とにかく使いやすい!1台で28、35、50、75mmが使えるライカの万能フルサイズミラーレス「LEICA Q2」
2021.06.05■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所
AFでEVFが使えるLEICA
カメラに疎い人でも知っている憧れの超有名ブランド、ライカ。元祖35mmフィルム、レンジファインダー、MFを受け継いだ「LEICA M」シリーズはデジタルになっても敷居の高いカメラである。第一関門は価格だが、それをクリアーしても、レンジファインダーとMFが残る。ミラーレスでAFに慣れた身にはなかなか辛い。
この問題を解決してくれるのが、「LEICA Q2」である。フルサイズミラーレスで有機ELのEVFを搭載。AFが使え、防塵防滴仕様、レンズは「SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH.」。4730万画素の高精細を生かして、クロップで35mm、50mm、75mmの画角で撮影ができる。つまり、レンズ固定式だがレンズ4本分の働きをする。これでレンズ選びに悩まず撮影に専念できるのだ。
MFとAFの二刀流でマクロも撮れる
LEICA Q2に搭載されたSUMMILUX 28mmはM用の交換レンズとして、開放絞り値の違いで4本もラインナップされている。それだけ重要な焦点距離のレンズなのだ。広角レンズでありながら、大口径なので背景のボケも期待でき、低照度にも強い。室内ポートレートから建築写真まで何でもこなせる。ちなみに動画は4K対応。
このレンズが手ぶれ補正機能付きのAFで使えるのだ。M型の気分を味わいたい時はMFにも切り替えられる。EVFは拡大表示対応で、ピーキング機能もあので、マクロ撮影時にMFで厳密なピント合わせができる。M用の28mmF1.4の最短撮影距離は70cmだが、本機ではマクロモードに切り替えて17cmまで寄れる。
白い数字がm表示、標準モードでの最短撮影距離は0.3mになる
リングを回転してマクロモードにすると距離指標が切り替わり0.17mが出てくる
シンプルなインターフェイスで迷わない
日本のミラーレスは専用ボタンを増やして分かりやすいインターフェイスを追求しているが、LEICA QからLEICA Q2に進化した時点で、左の背面ボタンの数を5個から3個に減らしている。私にはこちらの方が、覚えなくてはならないボタンの数が少ないので使いやすい。ボディはフラットで、オプションでグリップとサムレストがあるが、これがなくても背面のくぼみがあるだけで安定してカメラを構えられる。レンズの取り付け位置とバランスも絶妙で、この辺りはレンズ固定式だからこそできた完成度の高さだと思う。
画角の切替は右上のボタンに割り振られており、ここを押すとEVFに白いブライトフレームが現れ、小さく焦点距離も表示される。ここだけはレンジファインダー気分が味わえる設計なのだ。JPEGで撮影するとクロ
2種類のモノクロモードを搭載
有機ELを使ったEVFは368万ドットと高精細で視野率約100%、倍率0.76倍で、見た感じがとてもいい。まさに撮る気にさせてくれるファインダーである。余計な表示を消せば、ブライトフレームも現れるのでレンジファインダー気分が味わえる。そしてモノクロームモードにはハイコントラストモードがあり、LEICAらしい切れ味鋭いキリッとした描写が得られる。それでは作例を見ていただこう。
28mmでは広すぎるの35mmで撮影。モノクロで魚の不気味さが際立った
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/320sec、F1.7、ISO125
左のカワハギを100%で切り出すと凶暴そうな歯が見えた。解像力は抜群だ
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/320sec、F1.7、ISO125
28mmで撮影。オリジナルは8368×5584のサイズ
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/640sec、F4、ISO100
35mmで撮影。オリジナルは6704×4472のサイズ
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/800sec、F4、ISO100
50mmで撮影。オリジナルは4688×3128のサイズ
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/800sec、F4、ISO100
75mmで撮影。オリジナルは3136×2096のサイズ
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/800sec、F4、ISO100
カラーのスタンダードモードは渋めの色合いで暗部の階調性が豊かだ
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/320sec、F2.8、ISO100
1/60sec以下になると自動的に手ブレ補正機能が働く
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/50sec、F1.7 -0.6、ISO250
マクロモード撮影した紫陽花。28mmだがフルサイズなので背景がボケる
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/160sec、F2.8 -0.3、ISO100
モノクロモードでのボケ味も美しい。EVFがモノクロになるので撮りやすいのだ
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/1600sec、F2.8、ISO100
雨が降ってきた。自転車を捉えるため感度をISO2000まで上げた
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/125sec、F5.6、ISO2000
絞り開放でのボケ味、28mmなのでボケすぎない
LEICA Q2 SUMMILUX F/1.7 28mm ASPH. 1/640sec、F1.7、ISO100
使いやすさを追求したLEICAの進化形
LEICAと聞くと伝統的なインターフェイスで使い難いのではと思っていたが、LEICA Q2で撮影してみると、それが間違いであることにすぐ気付かされる。シャッター優先も絞り優先もカンタンに選べ、手ブレ補正もしてくれる。AFは秒10コマの連写も効く、4K動画も撮れる、顔認識にシーンモードまである。さらにWi-FiとBluetoothにも対応して、スマホの専用アプリに画像が送れるのだ。
もう国産最新ミラーレスと変わらない機能を満載しながら、外見はLEICAそのものだ。ミラーレスだと思って持つとズシリと重い約718gだが、M型に交換レンズを付けたものより圧倒的に軽い。レンズも含めて防塵防滴仕様である。価格はオンラインストアで75万9000円だが、M型の交換レンズ28mmF1.4が89万1000円であることを考えれば、レンズの価格でボディまで手に入るハイコスパモデルなのだ。
クロップ機能は便利だったが、実際撮影すると80%が28mmだった。スマホと同じ画角なので撮りやすいと思った。非常に魅力的なカメラだが、私としてはもっと広角側が欲しいので、16mm、21mm、28mmの3焦点切り替えレンズを搭載したLEICA Q3が登場しないかと妄想する。LEICAのカメラとしての良さは持ってみないと分からないので、機会があればぜひ実機に触って沼にはまっていただきたい。
写真・文/ゴン川野