クリアな光学式ファインダーで気持ちよく撮れる!視野率約100%のPENTAXのデジタル一眼レフ「K-3 Mark III」レビュー・撮影編
2021.05.31■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所
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ミラーレスより難しい一眼レフ
我々はスマホで撮影することに慣れている。ミラーレスのEVFも原理は同じで、撮像素子が受けた光の撮影結果をモニターしながらシャッターを切る。つまり、後出しじゃんけんのような撮影方法なので撮る前から成功が約束されている。これに対して一眼レフの光学ファインダーはレンズから入ってきた光を見ているので、シャッターを切った後の映像が記録される。さらに、絞りも感度もホワイトバランスも反映されないので、露出がアンダーでもオーバーでも、色が赤くても黄色くてもモノクロモードでもファインダーをのぞいただけでは分からない。これがレンジファインダーになると画角もピントも曖昧になる。
見たままに撮れないなんて難しいじゃんと思うかもしれない。そう難しいのだ。それと引き換えにPCのモニターを縮小したような画面ではなく、レンズからダイレクトに来た抜けのいい光を見られる。シャッターを切ったあとでなければ結果が分からないという銀塩写真のようなドキドキ感が味わえるのだ。
マクロから望遠まで3本のレンズで撮る
今回、メーカーから借用したのはマクロレンズ「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」、広角でパンケーキ「HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited」、F2.8通しの明るいズーム「HD PENTAX-D FA★70-200mmF2.8ED DC AW」の3本である。
「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」
最大等倍でも撮影できるマクロレンズ。焦点距離は53.5mm(35mm換算)と標準レンズとしても使える。最短撮影距離は0.139mと文句なしだ。絞り込んだ時のボケ味も良く、旅行やスナップにも加えたい頼りになる単焦点レンズだ。
レンズ側に絞りイングのある使いやすいデザイン。MFの回し心地も良い
バラにとまるコキマダラセセリ。複眼や鱗粉までクッキリと描写された
PENTAX K-3 Mark III 35mmF2.8 Macro 1/100sec、F7.1、ISO100
絞り開放のボケ味。バラが浮き上がるような美しいボケだ
PENTAX K-3 Mark III 35mmF2.8 Macro 1/640sec、F2.8+0.3、ISO100
スナップに使った場合、絞り込んだ時のボケ味も良く自然な遠近感が得られた
PENTAX K-3 Mark III 35mmF2.8 Macro 1/160sec、F5、ISO200
「HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited」
厚さ25mmのパンケーキレンズ。最新のHDコーティング、円形絞りを採用。32mm(35mm換算)という控え目な広角だが、非球面レンズとフローティング機構の採用して、シャープでヌケのいい描写が得られる。鏡胴、フード、キャップも金属製、レンズの重さは134gと軽く常時付けておきたい単焦点レンズだ。
クイックシフト・フォーカス・システムでピントリングを回せばAFからMFに切り替わる
ピント指標の周りには被写界深度を示す目盛が刻まれたレトロなデザイン
明暗差の激しい被写体。空は飛んでいるが建物の暗部の階調は再現された
PENTAX K-3 Mark III 21mmF3.2AL 1/640sec、F3.2、ISO100
32mmだがアングル次第では超広角的な感じが出せた
PENTAX K-3 Mark III 21mmF3.2AL 1/800sec、F3.2、ISO100
路面電車の窓越しに撮影。運転席のボケが自然な感じで柔らかい
PENTAX K-3 Mark III 21mmF3.2AL 1/200sec、F5.6、ISO200
都電おもいで広場、歪みがなく都電の塗装のリペイントの質感もいい
PENTAX K-3 Mark III 21mmF3.2AL 1/500sec、F5.6、ISO200
都電の運転席、金属の質感がリアルだ。手前がアルミ合金、奥は鉄製だろうか
PENTAX K-3 Mark III 21mmF3.2AL 1/200sec、F3.2、ISO200
アーケードの商店街、奥行きのあるボケと控え目の発色がスナップ向き
PENTAX K-3 Mark III 21mmF3.2AL 1/200sec、F3.2、ISO200
シャッターのアート、ペイントの質感と色合いがうまく再現できた
PENTAX K-3 Mark III 21mmF3.2AL 1/80sec、F3.2、ISO200
「HD PENTAX-D FA★70-200mmF2.8ED DC AW」
希望小売価格33万円の高級レンズ。ズーム全域で開放絞り値F2.8を実現。異常低分散ガラス、EDガラス、スーパーEDガラスを贅沢に使い、独自の最新コーティングを施している。色収差が抑えられた解像感の高い描写が得られる。防塵防滴構造で、焦点距離は107~307mm(35mm換算)になる。
重さフード込み約1835gとなかなか重い。長さも約20cmある
クイックシフト・フォーカス・システムを生かす切り替えスイッチ付き
すれ違う新幹線を70mm側で撮影。高速連写は11コマ/秒である
PENTAX K-3 Mark III FA★70-200mmF2.8ED 1/800sec、F3.2+0.3、ISO100
200mm側までズームすると遠近感が圧縮された
PENTAX K-3 Mark III FA★70-200mmF2.8ED 1/400sec、F3.2、ISO100
同じく200mmで近づいてくる都電。速度が遅いので撮りやすい
PENTAX K-3 Mark III FA★70-200mmF2.8ED 1/400sec、F2.8、ISO100
170mmで撮影した花壇。絞り開放の前ボケ、後ボケが美しい
PENTAX K-3 Mark III FA★70-200mmF2.8ED 1/320sec、F2.8+0.3、ISO100
花壇にいたムクドリ。絞り開放だがシャープな描写で細部が再現された
PENTAX K-3 Mark III FA★70-200mmF2.8ED 1/200sec、F2.8+0.3、ISO100
ミラーレスとは撮影スタイルが違う
一眼レフのファインダーをのぞくと銀塩写真時代のカメラを思い出す。しかし、K-3 Mark IIIはファインダーの黒枠が多いような気がする。倍率は1.05倍なので、そんなはずはないと思ったのだが、35mm換算では0.7倍になる。それならOLYMPUS OM-D E-M1も0.74倍なのでそんなに変わらないのだ。せっかく視野率100%なのでもっと大きくして欲しかった。ちなみにCanon R5は0.76倍、Nikon Z5は0.8倍である。
K-3 Mark IIIの光学ファインダーをのぞくとピントがどこに合っているのか良く分からないことがある。AFの枠がよく見えないのだ。これはドキドキする。スナップでは不安なのでAFはセンター固定にした。自由に動かせるようにしても、その選択範囲はミラーレスと比較すると格段に狭い。
ミラーレスになれた私にK-3 Mark IIIは敷居が高い。それでも普段より作例が多いのは、撮影枚数が多かったからである。ちょっと敷居が高いが、カスタマイズで追い込めば良き相棒になってくれそうな一眼レフカメラ。それがPENTAX K-3 Mark IIIなのだ。
写真・文/ゴン川野