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日常会話では耳にする機会が少ない、『悪貨は良貨を駆逐する』の意味をご存じでしょうか?言葉の読み方や意味だけでなく、ことわざが生まれた由来や使い方も紹介します。類義語にも触れるので、使用場面によって使い分けられるようになりましょう。
「悪貨は良貨を駆逐する」とは
『悪貨は良貨を駆逐する』には、どのような意味があるのでしょうか?言葉の読み方や意味、由来について紹介します。
言葉の読み方と意味
『悪貨は良貨を駆逐する』は、『あっかはりょうかをくちくする』と読みます。悪貨は『悪いお金』、良貨は『良いお金』を指し、駆逐の意味は『邪魔者を追い払う』です。
元々は、実質的な価値は違うが名前が同じ貨幣があり、それが同時に国内で流通する場合は、良貨は貯蔵されて悪貨だけが市場に流通してしまうことを表した言葉でした。
これが転じて、近年は『悪いものほど世の中に流通し、良いものは失くなってしまう』『悪がはびこると、善が滅びてしまう』といった意味合いで使用されます。
ことわざの由来は「グレシャムの法則」
『悪貨は良貨を駆逐する』は、19世紀にイギリスの貿易・為替・金融業者であるトーマス・グレシャムが提唱した、『グレシャムの法則』が由来となっています。
『グレシャムの法則』とは、『金銭価値の違う同一表記の通貨が同時期に流通した場合、悪質な通貨が市場に出回り、良質な通貨は貯蓄されてしまう』という法則です。
たとえば、見た目は同じで価値が違うダイヤモンドが二つ同時に流通した場合、人々は物々交換に『価値が低い方のダイヤモンド』から使用し、『価値が高い方のダイヤモンド』は『価値が低い方のダイヤモンド』が手元に無くなるまで使わず、貯蓄してしまう傾向があります。
このように、まずは価値が低いものや悪質なものから市場に出回り、価値が高いものや良質なものは蓄えられると考えたのが『グレシャムの法則』です。
使い方と例文
『悪貨は良貨を駆逐する』は、主に人や職場、子どもに対して使用できます。それぞれの使い方について、例文もあわせて詳しく見ていきましょう。
人や職場に使える
『悪貨は良貨を駆逐する』は、人に対して『不健全な行いによって、健全な行いが押さえつけられている』などの批判的な意味で使用できます。
また、職場に対しても『悪い人間の行いが、良い人間たちを堕落させてしまう』『悪事を行っている職員が一人でもいると、他の職員も悪い方向に影響されてしまう』といった意味の使い方が可能です。また、姑息な手段を使って出世する人に対しても使われます。
どちらも『良いのものを悪くしてしまう』という、ネガティブな言葉として使用されています。
子どもにも使える
『悪貨は良貨を駆逐する』は、たとえば宿題をしていない子どもに対しても使用できます。子どもは『周りの友達も宿題をせずに遊んでいる』という言い訳をしますが、それが『自分も宿題をしない理由にはならない』という戒めの言葉として利用されます。
子どもに使う場合は、『友達が遊んでいるからといって、あなたも遊んでいい理由にはならない』『悪貨は良貨を駆逐するにならないように、周りに流されず正しい行いは進んでやるようにしよう』という、二つの意味をしっかりと伝える必要があります。
子どもにとっては難しいことわざなので、意味を丁寧に正しく教えましょう。
「悪貨は良貨を駆逐する」の例文
それでは、実際に会話で使用する場合の具体的な例文を紹介します。
- まさに悪貨は良貨を駆逐するという言葉の通り、部長の不正は次々と新たな問題を引き起こしてしまった
- 転売が横行したことで、本当に必要な人に商品が届かなくなった。悪貨は良貨を駆逐する世の中だ
- あの人が卑怯な手段で昇進したせいで、まじめな社員が正しく評価されなくなってしまった。悪貨が良貨を駆逐したのよい例だ
「悪貨は良貨を駆逐する」の類語
状況によっては、別の言い方をした方が適している場合もあります。『悪貨は良貨を駆逐する』と似たような意味を持つ類語を例文とともに紹介するので、使い分けに役立てましょう。
「憎まれっ子世に憚る」
『憎まれっ子世に憚る(にくまれっこよにはばかる)』は、『憎まれる悪人ほど、世渡り上手で影響力を持つ』『嫌われ者ほど世間では幅をきかせて、悠々と生きている』という意味のことわざです。
これが転じて、『ワンパクな子どもは大人になって出世する』や『世渡りするには厚かましい方がいい』、『世の中は理不尽である』といった意味合いで使用されています。以下、例文を紹介します。
- あの人はクラスで好き放題やっているのに、なぜみんなから好かれているのだろう。まさに憎まれっ子世に憚るだ
- 憎まれっ子世に憚るという言葉の通り、ライバルを蹴落とすぐらいじゃないと出世は難しいのか
「衆寡敵せず」
『衆寡敵せず(しゅうかてきせず)』は、少数が多数に敵対しても勝ち目はない様子を表した言葉です。
『衆』は多いこと、『寡』は少ないことを意味し、『寡は衆に敵せず(かはしゅうにてきせず)』と表記される場合もあります。以下、例文を紹介します。
- 衆寡敵せずという言葉があるように、中小企業が大企業に立ち向かうのは厳しい
- 今はまだ味方が少ないので、衆寡敵せずの勝負であることは明らかだ