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商業核融合エネルギーに向けて前進する、1億度のプラズマ温度を達成した世界初の民間企業「tokamak energy」

2021.06.06

「地上の太陽」、「夢の発電所」などと注目される核融合エネルギー。世界では国の研究機関、大学、企業などで、核融合に関してさまざまな研究開発が行われている。しかしながら、未だに実現に至ってはいないが、世界には果敢に核融合の商業化に向けて尽力している企業が多く存在する。2021年3月に興味深いニュースが流れた。イギリスのtokamak energy が、民間企業として、世界初となる1億度のプラズマ温度を達成したというものだ。今回は、このtokamak energyについて、紹介したい。

核融合とは?

核融合について、ご存知な方も多いかもしれないが、ここで今一度おさらいしたい。DT反応、DD反応がよく知られた反応だろう。例えば、最も実現しやすいとされるDT反応にフォーカスしよう。DT反応によって、n(中性子)とHe(ヘリウム)が生成される。Dとは重水素、Tとは三重水素。重水素は海水や河川に別の形で微量存在しているが、蒸溜、電気分解による濃縮で比較的簡単に入手することができる無尽蔵の資源。Tは自然界にはほとんど存在しないが、核融合炉内に設置されたトリチウム増殖ブランケットのLi(リチウム)と中性子の反応によってTを生成することが想定されている。Li は、海水中から回収すると1千万年以上の資源量があると言われている。

では、どのように発電するのだろうか。DTの核融合反応によって発生するエネルギーをブランケットという部分で受け、タービンを回して発電するのだ。もう少し正確にいうと、DT反応によって生成した中性子がブランケットに入射し散乱・減速を繰り返しながら、ブランケットの構造材料やトリチウム増殖材を加熱する。そしてその熱を輸送しならタービンを回すというものだ。

核融合反応を実現する方式として、さまざまな方法が提唱されているが、代表的なものとして磁場閉じ込め方式と慣性閉じ込め方式がある。磁場閉じ込め方式としては、トカマク型、ヘリカル型などが、慣性閉じ込め方式はレーザー方式がある。

DT反応のイメージ

核融合反応は、太陽や恒星など自然界でも見られる反応だ。だが、いざ人間が創ろうとすると難しい。何が難しいのだろうか。

核融合反応を起こすためには、DとTを高速で衝突させて融合させる必要がある。融合のためには、1,000km/秒のスピードが必要であり、温度にして約1億度だ。実はこの時プラズマ状態になっているのだが、このような温度になるとプラズマが安定しない現象が発生してしまう。例えばプラズマが膨張し核融合装置の壁に当たりプラズマは冷えて潰れる。他にも複雑なモードが発生するなどし、核融合反応が連続しないのだ。そのため、現時点では核融合炉は実現していない。そのため、”核融合実験装置”、”核融合実験炉”という表現にとどまっているのだ。

日本の核融合の取り組みは?

日本での核融合に関する取り組みは研究機関や大学が中心となる。例えば、自然科学研究機構 核融合科学研究所NIFSや国立研究開発法人 量子化学技術研究開発機構QSTが代表だろう。NIFSでは、大型ヘリカル装置LHDという磁場閉じ込め方式のヘリカル型の装置で研究が行われている。様々な成果があるが、2020年度のLHDの重水素プラズマの実験において、電子温度、イオン温度ともに1億度に達するプラズマの生成に成功している。これによって、1億度に達するプラズマの生成法を確立している

QSTでは、JT-60というトカマク型の装置において研究が行われてきた。JT-60では、Q値、プラズマ温度、核融合積などにおいて、世界最高値を達成している。現在は、後継としてJT-60SAが建設。核融合の実現向け、日本と欧州が共同で進めるプロジェクトが進められている。

また、日本は、国際熱核融合実験炉ITER計画にも参画している。DT反応における自己点火と400秒という長時間燃焼の実証などを行う予定だ。

ちなみに、Q値とは、高温プラズマ中で発生する核融合反応出力と核融合反応を起こすために必要なプラズマに注入される加熱入力の比。Q値>1である必要がある。核融合積とは、プラズマ温度、プラズマ密度、閉じ込め時間の3つの積。他にも考慮すべきパラメータはあるが。これらは、臨界プラズマ条件や自己点火条件を語る上で必要なパラメータだ。

日本が参加するITERトカマクのイメージ
(出典:ITER)

1億度のプラズマ温度を達成した、世界初の民間企業tokamak energy!

民間企業として世界で初めて1億度のプラズマ温度を達成したのは、tokamak energy。イギリスの企業だ。彼らはST40というトカマク型の核融合装置でこのプラズマ温度を達成した。ST40は、先に紹介した日本のLHD、JT-60やITERトカマクのようなドーナッツ型ではなく、球状に近いドーナツ型をしているのが特徴だ。球状トカマクという分類になる。球状にすることで、プラズマが太くなるので、プラズマの閉じ込めや長時間維持など安定性が向上すると言われている。コンパクトな核融合炉が実現できるとされている形状だ。また、プラズマを閉じ込めるための磁場は、高温超伝導コイルを使っているという。この高温超伝導体は、バリウム銅酸化物というもので、-250〜-200℃で超伝導状態に遷移するという。この温度は高温じゃないとご指摘をいただきそうだが、通常、液体ヘリウム温度-269℃で超伝導を実現するよりも温度は大分高く、大幅なコスト削減につながるという。

ST40においてプラズマ温度1億度時のプラズマの様子
(出典:tokamak energy

実際に、プラズマ温度が1億度達成した際の動画も公開されているのでぜひご覧いただきたい。このプラズマのガスは不明だが、綺麗にプラズマが形成されていることがわかる。

tokamak energyのST40でプラズマ温度1億度達成の動画はこちら

他にも世界には、商業核融合炉を目指している企業が多く存在する。特に欧米に多いという。例えば、Amazon創業者のジェフベゾスが出資するGeneral Fusion、マイクロソフトの創業者のビルゲイツが出資するCommonwealth Fusion Systems、Googleが出資するTAE Technologiesなどが有名だろう。ITジャイアント出身者が核融合分野にも注目していることがおわかりいただけるだろう。これらの企業は2桁から3桁億円の資金調達に成功している。欧米では核融合分野への投資が盛んで額も大きい。

もちろん、核融合炉を実現するには、Q値、核融合積など様々なパラメータも評価する必要もあり、プラズマ温度1億度という1つのパラメータを達成しただけでは、もちろん実現不可だが、しかしこの達成は、賞賛すべき重要なマイルストーンであることは確かだ。今後の民間企業の核融合分野での成果に注目したい。

文/齊田興哉
2004年東北大学大学院工学研究科を修了(工学博士)。同年、宇宙航空研究開発機構JAXAに入社し、人工衛星の2機の開発プロジェクトに従事。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。現在は各メディアの情報発信に力を入れている。

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