新型コロナワクチン接種にまつわるQ&A
米国では、十分な量の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンが確保されている。そのため、これからワクチンを接種する米国人は、米食品医薬品局(FDA)により承認された3種類のワクチン――米ファイザー社製、米モデルナ社製、および米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)社製のワクチンのいずれかから選ぶことができる。
ではどのワクチンを選ぶべきなのか。以下に、COVID-19のワクチンの選択にまつわる質問に対する専門家の見解をまとめる。
●最も効果的なワクチンはどれ?
米ウェストチェスター郡保健局で疾病管理のメディカルディレクターを務めるDial Hewlett氏は、「ほとんどの専門家は、COVID-19の重症化や感染予防に対する3種類のワクチンの有効性はほぼ同等とみている」と話す。
3種類のワクチンとも、体に疑似感染状態を引き起こし、それに反応した免疫により抗体が作られる。ただし、抗体を作らせる仕組みが異なる。
ファイザー社製とモデルナ社製のワクチンは、新型コロナウイルスが感染する際に重要な役割を果たすスパイクタンパク質の遺伝情報を、mRNAを使って体内に入れる。mRNAは壊れやすいため、mRNAワクチンは超低温での保管が必要であるほか、高い効果を得るためには2回の接種が必要となる。
これに対してJ&J社製のワクチンは、不活化した風邪ウイルス(アデノウイルス)にスパイクタンパク質を作る遺伝子を組み込んで体内に入れることで抗体を作らせる。保管は冷蔵でよく、接種も1回で済む。
●新型コロナウイルス変異株に対するワクチンの効果は?
3種類のワクチンはいずれも、英国由来と南アフリカ由来の変異株に対して有効と考えられている。
ただし、これらの変異株に対する効果が実際に検証されたのはJ&J社製のワクチンのみで、ファイザー社製とモデルナ社製のワクチンは、変異株が出現する前に開発された。米国や南アフリカ、中南米で実施されたJ&J社製のワクチンの臨床試験では、感染の予防効果は全体で66%、入院と死亡の予防効果は100%であった。
一方、最近カタールで実施された臨床試験では、ファイザー社製のワクチンの感染予防効果が、英国由来の変異株に対しては90%、南アフリカ由来の変異株に対しては75%と報告されている。
モデルナ社製のワクチンについても、同程度の予防効果があるものと考えられている。なお、モデルナ社は、ワクチン接種済みの人に対するブースター(追加免疫)の効果を検証中であるという。
●ワクチンに対するアレルギー反応は?
「Journal of the American Medical Association」3月16日号に掲載された研究によると、ファイザー社製とモデルナ社製のワクチンに対する重度のアレルギー反応はまれで、前者で100万回当たり4.7例、後者で100万回当たり2.5例だという。
J&J社製のワクチン接種に伴う重度のアレルギー反応については報告されていないため、過去にワクチン接種に伴い問題が生じたことがある人は、J&J社製のワクチンの選択について医師に相談すると良いだろう。
●若い女性は副反応のリスクが高い?
J&J社製のワクチンに関して、まれではあるが危険な血栓の副反応が報告され、一時的に接種が中断された。この副反応が生じたのは、主に50歳未満の女性だった。
FDAは、18〜49歳の女性において、同ワクチンの接種100万回当たり13例に血栓が生じる一方、COVID-19による死亡が12例、入院が657例回避できると推算している。
●ワクチンの2回接種を受けるのが困難な場合はどうするべきか?
J&J社製のワクチンは、冷蔵保管での輸送が可能であるため、公衆衛生当局は同ワクチンを、米国の医療機関によるサービスが十分に行き届いていない地域を感染から守るために有用だとみなしている。
また、1回接種である点も、居住状態が不安定な人や身体障害者、病気などで家から出られない人など、2回接種が困難な人にとっては理想的なワクチンといえる。
Hewlett氏は、「血栓という副反応の出現に伴う同ワクチンの一時中断により、この副反応のリスクがほぼない男性や高齢者、サービスの行き届いていない地域の人々が同ワクチンの接種を検討外に置いてしまう可能性がある」と懸念を示している。(HealthDay News 2021年5月10日)
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(参考情報)
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2776557
https://www.cdc.gov/media/releases/2021/fda-cdc-lift-vaccine-use.html
構成/DIME編集部