何につけても、「結局はその分野の専門家に任せた方が上手くいくこと」を表したことわざ「餅は餅屋」。誰しも一度は耳にしたことがあるはずだが、その由来まで知っている人は意外と少ないかもしれない。
そこで本記事では、「餅は餅屋」の由来と正しい意味とを解説する。意外と知らない英語表現や類義語、対義語も併せてチェックしてほしい。
「餅は餅屋」の意味と由来
まず、「餅は餅屋」の正しい意味と由来を見ていこう。英語表現も覚えておいて損はないはず。
意味は「物事には専門家がいるので、その分野の専門家に任せるのが良い」
餅は餅屋とは、「物事はそれぞれの分野の専門家に任せるのが良い」という意味のことわざ。いくら素人が上手にできたとしても、しょせんは素人仕事で、専門家には到底かなわないことも少なくない。そのため、専門的なことは、それぞれの専門家に任せるのが良いという教えをことわざにしている。
「餅は餅屋」には、「餅屋は餅屋」「餅は餅屋に聞け」という言い方もある。一般的には「餅は餅屋」が用いられることが多いが、これらの表現も間違いではない。
「餅は餅屋」の語源や由来
江戸時代では年末に、各家庭または近所の人が寄り合って、新年用の餅をつく習慣があった。しかし、年末はどの家庭も忙しく、わざわざ自分たちで餅をついている暇がなかったため、“貸つき屋”や“貸餅屋”に餅つきをお願いする人も多かった。貸つき屋や貸餅屋とは、その家の人の代わりに餅をつく商売をしている人のこと。依頼を受けた日に、杵と臼を持って依頼者の家に訪問し、餅をついてくれる。この貸餅屋がついた餅がとても美味しかったことから「餅は餅屋」と言われるようになったという。
ちなみに『類字名所狂歌集』や俳諧『滑稽太平記』には、「餅は餅屋が(の)よし」と記載されていることから、貸餅屋は元禄時代にはすでに存在していたと言われている。
「餅は餅屋」の英語表現
「餅は餅屋」を英語で表すと「Every man knows his own business best」となり、「誰もが自分の専門のことは一番よく分かっている」と訳す。なお、この場合の「business」は仕事というより「専門の事柄」「するべき事柄」を指す。
その他にも、「Set a thief to catch a thief/泥棒に泥棒を捕まえさせろ」「There is a mystery in the meanest trade/どんなにつまらない仕事にも秘訣がある」などが、餅は餅屋の英語表現として使われる。
「餅は餅屋」を使った例文
ここでは、実際に「餅は餅屋」を使った例文をいくつか紹介する。誤用しないよう、前後の文脈も併せてチェックしてほしい。
【例文】
・「PCの操作に関しては、PCの専門家に聞くのが一番だ。餅は餅屋だからね」
・「我が子の勉強のサポートは家庭教師にお願いすることにしたよ。餅は餅屋だから、説明も教え方も上手だわ」
・「洗濯機が故障して自分で修理しようとしたけど、余計に動かなくなってしまった。やはり、餅は餅屋。すぐに修理業者を呼べばよかったと後悔したよ」
・「近年のDIYブームに乗って、庭にウッドデッキを作ったがすぐに壊れてしまった。結局、餅は餅屋。業者に任せた方が賢明だった」
「餅は餅屋」の類義語
「餅は餅屋」の類義語もチェックしておこう。「餅は餅屋」の類義語は数多く存在するが、ここではその中から2つのことわざを紹介する。
蛇の道は蛇
「蛇の道は蛇(じゃのみちはへび)」とは、「物事はその専門家が一番よく分かっている」という意味を持つことわざ。加えて、「同類の者は何をするのかお互いに推測できる」という意味も持つ。
なお、「蛇(じゃ)」は大きなヘビのことを、「蛇(へび)」は小さなヘビのことを指す。要するに「蛇の道は蛇」とは、大きなヘビが通った道は、小さなヘビもすぐわかるという意味。小さなヘビの代わりに「どんなヘビでも」と、解釈することもある。
芸は道によって賢し
「芸は道によって賢し(げいはみちによってかしこし)」とは、伝統芸能などの専門的なことは、その道に精通している人が一番詳しいという意味のことわざ。「餅は餅屋」と同様、「その道を専門としている人はその分野についてよく理解していること」を表現している。「芸」を「商売」に置き換えて、「商売は道によって賢し」と言い換えることもある。
「餅は餅屋」の反対語(対義語)
最後に、「餅は餅屋」の対義語を紹介する。反対の意味のことわざを知ると、「餅は餅屋」の言葉の意味もより深く理解できるはずだ。
猿も木から落ちる
「木登りが得意な猿でも、時には木から落ちることがある」という意味のことわざ「猿も木から落ちる」も、餅は餅屋の対義語と言える。餅は餅屋は「専門家なら大丈夫」という意味合いを持つが、猿も木から落ちるは「専門家であっても失敗することがある」ことを言い表した言葉だ。
文/oki