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歴史書やビジネス関連の書物などに目を通していると『人海戦術』という言葉に触れることがあります。何かを攻略する際の方法だという理解はできでも、正確な意味が分からない人もいるでしょう。そこで、正しい意味や使い方、類義語や対義語を解説します。
「人海戦術」とは
作戦や計画を遂行するにあたって『人海戦術で臨む』という表現がなされることがあります。言葉としては、よく耳にするものです。
それは、具体的にどのような方法論を指すのでしょうか。正確な意味について解説します。
「質より量」という意味
『じんかいせんじゅつ』と読むこの言葉の意味するところは、簡潔に示すと『質より量』ということです。とにかくたくさんの人員を動員して、成功や勝利を導こうとする方法をいいます。
『人海』は、人が海のごとくあふれている様子を表しており、大量の数の人を配置することによって、困難や障害を乗り越えることを目指すものです。
一方では、数よりも質の高い人材で戦うことを選ぶ方法論もあります。対して人海戦術は、人を集結させることで得る力を利用するやり方なのです。
戦術に必要な人数は計算できる
人海戦術の利点として、勝利や成功を、人数によってある程度予測しやすいことが挙げられます。人材の質だけにこだわることなく、頭数によって成功の可否を想定できる点で、合理的な考えといえるのです。
たとえば相手の戦力が100人だったとします。それに対して200人を投入すれば、同じような方法で戦った場合に、200人の組織が有利と考えられるでしょう。
100人対110人であれば、ともすると優秀な人材の多い100人が優勢になる可能性もあります。しかし、圧倒的に多数であれば、個人の能力さえも凌駕するでしょう。
元々は軍事戦略用語だった
元来、訓示戦略用語として用いられていた言葉です。相手に攻め入るとき、所持する武器や自軍がいる地形では不利な状況もあります。その劣勢を、大量の兵員を戦線に投入することでくつがえす戦術です。
その際、攻撃する側は多少の犠牲は顧みることなく、勇猛果敢に突撃します。その攻撃を何波にもわたり仕掛けることで、状況的には優勢であるはずの敵軍は、徐々に圧倒されていくのです。
人海戦術をもって敵陣を制圧した例としては、日露戦争における旅順(りょじゅん)攻防戦での日本軍の戦法があります。また、抗日戦や朝鮮戦争では、中国人民解放軍が戦術として用いたことも知られています。
「人海戦術」の使い方
軍用語として生まれた人海戦術ですが、現代ではさまざまなシーンで応用されている言葉です。その活用例について見てみましょう。
現在はビジネスシーンでも使用される
ビジネスシーンにおいても、頻繁に活用されている言葉です。多数の人員を確保し投入するやり方は、有効な営業手段の一つともされています。
ある商品の販売数を伸ばそうとするときに、競合他社の類似品は強敵です。画期的な違いがあれば別ですが、消費者にとっては同じような商品を、同じレベルの営業力で戦うとなかなか結果は出せません。
その際に、販売の現場に投入できる営業人員が多ければ、その差がすなわち営業力の差になるでしょう。各々がそれぞれのエリアで営業活動を行えば、他社よりも売り上げを伸ばす可能性が高まるのです。
『数は力』、その考えを具体的に実践する方法が人海戦術だといえます。
「人海戦術」を使った例文
ビジネスを展開する場合には、次のような例があります。
- 訪問販売の対象世帯が多いため、人海戦術でくまなく営業して売り上げにつなげよう
- 参加者が多いイベントで全ての人にサンプルを提供するには、人海戦術でいくしかない
トラブルや障害を乗り越えるような状況だと、次のような使い方があります。
- 除雪車が通れないため、短時間での雪かきは人海戦術で乗り越えよう
「人海戦術」の類義語と対義語
人海戦術と同じような意味を指す言葉、反対の内容を表す言葉を紹介します。
類義語は「物量作戦」
多くの物資を用意して、敵を圧倒しようとする方法です。相手より優位に立つために、あらゆるリソースを豊富に用意することは、極めて大きな武器になります。
潤沢に物を備え、数によって相手を押し切り封じ込めるという考え方は、人海戦術と通じる部分があります。また、『物量』の中には、人材も含まれていることから、とても近い言葉だといえるでしょう。
対義語は「少数精鋭」
優れた人員だけを選りすぐり、効率的な組織で勝利や成功を掴もうという考え方です。『質より量』の人海戦術に対して、『量より質』を取る方法になります。
『弱い味方は敵より怖い』という言葉があるように、低レベルなリソースはかえって戦力を低下させると考える場合もあります。
意思伝達のスピードや正確さを生み、組織維持のための労力を効率化してその他の分野に資源を振り分ける。その結果、合理的に成功を導こうとする考え方です。
構成/編集部