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サッカー日本代表・森保一監督の指導術を支える「三種の神器」

2021.05.28

日本代表監督の「三種の神器」はタブレット、パソコン、メモ帳! 森保一監督の仕事術


お気に入りのウブロの時計を身に着けて采配を振るう森保監督(写真提供:日本サッカー協会)

日本代表監督ともなれば、仕事上の必須アイテムは多い。選手や対戦相手の情報をチェックするためのタブレットやパソコンは必須だし、国内はもちろんのこと世界中を移動するため、スーツケースや時計なども不可欠なアイテムだ。2018年に就任し、2022年カタールワールドカップに向かっている森保一監督は何をどのように使いながら、勝利を目指しているのか。指揮官の仕事術に迫った。

指導者17年目に突入。IT技術の進化に対応し、タブレットで動画を逐一チェック


冨安健洋選手とコミュニケーションを取る森保監督(20213月、筆者撮影)

コロナ禍で1年延期となった東京五輪が2か月後に迫ってきた。さらに2022年カタールワールドカップ(W杯)も今年3月に2次予選がようやく再開。5~6月の3試合を経て、9月からは最終予選に突入する見通しだ。2018年ロシアW杯でベルギーに衝撃的な逆転負けを喫してから3年。日本代表は史上初のW杯8強入りに向け、本格稼働しつつある。

そのチームを力強くリードするのが、就任3年目の森保一監督。ご存じの通り、9310月の「ドーハの悲劇」を現場で経験した元日本代表レジェンドだが、指導者に転身したのは2004年。サンフレッチェ広島のアカデミーコーチからのスタートだった。同時期に全国の有能な若手発掘に当たるJFAナショナルトレセンコーチを経験。2005年からは吉田靖監督(現浦和アカデミー・ヘッド・オブ・コーチング)の下でU-19日本代表コーチを務めた。内田篤人(JFAロールモデルコーチ)や槙野智章(浦和)、香川真司(PAOK)らとは2007年U-20W杯(カナダ)まで共闘。強固な信頼関係が築かれた。

その後、広島・アルビレックス新潟コーチを経て、2012年に広島の監督に。そこで3度のJ1制覇を果たしたのは周知の事実である。この卓越した実績を買われて201710月に東京五輪代表監督に抜擢される。2018年4月からはA代表コーチも兼務し、ロシア直後に現在のポジションに就いている。

毎月の試合チェック数は100試合をゆうに超える!

こうして指導者生活17年目を迎えたわけだが、日本サッカーの地位向上に伴って海外移籍選手が急増。彼らの動向を逐一、追わなければいけなくなった。IT技術や動画普及もあって、仕事内容も大きく変化。現場視察と動画チェックを同時並行してやらなければいけなくなった。そこで必須なのが、パソコンとタブレット。とりわけタブレットはどこに行く時もカバンに入れている。


私物のタブレット。これが日本代表強化に役立っている(写真提供:日本サッカー協会)

「Jリーグの視察に関しては、J1とJ2の候補選手を代表コーチングスタッフで手分けしながら実際に足を運んでいるのですが、タブレットを現場に必ず持参して、リアルの試合を見ながらDAZNで細かい部分を確認しています。試合中に起きたことや感想、選手評価などはスタッフで共有しているクラウドに書き込み、リアルタイムで共有するのが常。昔は電話やスタッフミーティングで話す形を取っていたんですが、ITの進歩で情報共有が迅速に行えるのは本当に有難いですね」と森保監督はしみじみと語る。

しかしながら、IT技術が進めば進むほど、多種多様な情報を収集しなければならなくなったのも事実。指揮官がコーチに転身した当初はそこまでインターネットも普及しておらず、海外サッカーもスカパーやWOWOWなどの有料放送を通じてUEFAチャンピオンズリーグ(欧州CL)など限られた試合を見られる状況だったが、現在では「ワイスカウト」という世界中の試合を配信するサービスがある。これを駆使すれば、あらゆるリーグの選手でも追える。森保監督は日常的な映像チェックを欠かさないという。

「目下、海外組と言われる選手は50人を超えていますが、彼らの試合は全て目を通すようにしています。確認した試合は現場と映像合計で1月が100試合、2月は143試合、3月は106試合、4月は128試合。5月は半月で75試合に上った(笑)。もちろん全てをフル視聴していたら時間が足りませんから、選手の出ている間だけに限られることもありますけど、もともと試合を見るのは好きなので、全然苦にならないですね」と涼しい顔で言う。指揮官は練習で指示したり、ピッチ上で采配するだけが仕事ではないのだ。

動画作成やミーティングの準備などにパソコンも日常的に使用

視察・映像分析を重ねて選りすぐりのメンバーを選び、年5~6回の代表合宿に突入することになるが、トレーニングメニューの考案やミーティングの準備なども事前に手掛けておく必要がある。そこで力を発揮するのがパソコン。移動の多い森保監督は「軽くて強い」とポイントを重視。少し高額ではあるが、パナソニックのレッツノート(133インチ)をJFAから支給してもらっている。


2つの重要アイテムを駆使して、戦術が練られている(写真提供:日本サッカー協会)

2004年にコーチになって初めて買ったパソコンはVAIOでした。15.6インチの大型モニターで、ACアダプターも弁当箱くらい大きかった記憶があります(笑)。そこに映像編集ソフトを入れて動画編集にトライし、パワーポイントでの資料作成に取り組むなど、少しずつコーチの仕事を覚えていきました。当時、広島の監督をしていた小野剛さん(現JFA技術委員会副委員長)が映像や資料作りが巧みでした。自分もチームのキャンプに帯同させてもらったんですが、映像のどこに音を入れるか、音楽のボリュームをいつ上げるかまで工夫されていて、ピッチのみならず、選手へのアプローチの多様化、様々な形で選手に刺激を与えていく選択肢を学ぶ機会になりましたね」

選手たちが思い切り、自分らしさをピッチで存分に発揮するために、指導者は伝え方の工夫やピッチ外でも伝えるための労力を惜しんではいけないことを改めて感じたという。

最近はJFAの公式ユーチューブチャンネル「Team Cam」などを通じて森保監督のミーティング風景の一端を見ることができるが、試合前は物凄い勢いで選手をハッパをかけている。「僕はもともと根性系ですよ」と本人は冗談交じりに笑うが、パソコンなどITツールを駆使した戦術分析やスカウティングがベースになければ、鼓舞もできない。使うべき道具を確実に使いこなすことも勝利のへの重要なカギと言っていい。

「森保メモ」の源流とは?

ミーティングに関連するツールとしてもう1つ重要なのがメモ帳。森保監督が試合中にしきりにメモを取る姿が印象に残っているファンも多いだろう。「川崎フロンターレの鬼木達監督なんかもしょっちゅうメモしてますし、特別なことじゃないですよ」と指揮官はテレ笑いを浮かべるが、緊迫感のある試合中に気付いたことを記録するというのは、とっさの判断を下すうえでも大切なことなのだ。


森保監督が試合中に気づいたことを記しているメモ帳(写真提供:日本サッカー協会)

「試合時はスーツの内ポケットに入る手のひらサイズのコクヨのノートを使っています。リングノートだと引っ掛かるので、リングがないものがベター。そこでメモした内容をハーフタイムに伝えたり、試合後のフィードバックに活用したりしています。代表活動終了後には活動報告書をまとめなければいけないので、その時にも役立っています。だいたい年間5冊くらいにはなりますね」

 笑顔でこう話す森保監督は何かを記録することが習慣化しているという。というのも、長崎日大高校を卒業して広島の前身であるマツダサッカー部に入った時、監督の今西和男さんから「毎日の練習日誌を書け」と言われたから。いわゆるサッカーノートだが、それを機に意識的に取り組み、長年続けてきた。

今の時代にはアプリのサッカーノートもあるが、彼は文字を書くことにこだわる。それは指導者転身後の練習日誌も同様だ。蓄積してきたトレーニングメニューだけは最近、PDF化に踏み切ったというが、「データ化するのはホントに大変ですよね」と苦笑する。ノートの内容をパソコン入力することもしていないといい、実は意外なほどのアナログタイプのようだ。

実はモノに無頓着。荷造りでは妻の力強いサポートも!

「僕は物事に無頓着で、モノにもあまりこだわりがないんです。カバンや時計も『絶対にこれじゃないとダメ』というものは特にない。出張の荷物も何でもかんでも詰め込もうとするので、ウチの妻が見かねて入れ直してくれるほど。出発する前はスペースに余裕があるはずだったのに、帰ってくる時は強引に詰め込んでパンパンということもよくありますね。みなさんが考えているほど細かい人間じゃないし、ホント、普通なんですよ(笑)」

森保監督は素の自分をさらけ出してくれたが、そんな彼にもお気に入りの特別アイテムがある。1つが代表活動時につけるウブロの時計。もう1つが同じく代表の移動時に使うグロープ・トロッターのスーツケースだ。


日本代表スポンサーとなっているグローブ・トロッターのスーツケース(写真提供:日本サッカー協会)

「ウブロの時計は日本代表モデルの『ビッグ・バン・ブルーヴィクトリー』(1555200円)。高価なものなので、つける時はすごく緊張しますし、海外遠征先でもセーフティボックスに入れています

。初めていただいたのはロシアW杯前にA代表のコーチになった時。3年使っていますけど、重厚感があってデザインが斬新で気持ちが引き締まりますね。

グローブ・トロッターのスーツケースは今年3月からスポンサーになっていただいた関係で使うチャンスを得ました。『サムライブルーリミテッドコレクション』という特別モデルで(437800円)。伝統の重みと高い技術、存在感が揃った逸品だなと痛感しています。僕は移動が多いんで、カバンには頑丈さとデザイン性も求めるのですが、それも兼ね備えている。本当にもったいないくらいです。大事に使わなければいけないなと日々、自分に言い聞かせていますね」


高級品を大事に使っている森保監督(写真提供:日本サッカー協会)

代表監督と言う立場上、見た目にも気を配らなければいけない森保監督だが、こうしたアイテムが自身を引き立ててくれる部分もころも大いにあるだろう。つねに身の回りにある貴重なモノとともに世界トップを目指し続ける指揮官のさらなる飛躍を楽しみに待ちたい。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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