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調べれば調べるほど偽物にハマる!?「確証バイアス」にかからない方法

2021.06.06PR

自然科学の本で7万部も売れるのはめずらしい。それも化け学。2月に発刊した『世界史は化学でできている』(ダイヤモンド社)の著者、左巻健男先生に、ニセ科学に騙されないために必要なものを聞いた。

その1「コロナ禍1年半“首から提げるバカ発見器”は減ったか?」はこちら

左巻健男 さまき・たけお
東京大学非常勤講師。元法政大学生命科学部環境応用化学科教授。『理科の探検(Rika Tan)』編集長。専門は理科教育、科学コミュニケーション。

人間はパパッと判断するようにできている?

ほとんどの人は科学的に物事を見るクセを持っていない、と左巻先生はおっしゃる。それでは、科学的に物事を見るクセのない人は、何によって物事を判断しているのだろうか?

左巻 身近にある情報をいくつかパパッと組み合わせてパパッと判断するんです。それはもう速いもんですよ。でも科学的に考える場合、そうはいかない。いろいろな方面からあれこれ調べて総合的に考えながら判断していく。当然、時間がかかりますね。普通はそんなことやっていられないわけです。

パパッと素早く判断するクセは、人間が生き残るために身につけた智恵です。大昔、700万年前、人類の祖先は樹の上から地上に降り立った。そのとき一番大事だったことは、地上で食べ物を得ることと敵に襲われないこと。草木の向こうにいるのが敵か味方か、草のスキ間から見えるちょっとした情報でとっさに判断し、敵だと思ったら即逃げなくてならなかった。もっといろんな情報を集めてから総合的に判断しようなんて言っていたら食われちゃうんだから。そうやって人類は生き延びてきた。そのクセが今の人間にもかなり残っているのです。

懐疑的な精神と確証バイアス

文系の人間でも、科学の専門知識がなくても、科学的に物事を見るクセをつけたい。油断ならないニセ科学に騙されない人でありたい。そのために必要なものは何か? 

左巻 どんな人が騙されやすいと思いますか? 騙す側で仕事していた人が言ったことだけど、一番、騙しやすいのは「素直な人」だと。知り合いから「これ、いいわよ」とすすめられたら信じてしまう。そして普通の人は、たいがい信じるんです。でも、信じない人がいる。その人たちは何が違うのかというと、懐疑的な精神を持っている。「これ、いいわよ」と言われたときに、ホントかな? と思うセンスが働く。

懐疑的なセンスが働くと、知らないものと出会ったときの調べ方が変わります。検索の仕方が変わる。空間除菌の話もそうだけど、センスがないと、結果的にそれを肯定する情報ばかり集めてしまいますね。調べれば調べるほどニセの情報が集まり、それに反する情報が排除され、自分の持っているイメージを強化してしまう。これが確証バイアスです。

検索をするのでも、ニセとかウソとかネガティブな言葉をつけると、そちらを強化するサイトがワーッと並びます。両方見る。最小限、これは必要でしょう。

自分の信じたいものだけを信じてそれ以外に目を向けない……非科学的な見方である。それにしても懐疑的精神は何から育まれるのだろう?

左巻 それはねぇ……、やはりいろいろな知識を持っていることが前提だと思いますね。科学だけじゃなく、歴史も地理も、いわゆる教養。少なくとも中学の教科書に載っているようなことは知っておいたほうがいい。でも、日本の学校でやっていることは教科書に書いてあることを素直に覚えることです。これだけしていても懐疑的な精神は身につきません。

中学の理科の知識——といっても、その内容は雲のでき方から分子原子から火山の成り立ちから植物の分類などなど、多岐に渡ること目もくらむごとし。しかも、その知識は詰め込まれたもので身についていないとなれば、やはり学び直しが必要だろうか。

中学の教科書レベルは知っておけ

左巻先生は大学の教授になる前、中学校や高校の理科の先生だった。

「ぼくは勉強ができなかった」と、左巻先生は言う。中学3年の時、担任から「この成績では行ける高校はない」と告げられた。「ぼくは理科が好きなので理科の高校に行きたい」と言うと、担任は通知表を見て「お、左巻君、理科だけは3だね」。そして「これから死に物狂いで勉強すれば、希望する工業高校に入れる」と励ましてくれた。そんな子だったから、左巻先生は落ちこぼれの気持ちを知っている。勉強が苦手な子にも、理科って面白いんだぞと思ってもらえるような授業を工夫してきたと話す。

左巻 ぼくが化学の面白さを知ったのは理科の実験です。2本の試験管に無色透明の液体が入っていて、混ぜると真っ白になった。理屈はわからなかったけれども、白くなる出来事に感動しました。

左巻先生は知る人ぞ知る「カルメ焼き」の大家でもある。中学校の理科の教科書に載っているカルメ焼きの作り方は左巻先生の考案だ。カルメ焼きはなぜ、あんなふうに一気に膨らむのか。それが理科への入り口になる。左巻先生は、今朝も大きなカルメ焼きを焼いてきたという。ステイホームの昨今、家でできる、子どもとできる、おすすめの実験を教えてもらった。

左巻 「ぷよぷよ卵」を知っていますか? 生卵をコップに入れてお酢で一杯にしてひと晩つけておきます。すると殻が溶けて膜で覆われた卵になって、黄身が透けて見えて、手に取ると、ぷよぷよっとします。

もうひとつは砂鉄を入れたスライム。スライムに砂鉄を混ぜると真っ黒になります。100均に世界最強のネオジオ磁石が売っていますから、それを近づけてみましょう。スライムがじわじわと近づいてネオジオ磁石を飲み込みます。

簡単な実験方法を次々と教えてくれる左巻先生は、今でも実験が大好きだ。夏休みにおすすめの実験本も書いている。

700万年前の昔、樹上から地上に降りてきたサルの仲間はやがて火という化学現象を発見し、他の動物が怖れた火を手懐け、土器や煉瓦をつくり、料理をし、金属を加工した。水や空気や土を研究し、分子を見つけ、原子を見つけ、天然にはない物質もつくり出してきた。

この夏、カルメ焼きやぷよぷよ卵を作りながら理科に親しんでみたい。楽しみながら本も読んで、ニセ科学にピン! と来るセンスを磨きたい。

『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤモンド社/1,870円)

取材・文/佐藤恵菜

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