実は、日本は世界に先駆けて仮想通貨の法規制を強化してきた。それにより仮想通貨の取引はかつてに比べてかなりリスクを減らしている。そして、2020年には、正式名称も「暗号資産」に変わった。
金融庁が仮想通貨を「金融商品」に分類した理由
テレビCMやネットニュースなどで「ビットコイン」の名を目にする機会が〝また〟増えてきた。が、一昔前と違うのは、ビットコインのことを「暗号資産」と呼ぶようになってきたことだ。「仮想通貨」との違いは何なのか? そして、いつの間に変わったのか?
そのきっかけは、2020年5月の法改正だ。現在、仮想通貨の取引を規制する代表的な法律として「資金決済法」と「金融商品取引法」があるが、それらの整備の中で、仮想通貨のことを株や投資信託と同じように「金融商品」として扱う方針となった。それに伴い、世界標準の名称「Crypto Assets」の日本語訳である「暗号資産」が正式名称となった(以後、本特集では「暗号資産」と表記)。
他の金融商品と同様に扱うようになり、盗難や、取引所からの流出事故、悪意のある取引価格操作などから投資家を守るルールが明文化された。具体的にどのようなリスクに対してどう対策されたのかを左にまとめた。
リスク(1)取引所から大規模流出するリスク
対抗策(1)カストディ規制で安全な保管を実現
カストディとは「保管業務」のこと。かつては「暗号を売買はしないが保管はする業者」は規制できなかったが、法改正により「交換業」と定義し登録制にした。
対抗策(2)コールドウォレットでの保管義務
取引所が預かる顧客の暗号資産の95%以上を、インターネットに接続していない機器(コールドウォレット)での保管を義務づけ、ハッキングによる流出耐性を高めた。
リスク(2)公正な取引・売買を阻害するリスク
解決策:株取引と同じルールを適用
暗号資産の価格を吊り上げる目的で、デマ情報をSNSで拡散するなどの行為や、大量の売買注文を出しほかの投資家の取引を故意に誘ったりする行為を禁止した。
リスク(3)暗号資産関連商品への投資リスク
解決策:証券会社を通さないと募集できない
会社や不動産などの資産を裏づけにした暗号資産「セキュリティトークン」での資金調達は、原則証券会社を通さないと投資家を募ることができない。
ハッキング事件以後、ビットコインは安全に取引できるようになったのか?
マネックス証券 暗号資産アナリスト
松嶋真倫さん
新卒で都市銀行退職後に同社へ。マネックスクリプトバンクで業界調査レポートを多数執筆。
2018年の「コインチェック事件」は、暗号資産の安全性というよりは取引所の保管体制に問題があった。そのため各取引所が加入する日本暗号資産取引業協会が、高安全性の業務を目指し、定期的に検査をするようになった。
これで取引所へのハッキングリスクは減らせたとしても、ほかのネットワークサービスと同様に悪意ある人が直接、投資家の個人口座を攻撃するリスクがある。
「自己防衛意識が大事です。複数の取引所やウォレットへの分散保管や2要素認証が効果的。これから投資を始める方は、少額から始めましょう。取引を体験する中で、暗号資産とはどういうものかを学ぶことが重要です」(松嶋さん)
【POINT CHECK】
取引所は定期的な検査で安全性確保へ
個人のハッキング対策には保管場所の分散を
始めるならごく少額から
取材・文/久我吉史