先日、友人からメッセージカードをもらった。
メールとは違うあたたかい感触にほっこりしながら、文章を読むと、最後に「この紙は土に埋めると花が咲きます」と書いてあった。
ざらざらとした感触の紙の表面を良く見ると、中に種らしきつぶつぶが見える。
そういえば、以前とある洋服のブランドのタグが、これと似たような仕様になっていた。
洋服を買った時、いつも捨ててしまうタグが、土に埋められて、花を育てられるなんて素敵じゃないかと感動したことを覚えている。
このような種が漉き込まれている紙のことを「シードペーパー」というそうだ。
シードペーパー®は、紙ごみとなった古紙を再生し、花の種を漉き込んだ環境に優しいリサイクルペーパー。一晩、水につけて、その後、土に埋めると数日で発芽し、紙の部分はゆっくりと分解され、やがて土に還る。
風合いもハンドメイド感があってとてもあたたかく、どこか懐かしさも感じる。
SDGsやサスティナブルな商品がもはやスタンダードになりつつあるここ数年、特に注目を集めている花咲く再生紙だ。
その誕生は1995年。
コロラド州ボウルダーの当時20代だった若者たちが、町からあふれる紙ゴミをリユースしようと事業を立ち上げた。
国内で、今ほど、環境に配慮した商品が多くは出回っていなかった2009年。
神奈川県鎌倉市にある有限会社スープが、このBloomin社と提携し、日本とアジアでシードペーパーの総代理店として「再生紙+花の種」のアイデアや「芽の出る体験」を伝え始めた。
以前は、新しいものに比較的敏感な、音楽業界やファッション業界におけるプロモーション時の販促物に使用されることが多かったというが、最近では一般的な企業はもちろん、個人でお店やブランドをやっている方など、様々な業種の人からシードペーパーを利用したいという問い合わせがあるという。
思えば、ペーパーレス化が進んでいる昨今でも、数日、紙ごみを集めるだけで、結構な量になる。例えば名刺。部署が変わったりすれば、古いものはゴミになってしまうし、販促のためのパンフレットや説明書なども必要がなくなったら、大半は捨てることになる。
もし、これらがシードペーパーに印刷されたものだったら…。
ゴミにならないだけでなく、土に埋めれば緑が増えていき、“育てる”楽しみまでついてくる。
いいところしかないのだ。
イベント開催なども制限され、対面での交流が取りづらい今、“花が咲いたら思い出す”このようなシードペーパーでのプロモーションは、企業にとっても、受け取る人にとっても一瞬だけの繋がりではない、あたたかく心に刻まれる贈り物になることだろう。
有限会社スープの代表である野口さんはこう語る。
「おすすめは、お客様にお礼状やDMなどを送る際にシードペーパーを使って頂くことです。受け取ったお客様もそれを捨てることはなく、土に埋めて、花が咲く楽しみを感じてくれるはず。それぞれのご家庭で、シードペーパーがきっかけであたたかい対話の時間が生まれたり、次にお会いした際に、お客さんとのコミュニケーションのきっかけにもなるのではないかなと思います」
現在は、海外でつくられているというシードペーパーだが、今後は国内の紙ごみを集めてリサイクルし、国産化も目指しているという。
“今の子供たちの世代が大人になった時、地球環境がどのようになっているのかとても気になるんですよね。異常気象や温暖化が進んで今のように暮らせないなんてことがないように…。そのためにもできることから進めていきたいです”
野口さんの言葉がとても印象的だった。
ショップタグや名刺をシードペーパーに印刷するというのはもちろん、オンラインストアでは、メッセージカードやインクジェット用のハガキ、ぬり絵なども販売されているので、それぞれのスタイルで、気軽に暮らしに取り込むことが出来るのも嬉しいポイントだ。
シードペーパーに書かれた手紙を手にした時に感じた“離れていてもつながっているようなあたたかい感覚”。
こんな時期だからこそ、一層嬉しく感じた。
私も最近会えていない人達に、シードペーパーのメッセージカードに手紙を書いて、優しい時間と体験を贈りたいと思っている。
シードペーパーのオンラインショップなどはこちら→ https://seedpaper.jp/
取材・文 モキマサヨ
煎茶道師範・ラジオDJ
毎日、ポジティブになれるコトやモノをハンティングしています。
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