した際の排水では?」

そう、レジ袋のポリエチレンもそうだし、今回新たに有料化規制の対象となるスプーンも全く関係ないのである。

日本は本当に環境後進国?

実際のポイントはどこにあるか?

それは、リサイクルの定義にある。

読者の皆さんも、学校などのどこかで3Rという言葉を習ってであろう。

リデュース:廃棄物発生を減らす
リユース:再利用する
リサイクル:廃棄物を再び原材料に戻す

というものだ。ポイントは、3番目の”リサイクル”にある。日本においては、ごみ焼却場で発生する熱エネルギーを回収し、再利用するというサーマルリサイクル大国なのだ。

いま、世界では”日本は環境後進国だ”と叫ばれる。OECDのデータによれば、”環境先進国”であるドイツは65%のリサイクル率があるし、アメリカですら35%、片や日本は20%以下。でもこの数字には大きなトリックがある。上述の、サーマルリサイクルを含んでいないのである。サーマルリサイクルをリサイクルと定義した場合、日本は既にOECD加盟国の中でもトップクラスの”環境先進国”に浮上するのだ。

なぜこんなことが起きるのか。それは、世界におけるごみ処理方法の違いにある。

欧米において、ゴミとは埋めるもの。でも、国土の狭い我が国日本。ゴミを埋めようにも埋める場所は限られる。そうすると、必然的に焼却することになり、その焼却エネルギーをサーマルリサイクルとして再利用している。なんと素晴らしいことではないか。実際、現在の環境対策を主導しているのは、“埋め立て”派の国々。だから、サーマルリサイクルはリサイクルとしてみなされないということだ。

さて、これらを踏まえ、話しをスプーン有料化に戻そう。

仮に、国民の1/3がコンビニなどで1日1回使い捨てスプーンを使用して、これが今回の法案で無くなったと仮定する。

3g x 4000万人 x 365日=4.38万トン/年

日本のプラスチック生産量:504万トン/年(引用:日本プラスチック工業連盟のデータ)

そう、無くなったと仮定しても、プラスチック削減効果は年間1%もない。

もう賢明な読者の皆さんならお気づきであろう。前回のレジ袋有料化といい、今回のスプーン有料化といい、あくまで啓蒙であり、実際のエコ効果は皆無に近いのである。啓蒙も大切、もちろん分かります。でも、果たして国会で時間をかけてまで審議する内容なのだろうか。

繰り返しになるが、日本は既に独自の素晴らしいエコシステムを構築してある。

そんな日本がなぜ今でもこのような”啓蒙”に力を入れるのか、ここではその理由は敢えて書かない。ただ、世界情勢も含めて皆さんで是非想像してみてください。

ちなみに、筆者のYoutubeチャンネルでもこのあたりを触れています。宜しければご笑覧ください。

文/小林邦宏
旅するビジネスマン。これまで行った国は100ヶ国以上。色んな国で新しいビジネスをつくるおじさん。
現在は新型コロナウィルスの影響で海外渡航制限中により国内で活動中。
オフィシャルサイト:https://kunihiro-kobayashi.com/
Youtubeチャンネル:「旅するビジネスマン 小林邦宏チャンネル
Twitter: @kunikobagp
著書:『なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?』(幻冬舎)

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