多くの男性にとって、「何を着ればいいのか」は永遠の課題かもしれない。
表向きは、「服装には頓着してないよ~」と、外見より中身を見てくれアピールをするものの、内心ではこう思っていたりする―「果たしてこの着こなしであっているか。痛い奴と見られていないか」等々。特にカジュアルシーンで、その思いは顕著になる。かすかにうずまく不安を抑えようと、朝からコーデに余念がないのが、世の男たちの真実の姿だ。
そんな悩みに指針を授けてくれるのは、スタイリストの山本あきこさん。プチプラブランド隆盛期ならではの著書『見るだけでパっと決まる! 男子ファッション最強図鑑』(かんき出版)が売れているのは、悩める男たちのニーズを直撃したからにほかならない。
逆三角形と清潔感が決め手
本書の冒頭で山本さんが触れるのが、コーデ以前の話として重要な2つのポイント。すなわち「逆三角形」と「清潔感」だ。ここでいう逆三角形とは、まさに男の理想となる体型のこと。山本さんに語らせれば、それは「肩幅や胸回りに厚みがあり、足先にかけてほっそりしていく逆三角形のシルエットは、見ている人がたくましさや信頼感を感じる形」。体型に自信のない人でも、ファッションの威力で(そして筋トレ&ダイエットよりも超速で)それが実現できるという。山本さんは、身体のこのパーツを男の「絶対領域」とまで言い切る。
もう1つの清潔感は一見わかりやすいが、奥義というかコツがあるようで、それもプチプラでだいたい叶うという。
今回はこれらのポイントを軸に、本書のエッセンスの一端を紹介しよう。
何はなくともまずは黒のジャケット
山本さんが「鉄板アイテム」と激オシするのが黒のジャケット。「それもシンプルなテーラードジャケット」は必須だという。
理由は単純明快だ。
「黒ジャケットの最大の魅力は、合わせるアイテムを選ばないこと。シャツと合わせればオフィスで使え、オフの日ならTシャツの上に着るだけでおしゃれに決まります。年中使える上に、ボトムスも同じ黒にすればセットアップふうに着ることもできるのです」
値段がバレにくいというのもあり、低価格帯の良品が多いプチプラでOKとのことだが、選ぶ基準があるという。それはー
・ウエストが絞られすぎていないシルエット
・袖の長さは手の甲までかかりすぎず長くないもの
具体的なブランドで言えば、山本さんが一番推奨するのは、ユニクロの「感動ジャケット」。リーズナブルで、季節を問わず気持ちよく着られる素材を使い、適度なフィット感があるからというのがその理由。
ボトムスは黒のテーパードパンツ
コーディネートの土台であり、第一印象を左右するのが「ボトムス」。
なかでも山本さんが、黒のジャケットと一緒に揃えておくべしというのがテーパードパンツ。ユニクロの売り場では主流になった感がある、上から足首に向かって細くなっていくデザインのあれだ。
「おしりや足のラインをカバーしつつ、足をまっすぐきれいに見せてくれる魔法のような効果があります」と、山本さんはそのメリットを説明する。
まずは黒の無地を一本。くるぶしが見えるぐらいの、アンクル丈を選ぼう。
割愛するが、基本のマストアイテムはほかにも、白Tシャツや細ピッチのストライプシャツなどある。詳細については本書をご覧あれ。
男の絶対領域を盛れ!
さて、気になっていたであろう「絶対領域」=「逆三角形」の話。山本さんは、「ここをいかにして盛るか。それが女性にも男性にもモテる着こなしのコツ」だと力説している。
では、どうするか。その一つが、先に挙げたテーパードパンツ。脚からつま先まで、下に向けてシルエットを絞っていくスタイルだと、上半身は自然に逆三角形に見えるという。さらに、お腹周りがちょっと難ありでも、そこに他人の目がいかなくなるという利点も。
また、スーツスタイルだと、ネクタイ、ベスト、ネクタイピン、ポケットチーフという、意外なアイテムが効果ありと説く。これらはどれも胸元を立体的に見せるからだ。小物なのに、全体の印象を変えてしまうというから、あなどれない。ぜひ、こだわってみよう。
では、スーツを着ないオフタイムの逆三角形はどう対策する?
山本さんは、それについてもテクニックを明かす―キーワードは「襟」だ。
「襟まわりを盛ると、相手の目線が引き上げられ、肩幅や胸板が強く印象づけられるので、絶対領域部分にボリュームを感じてもらえます。すると、スーツスタイルの時と同様の頼もしい印象になり、さらに小顔にも見えます。ボトムスにテーパードパンツなどスッキリしたシルエットのアイテムを合わせれば、さらに目線が引き上げられるので、逆三角形のシルエットの完成! おまけに脚長効果も狙えます」
具体的な方法として挙げているのが、意外にもボタンダウンシャツとバンドカラーシャツ。ボタンダウンは、普通のシャツと違って襟が寝ない(しっかり立つ)、バンドカラーは首から胸回りに厚みを感じさせる効果があるそうで。ちなみに、寒い季節は、アウターの襟を立てるとかマフラーを巻くなど、対策の選択肢は増える。覚えておこう。
後編では、カジュアルシーンのコーデの秘訣について。乞うご期待。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)