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これほど心穏やかに乗れるSUVは見当たらない!?すべてがソフトで上質なVW「ティグアン」の魅力

2021.06.05

見ても乗ってもすべてがソフトで上質

世界中の人たちがギリギリのところまで追い詰められ、疲弊しているいま、求められるのは心の平静さ。そんなことは百も承知ながら、なかなか思うようにはいかない毎日である。そんな不安を心のどこかに抱えながら試乗したのがフォルクスワーゲン(以下VW)のSUV、新型ティグアンだった。

今回はマイナーチェンジ・モデルということだが、エンジンは1.4ℓ直列4気筒ターボから最新の主力エンジ、1.5ℓのTSI Evoエンジンへと変更された。さらにトランスミッションもこれまでの6速DSG(デュアルクラッチ・トランスミッション)から、7速DSGへとアップデート。内外装のブラッシュアップに加え、エンジンやミッションという主要部分を新しくしたわけだから、ビッグマイナーという捉え方でいいと思う。

さっそく乗り込んでグレーのパイピングをあしらったブラウンとブラックのコンビネーションのレザーシートに体を納めてみた。試乗車両はTSIファーストエディションと呼ばれる特別仕様車であり、このシートや落ち着いた色合いの専用ウッドパネルなどは標準装備されている。

それにしても、シートの出来のよさである。程よい硬さがありながらも、体をすぽっと収めてくれるシートの安心感はなんとも心地いい。キッチリと体をホールドしてくれながらも、ロングドライブの快適さを予感させてくれるシートの仕上がりは、VWの持ち味のひとつだと思う。

インテリアのレイアウトやデザインは旧型を受け継ぎながらも、細部では小さな改良が加えられている。例えばエアコンの操作系。これまでは3つのダイヤルが並んでいたが、ここは最新のタッチ式になった。風量と温度設定などの調節はパネルを指でなぞりながら操作する。実は、このテの操作系はむしろダイヤル式の方が優れていると、個人的には思っている。ダイヤル式は使い慣れてくると、操作部分を凝視しなくとも“なんとなく適正あたりかな”という曖昧だが、視線を外さなくとも設定できるような合わせ方が可能だ。一方のタッチ式は、より正確な設定をしようと、操作部に視線が釘付けになることが多くなる。これが運転中には少々、ストレスに感じるのだ。温度調節など、ある程度曖昧でもいいように思う、と細かい改良点を確認しながら、しばし運転席でインパネのスイッチ類と格闘する。

全体のレイアウトなどを体に覚えさせながら、ゆっくりとデザインを見ていく。派手さこそないが、細部までキッチリと作り込まれた上質さのなかで、心がどんどん落ち着きを取り戻していく。ゆっくりとエンジンをスタートさせた。

心の平静を保てる不思議な存在感

さっそく走り出してみる。ツインクラッチ式のミッションは数多くあるが、VWのものは運転感覚とのズレの少ないナチュラルなフィーリングがとても好印象だった。それが今回、アップデートされたことによって、そのスムーズさがさらに磨かれたような感じである。加速はしっかりとエンジンのトルクを感じながら、スムーズに速度を上げていく。今回、排気量アップしたTSI Evoエンジンとの組み合わせで、発進時から一定速度までのスムーズな加速、そしてシフトアップやダウンの自然な繋がりなどの心地よさは、ドライバーだけでなく、同乗のファミリーや友人たちにもしっかりと好ましい感覚として伝わるはずだ。

さらにこの走りのスムーズさを際立たせるのは、ロールを抑えたフラットな姿勢だ。これは「DCC」、つまりダンパーの減衰力や電動パワーステアリングの特性を瞬時にコントロールするアダプティブシャシーコントロールのおかげもある。どんな状況でも安定した姿勢を保つことで乗員も、体が左右に振られたりすることがかなり減ることで、乗員の疲労感も軽減される。こうした目に見ないところのブラッシュアップを徹底することで、世界的な人気モデルになっている。

この他に今回の変更点で注目したのは「Travel Assist」を全車に標準装備したところ。これは先行車と一定の車間距離を保ちながら走行レーンの維持も支援するACCシステムであり、対応速度域が0~210km/hまでとなっている。日本では120km/h以上は不要だが、それでも超高速まで対応が出来るシステムへの信頼感は、自然と高くなる。もちろん高速だけでなく、一般道でも、その快適な使い勝手を実現している。渋滞時などはドライバーのストレスを軽減できるわけであり、高速道路から一般道まで、心の平静はしっかりと保たれることになる。

実際に市街地で試してみたのだが車線キープのための修正蛇も不安なく入ってくれるし、前車との車間距離の確保の頃合いもナチュラル。使い慣れるほどに、なんとも快適な運転環境を維持してくれるのだ。気が付くと、すっかりストレスから解放され、ゆったりとした気分になっていた。

クルマを止め、フェイスリフトを受けた新型の表情を眺めた。特段に派手さやこれ見よがしのところもなく、あくまでも楚々とした、エレガンスさえ感じさせる外観は、走りの味と同様に殺伐とした状況を忘れさせてくれる力があったのだ。

「心の落ち着きが、すべてを解決してくれる」。イギリスの神学者、ロバート・バートンが遺した言葉だという。新型ティグアン、まさにその走りも見た目も、すべてが落ち着きの中にあり、心の平静を多少なりとも取り戻せたドライブであったことに感謝したい。

全体のフォルムは変わらないが、ヘッドランプやラジエーターグリルのデザインが変更され、よりシャープな印象に。

引き締まった印象のボディデザインから、スマートなライフスタイルが見えてくる。

基本的なレイアウト変更はないが、ステアリングやエアコンのコントロールパネルなどが細部を変更。新しいオンラインサービス「ウィーコネクト」も利用可能。

シフトダウンもアップ、シームレスで心地よく変速してくれるミッション。

シートの座り心地のよさ、体の収まりのよさは、ドライブのストレスを最小限にしてくれる。

前後スライドとリクライニング機能があるリアシート。

新世代の1.5ℓエンジンは自然なパワーの出方で加速感も心地いい。

シートを倒しても段差はない。デッドスペースもほとんどなく、スクエアで使いやすい荷室。

スペック

モデル名:ティグアンTSI・ファーストエディション
価格:5,249,000円(税込み)
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,515×1,840×1,675mm
車重:1,550kg
駆動方式:FF
トランスミッション:7速AT
エンジン:直列4気筒DOHCターボ 1,497cc
最高出力:110kw(150PS)/5,000~6,000rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1,500~3,500rpm
問い合わせ先:フォルクスワーゲン カスタマーセンター
TEL:0120-993-199

TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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