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乗ってわかったフォルクスワーゲンの8代目「ゴルフ」の○と×

2021.06.19

 8代目にフルモデルチェンジをはたしたフォルクスワーゲン「ゴルフ」。いよいよ日本でも発売が開始された。シルエットこそ、ゴルフならではの見慣れた2BOX型フォルムをキープしているが、中身は全方位に渡って刷新されている。

機械として優れているか? ★★★★★ 5.0(★5つが満点)

 まず、注目したいのが、パワートレインが電動化されたこと。48Vテクノロジーの電力でエンジンをアシストするマイルドハイブリッド方式で、すべてのグレードに搭載されている。エンジンは排気量によって、2種類ある。1.0ℓ3気筒(最高出力110馬力、最大トルク20.4kgm)と、1.5ℓ4気筒(最高出力150馬力、最大トルク25.5kgm)。トランスミッションも全モデル7速DSG(ツインクラッチ式AT)に進化した。

 グレードは4種類あり、「ゴルフeTSI Active Basic」291万6000円(全国希望小売価格、税込み。以下同)、「ゴルフActive」312万5000円、「ゴルフStyle」370万5000円、「ゴルフR-Line」375万5000円。

 さっそく、1.0ℓ3気筒エンジンを搭載した「ゴルフActive」に乗って、東名高速道路と山道を走った。印象的なのは、スタータージェネレーターによるアシストの明確さだ。赤信号で停まったりしてアイドリングが停止する。信号が変わってエンジンが再始動して走り出す時や、一定速度で走行中に省燃費のためにエンジンを停止させている(コースティング機能)。

 そうした状況下で、新型「ゴルフ」では、状況に応じてキメ細かくエンジンを切ったり、掛けたりしているのだ。その再始動の時にブレーキ回生で作り出した電力を用いて再始動したり、エンジンの駆動をアシストするのに小型モーターとしても機能する48Vスタータージェネレーターが役目を果たすことになる。

 第一の目的は省エネだと前述したが、再始動のショックを低減させ、加速を補佐して滑らかにする働きもある。たった1.0ℓ3気筒とは思えないほど、高速道路では滑らかな加速を示して驚かされた。それにはもうひとつ理由があって、あまり変わり映えがしないように見えるボディーも、実は空力的に大幅な洗練が加えられていて、ボディー表面を流れる気流の滑らかさを示すCd(空気抵抗係数)値が、旧型の0.30から0.275へと向上している。その効能を大きく感じたのは東名高速道路に乗ってすぐの、風切り音の小ささだった。

 新採用の7速DSGも賢く、キメ細かく変速をマネージしていて、チカラ不足などまったく感じさせず、余裕すら示していた。少し前だったら、完全に高級車の走りっぷりである。1.5ℓ4気筒を搭載した「ゴルフStyle」になると、それらに加えて山道の上りでの鋭い加速が加わってくる。

 2世代前の「ゴルフGTI」で初めて装備された電子制御式ディファレンシャルロックXDSも「ゴルフActive」にも「ゴルフStyle」にも標準装備されていて、山道の上りでも前輪駆動の癖を消し去りながら、ハイペースで駆け上がっていくことに貢献している。48Vマイルドハイブリッド化、7速DSG、XDSなど走行性能について気になるところがどこにも認められなかった。

 新型「ゴルフ」のもうひとつの柱であるデジタルコクピット化も成功している。10.25インチのメーターパネル、10.0インチのインフォテインメントパネルに情報と操作系統が集約され、もちろん音声操作も可能。メーターパネルの画面設定に整理を要する点もあったが、設定で改められるはずだろう。見やすく、使いやすい。

 新しい運転支援機能「Travel Assist」のメーターパネルへの表示も革新的だ。高速道路で「Travel Assist」を走っていると、自らの車線の隣車線の様子まで映し出してくれる。それも、トラックや乗用車などを区別して模したイラストがメーターパネル中央に大きく表示される。運転支援機能の働いている様子をここまで大きく、リアルに表示できているクルマは、世界でもまだ限られている。新型「ゴルフ」を買うべき価値のひとつとなっている。

 そして、最も高く評価したいのは、このような革新的な運転支援機能のACC(アダプティブクルーズコントロール)やLKAS(レーンキープアシストシステム)などが、どのグレードでも標準で装着されている点だ。車両価格が新型「ゴルフ」の2倍や3倍もするような高級車の中でも、これらの運転支援機能がオプションでしか提供されていないクルマも未だに少なくないのだ。

 しかし、運転支援機能が事故の可能性を確実に低減させ、ドライバーの負担を減じるものであることが明らかになった時代なのだから、それを装着しないという選択肢はあり得ないと僕は考えている。

 その点でも、新型「ゴルフ」は一石を投じたし、そのメッセージは国内外の自動車メーカーやディーラーだけではなく、ユーザーにも確実に届くことだろう。他にも、LEDライトの採用やコネクティビティーなどについても一気に最新レベルのものを新型「ゴルフ」は装備してきた。その仕上がりも満点以上で、星を6つでも7つでも付けたいくらいだった。

商品として魅力的か? ★★★★ 4.0(★5つが満点)

 素晴らしい完成度を持っている新型「ゴルフ」だが、悩ましいのはグレード選びだ。最も安価な「ゴルフActive Basic」も“目玉商品”的なものではなく、前述の通り、運転支援機能はすべて装備されているし、1.0ℓ3気筒エンジンでも十分だ。20.9万円高くなる「ゴルフActive」との違いは、エアコンやライト類、パークディスタンスコントロールなど。節約しても、ガマンを強いられることにはならないと思う。

 違いが大きいのは「ゴルフActive」と「ゴルフStyle」だ。58万円の違いは、エンジン排気量、タイヤサイズ、サスペンションなどだけでなく、LEDヘッドライトがターンシグナルやコーナリングライト付きになり、エアコンが独立調整式になる。シートヒーターやステアリングヒートも標準装備。スライディングループやHarman&Kardon製オーディオシステムもオプションで選択可能。

 最も大きな違いはシートで、スポーツコンフォートタイプとなり、ブラックの他に人工スエード地のグレーも選べる。「ゴルフActive」のシートはブラックのファブリック地のみで、ブラックは車内が暗くなるだけでなく、タッチもホールドも良くない。僕だったら、文句なく「ゴルフStyle」を選ぶ。

 悩ましいけれども、非常に誠実な価格設定だと思う。電動化や自動化、コネクティビティーなどの分野は日進月歩の勢いで進化しているが、新型「ゴルフ」はそれらに於いて最新レベルものものを組み込んできた。だから、いま購入しても、5年や10年では機能において古さを感じることはないはずだ。間違いのない買い物になるだろう。

 ただ、その完成度が非常に高かったが故に感じたのは、45年前に初代「ゴルフ」がデビューした時のような“新しさ”の欠如だった。あらゆる部分が最新で仕上がりも申し分ないのだが、電動化にしても自動化にしても、それらを課題として設定したのは「ゴルフ」ではないのだ。他の誰かが設定した課題に対して、「ゴルフ」は優れた更新を続けてきているが、45年前にコンパクトカーの基準を一夜にして塗り替えてしまった新しさの提案はない。

「機械として優秀か?」という項目には、星を6つでも7つでもつけたいのだが、「商品として魅力的か?」という項目については、星4つである理由はそれなのだ。もしかすると、ヨーロッパではすでに販売されているEV(電気自動車)の「ID.3」や「ID.4」などが、フォルクスワーゲン流の次世代のコンパクトカーに対する提案なのかもしれない。45年前の初代「ゴルフ」がそうであったような提案がなされているのかもしれない。

◼︎関連情報
https://sp.volkswagen.co.jp/the-new-golf/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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