
「案ずるより産むが易し」とは、「新しいことを始める時には心配事が尽きないが、実際に行ってみると案外たやすくできてしまうこと」を表現した慣用句。この言葉は、慰めや励ましとして使うケースも多いため、前向きで明るいイメージのことわざとして、座右の銘にしている人もいるかもしれない。本記事では、「案ずるより産むが易し」の正しい意味や例文を紹介する。類語や対義語も併せて参考にしてほしい。
「案ずるより産むが易し」の意味と例文
「案ずるより産むが易し」は「あんずるよりうむがやすし」と読む。まずは、この言葉の正しい意味や例文を見ていこう。
「実際にやってみると案外たやすくできてしまう」の意味
案ずるより産むが易しは、「新しいことが始まる前にはいろいろな心配をするが、実際に行ってみると案外たやすくできてしまうものだ」という意味のことわざ。出産が初めての人は誰でも、「陣痛を乗り切れるのか」「無事に赤ちゃんが生まれてくるのか」など、たくさんの心配をするもの。しかし、実際に出産が終わると「案外たやすくできてしまった」と感じる人も少なくない。案ずるより産むが易しは、このような出産の状況に由来する慣用句だ。
このことわざは、出産以外のあらゆる出来事にも使える。例えば、結婚生活や新しい職場での初仕事など「始める前はいろいろと心配をしたが、実際にやってみると案外たやすくできてしまうもの」「あれこれ考えてないで、挑戦してみるのも大切」と、気持ちを勇気付けるために使われることも多い。
「案ずるより産むが易し」を使った例文
ここでは、「案ずるより産むが易し」を使った例文を紹介する。具体的な使い方を知って、言葉の正しい意味の理解を深めよう。
【案ずるより産むが易しの例文】
「初めての出産ですごく心配だったが、案ずるより産むが易しだった」
「留学する我が子に『大変なこともあるけれど、案ずるより産むが易しだよ』と励ましのメールを送った」
「明日は大切なプロジェクトの企画発表会。『案ずるより産むが易し、きっと上手くいく!』と、自らを勇気付けた」
「知らない土地で結婚生活をスタートさせることを不安に思う時もあったが、本当に『案ずるより産むが易し』だった」
「新しい治療法の説明を受けた時は心配で仕方なかったけれど、『案ずるより産むが易し』で、終わってみると何ともなかった」
「案ずるより産むが易し」の英語表現
英語圏では、「案ずるより産むが易し」とほぼ同じ意味を持つことわざ、「Fear is often greater than the danger./恐怖心は往々にして危険よりも大きいものだ」が存在する。この言葉は、人にエールを送る時に使われる。
「案ずるより産むが易し」を簡単な英語で表現するときは、「It’s easier than you think./考えるよりも実際は簡単だ」「An attempt is sometimes easier than expected./心配するより実行したほうが易しい」などの表現を用いることが多い。
「案ずるより産むが易し」の類語
ここでは、「案ずるより産むが易し」の類語を2つ紹介する。それぞれの持つ微妙なニュアンスの違いを理解しておこう。
窮すれば通ず
「窮すれば通ず(きゅうすればつうず)」とは、「最悪の状態に陥ってどうにもならなくなると、かえって活路が開かれる」という意味を持つことわざ。「案外どうにかなるものだ」というニュアンスが似ているため、類語だと言える。
不言実行
「不言実行(ふげんじっこう)」とは、「あれこれと文句や理屈を述べずに、なすべきことを黙って実行すること」を意味する四字熟語。「実行する前にあれこれ心配するよりも、なずべきことを黙ってやってみること」を表しているため、「案ずるより産むが易し」に近い意味を持つ。
「案ずるより産むが易し」の反対語・対義語
では、「案ずるより産むが易し」の反対語にはどのような言葉があるのだろうか。最後に、反対の意味を持つことわざを紹介する。
待てば海路の日和あり
「待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり)」は、「今は物事がうまくいかないと感じていても、あせらずにじっと待てば必ず好機が訪れる」という意味を持つことわざ。今は海が荒れていて航海に出られなくても、待っていれば必ず航海に適した天候が訪れるという状況を表している。「待てば海路の日和あり」が、待つことを促すことわざなのに対して、「案ずるより産むが易し」は行動を促すことわざのため、反対の意味のことわざと言える。
文/oki