アメリカのデジタル音声広告市場は約3000億円に到達。日本でも市場は拡大の一途をたどる。ほかのメディアでは実現できなかった、デジタル音声広告にしかない強さとは一体何なのか。
オトナル代表 八木太亮さん
2013年にオトナルを創業。2019年からデジタル音声広告事業をスタートした。著書に『いちばんやさしい音声配信ビジネスの教本』など。
コンテンツが盛り上がれば拡大するのは必然
音声メディアの盛り上がりを追い風に、インターネットラジオや音楽配信サービスの合間に配信する、デジタル音声広告の出稿量も世界的に好調だ。日本でも2025年には、現在の26倍となる420億円規模の市場拡大が予想されている。
デジタル音声広告事業を展開する「オトナル」の代表・八木太亮氏によれば、一般的なラジオ広告やネット広告に比べ、「高いブランディングと認知拡大効果」「スキップされにくい90%を超える完全再生率」「ユーザー属性に合わせたターゲティング」の3つがデジタル音声広告の特徴だ。中でもユニークなのが、商品の条件に合ったユーザーに広告を狙いうちする「ターゲティング」。最も進んだ技術を実装する、Spotifyの楽曲間に挿入された広告を例にとると、リスナーの年齢、性別、エリア、音楽ジャンル、プレイリストの情報から、ユーザーに適した広告をターゲット配信できるという。
「プレイリストには通勤、ワークアウトなどのキーワードがあり、利用すると、リスナーが今何をしているか、モーメントを切り取った配信が可能です」(八木さん)
デジタル音声広告には、radiko、Spotify、Amazonミュージックなどの音声アプリ型とポッドキャスト型があり、ターゲティングの技法は主に音声アプリに使われている。広告出稿主は2019年まで大学や金融、保険などの無形商材が多かったが、昨年からは飲料、生活消費財なども急増。音声メディアの活況を物語る。
また、音声広告は広告出稿効果を見える化できないことが課題だったが、高精度な測定を実現しつつあり、今後は業界全体で広告出稿が増えると読んでいる。
もう一つ、新しいメディアとして知名度をあげる音声SNSの広告事情も気になるところだ。
「現在はサービス内に、広告枠がないというのが実情です。『Clubhouse』はクリエーターのスポンサードを表明しましたが、広告についてはNOの方針を貫いています。あくまで私見ですが、今後、ビジネスモデルが広告であるTwitterやFacebookが音声SNSをスタートすれば、広告モデルを検討せざるを得ないと思います」(八木さん)
コンテンツ同様、広告も熱い音声メディア。さらに存在感を増すことは間違いなさそうだ。
デジタル音声広告の市場規模予想
2020年のデジタル音声広告市場規模は前年比 229%の16億円を見込む。今後は右肩上がりで爆発的な成長を続け、5年後には420億円に達すると予測されている。
出典/デジタルインファクト
現在の音声広告の種類
音声広告には、電波を使用したラジオで流れるタイプと、インターネットラジオや音楽配信サービスの合間に配信することのできるデジタル音声広告がある。
音声メディアが実現する「プレイリストマーケティング」
▼年齢・性別
年齢×性別の掛け合わせが可能。1歳刻みで設定できる(13歳以上)。
▼プレイリストマーケティング
チルアウト、通勤中、ディナー、フォーカスetc.
Spotifyには「プレイリストターゲティング」があり、例えば「通勤中」や「トラベル」のリストを聴いたユーザーに対しシーンに合った広告が配信される。
米国ではITの巨人がこぞって参入!
米国大手podcast制作会社ワンダリーの買収を巡り米アップルとソニーミュージックが争奪戦を展開。結果的にAmazonが買収に成功。
出典/eMarketer
取材・文/安藤政弘