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〝望遠レンズ〟と〝1インチセンサー〟がこれからスマホのスタンダードになる?

2021.05.23

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は続々と発表されている最新のスマートフォンについて話し合っていきます。

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最新ハイエンドAndroidスマートフォン! 最注目は1インチセンサー搭載のAQUOS R6!

房野氏:各メーカーから2021年春モデルのハイエンドAndroidスマートフォンが発表されてきました。どのような印象をお持ちでしょうか。

房野氏

石川氏:個人的には「Xperia 1 III」がいいなと思っていたけど、後から発表された「AQUOS R6」のインパクトにやられちゃいました。簡単にいえばカメラに1インチのセンサーを搭載した。代わりに本体が分厚くなっちゃうかと思えば許容範囲内に収まっています。

「Xperia 1 III」

「AQUOS R6」

石川氏

法林氏:本当にびっくりしたね。ついに来たかって感じだよね。

法林氏

石川氏:シャープいわく、今までのスマートフォンのカメラはセンサーこそ小さいけれどCPU性能なども合わせた〝知力〟で補っていた。逆にデジカメは大きなセンサーを使った〝体力〝できれいな写真にしていたけれど、AQUOS R6ではその両方で高画質にする形です。

石野氏:さらにびっくりしたのが、HUAWEIのイメージが強かったLeicaブランドと協業している点です。

石野氏

法林氏:おそらくLeicaとHUAWEIの独占契約が切れるタイミングなんでしょうね。シャープ独占にはならなさそうなので、今後Leicaは他のスマートフォンメーカーとも協業するかもしれない。AQUOS R6でまた衝撃なのは、カメラのレンズが1つだけなところです。

石川氏:2000万画素の1インチセンサー搭載でシングルレンズですね。

房野氏:本当にデジカメのような構成ですね。

法林氏:レンズは1つなので、ズーム撮影時にはいわゆる「クロップ(切り抜き)」をしていきます。当然解像度は下がりますが、画素数の高さとセンサーサイズでカバーできる。

石川氏:1インチセンサーのサイズって今までのスマートフォンに採用されたセンサーと比較すると5~6倍近く大きい。そのためシングルレンズでも超広角からズーム撮影までカバーできるという仕組みです。

法林氏:スマートフォンのカメラが進化してきたことでどんどんデジカメが売れなくなってきたという話もあるけど、デジカメ業界はカメラレンズを2つ3つと付けなかったじゃんというのが僕の意見。それをシャープは逆にシングルレンズでもここまで凄いものが作れるというものを出してきたというのにかなり驚きました。

石川氏:1インチセンサーを搭載するスマートフォンって本当は、ソニーが真っ先に作るべきだった。Xperia 1 IIIもズームレンズの仕組みなどが凄いとは思ったんですけどね。

Xperia 1 IIIの可変式望遠レンズ

法林氏:Xperia 1 IIIが目指しているのは、どちらかというとGalaxyとかHUAWEIが唱えてきた、AIをフル活用するカメラ性能向上の考え方。シャープは全体像を見て、スマートフォンのカメラはどうあるべきかを1から考えた結果としてこの形になっています。

石川氏:そうですね。だから逆にいうとソニーでは作れないものだったのかもしれない。ソニーとしては、スマートフォンにデジカメの「RX」シリーズにのせるような1インチセンサーを搭載するなんておこがましいという価値観があるのかもしれません。

ソニー「RXシリーズ」

法林氏:ソニーはグループ内にイメージセンサーを作っている会社があるので、Xperiaに1インチサイズのセンサーを搭載することもできなくはないはず。

房野氏:AQUOS R6に搭載されるセンサーはシャープ製なんですか。

石川氏:いや、ソニー製ですね。RXシリーズと同じものを採用しています。

法林氏:今、世界でデジタルカメラに搭載できる1インチのイメージセンサーを製造している会社はいくつもないですし、圧倒的に強いのはソニー。

房野氏:先日、XiaomiがSamsungと共同で作ったのは“ほぼ”1インチセンサーでしたね。

法林氏:そう。デジタルカメラでもソニーのRXシリーズ以外にも1インチのイメージセンサーを搭載する機種はいくつかあるけど、、画像処理についてはそれぞれでチューニングされています。AQUOS R6はそのまま1インチセンサーをのせたのでびっくりです。

石野氏:写真の“カリカリ”っとした繊細な仕上がりは、ほかのスマートフォンとは明らかに違いがありますよね。

石川氏:やっぱり1インチセンサーは凄いと思わされました。

法林氏:イメージセンサーの威力は大きいよね。

石川氏:要はなんでこのタイミングで1インチセンサーを搭載できたのかという話で、7枚のレンズをぎゅっと1つに詰めたものが搭載されているため、ボディの厚みを抑えることができたからです。このレンズはおそらくシャープがLeicaと協業で作ったもので、理屈としてはHUAWEIのものと同じですね。

法林氏:Leicaとしては、スマートフォンのカメラが普及しているのはわかるけど、カメラ自体にも改めて興味を持ってほしいという思いがあるようです。シャープとLeicaの関係は独占ではないとは思うのですが、実際に協業できるメーカーは少ないでしょう。

房野氏:ディスプレイはこれまで通りIGZO液晶ですか?

石野氏:IGZOではあるんですけど、有機ELのIGZOですね。

法林氏:IGZOはもともと素材というか、材質の名前なので、液晶じゃなく有機ELの製造にも活かせるんです。シャープとしては、AQUOS zeroシリーズでやった有機ELを新たに作り直したという形で、ここも注目ポイントです。

石野氏:リフレッシュレートは240Hz可変でかなり高性能。解像度としてはFHDより少し上くらいですね。

石川氏:ディスプレイとかレンズの自社生産設備を持っているシャープは、その強みを出せたという形ですね。

法林氏:ディスプレイは自分で作っている、カメラのセンサーは他社から調達するけどカメラモジュールとしての組み上げは自社でできるのがシャープ。

石野氏:シャープのスマートフォンって、カメラ性能には弱点があったんですよ。特にここ数年は弱かったんですけど、Leicaと協業して一発逆転という感じですね。

法林氏:発売は6月予定なので、Xperia 1 IIIと真っ向勝負という形になるかもしれません。

石野氏:それでいうとAQUOS R6のチューニングがうまく仕上がらなかった場合、Xperia 1 IIIのオートフォーカスは速くて撮りやすいという強みがあるかもしれません。

法林氏:シャープの人いわく、Xperia 1 IIIの発表時にソニーがいっていたことのほとんどは、去年シャープがいっていたこと。ディスプレイを1枚ずつ調整する機能もそうですね。

石川氏:日本で売られているスマートフォンの割合は、iPhoneが4割、ミドルレンジモデルが4割、ハイエンドモデルが1割、フィーチャーフォンが1割らしいと聞いて、衝撃を受けた。それでいうと「Galaxy S21」だとかAQUOS R6だとかで騒いでいるのってわずか1割の市場なんだなと。ハイエンドモデルに熱意をこめてきた、これまでの仕事の方向性を変えようかなと思うほどです 笑

 YouTubeの再生回数で見ても圧倒的にミドルクラスの製品紹介動画のほうが伸びます。世間のニーズとしてはミドルレンジでどれを買うかという方向にシフトしているんですね。

「Galaxy S21」

石野氏:iPadもそうで、「iPad Pro」はもう一般ユーザーには持て余す性能になっていて、売れるのは「iPad Air」以下の製品です。

法林氏:完全に考え方が時代とともに変わっていて、昔はハイエンドモデルを買えば長持ちするだろうという考えがあったけど、今はミドルレンジでも満足できる製品が増えた。売れ筋のAQUOS senseシリーズも、もうこれで十分と思える性能でした。

石川氏:ハイエンドモデルでメーカーの特色を出して、多くのユーザーにはミドルレンジを買ってもらうという流れがある。各メーカーはハイエンドモデルにももちろん、注力しなければいけないです。

法林氏:ハイエンドの基準をどこに設定するのか、判断が難しい時期に来ている。去年を振り返ってみるとXperiaで売れたのは「Xperia 10 II」と「Xperia 8 Lite」。「Xperia 1 II」や「Xperia 5 II」はあまり売れていない。Galaxyも同じで、売れるのは普通サイズのGalaxy S21で、もっと売れるのは「Galaxy A」シリーズなので、「Galaxy S21+ 5G」はau、「Galaxy S21 Ultra 5G」はドコモと販路が別れた。

石野氏:ハイエンド市場が狭くなってしまっているので、メーカーとしてはそこで数多く売るためには、相当なインパクトが必要になってきています。それでいうと去年の「AQUOS R5G」はいまいちでしたが、AQUOS R6はうまくやった感じでした。

法林氏:僕はAQUOS R5Gを1年間使っていて、正直いうと今年はGalaxy S21 Ultra 5Gにしようと思っていたのですが、AQUOS R6を見て気持ちが揺らぎましたね。

房野氏:リフレッシュレートが240Hzにもなると、タッチペンなどに対応したら面白いと思うのですがどうなんでしょう。

法林氏:基本的に高リフレッシュレートが求められる環境としてはゲームなどが多いので、そこはわかりませんね。

石野氏:とはいえペン対応があったら便利ですね。

房野氏:高リフレッシュレートになるとバッテリーの消耗なども気になるのですが、いかがでしょうか。

法林氏:そこはIGZOのいいところで、画面が止まっている時はリフレッシュレートが1Hzになるアイドリングストップ機能などでコントロールできる。これはなかなか他のメーカーには真似できない部分で、バッテリー持ちにも期待できると思います。

石野氏:純粋にバッテリーサイズが5000mAhと大容量なので、あまり心配いらないでしょう。あと面白いのが指紋認証センサーの面積が倍くらいになっているんですよ。Galaxyとかだと指一本分の小さいスペースですが、認証できる面積が広くなったので適当に指を置いてもロックの解除ができます。

石川氏:面積が広くなったことで指二本でも認証できるとのこと。セキュリティ性能も向上するはずです。

2021年ハイエンドスマートフォンのトレンドは“望遠レンズ”

石野氏:AQUOS R6で気になるのはやっぱりチューニングの部分ですかね。そういう意味でいうとXperia 1 IIIのシャッタースピードとかは安心ですし、望遠レンズは可変式で来たかと驚きました。

法林氏:望遠レンズがカメラ内で切り替わる仕組み。この辺の作り込みにはソニーの真面目さを感じます。

石川氏:2021年のハイエンドスマートフォンとして、Galaxy S21 Ultra 5Gは100倍ズーム、Xperia 1 IIIは可変式の望遠レンズを搭載、AQUOS R6は1インチセンサーを搭載するなど、メーカーそれぞれでカメラに対するアプローチが違うのが面白いです。

石野氏:OPPOからは顕微鏡カメラを搭載した「OPPO Find X3 Pro」も出ますね。

法林氏:顕微鏡カメラは面白いと感じたけど、継続して使う機能かといわれると、ちょっと微妙かな。

石川氏:中国メーカーは早い段階で望遠レンズに力を入れてはいたので、そこが受けなくなってくるなら逆だ、という発想なんでしょう。

石野氏:なぜペリスコープ望遠をやめたのかと聞いたら、倍率が高すぎるのも使いにくいのではという考え方らしい。初めから気づくべきだろうとも思ってしまいました(笑)

 Xperiaは倍率は抑えめですし、Galaxyも100倍といいつつもう1つ控えめな望遠レンズを搭載している。各メーカーが、行きすぎた超望遠はいらないと思っているのではないでしょうか。

法林氏:HUAWEIの月がきれいに撮れるカメラも面白いけど、その機能を年に何回使うのかという話です。

石野氏:今年のスマートフォンカメラは現実的な使い方に向かっている印象ですね。

法林氏:個人的にはGalaxy S21シリーズの上位モデル(Galaxy S21 Ultra 5GとGalaxy S21+ 5G)の販売先がドコモとauでわかれてしまったことがショックでしたね。なんでGalaxy S21 Ultra 5Gをauで取り扱わないんだと思う。もちろん、2020年のモデルがあまり売れなかった影響はあると思うのですが、残念です。

石川氏:それでいうとauはAQUOSすら取り扱わないですからね。

法林氏:でもOPPO Find X3 Proは取り扱う。方向性がよくわからなくなっている。KDDIの人に聞くと、売れ筋が変わってきたという話で、GalaxyのAシリーズとかが人気。その次にAQUOSのsenseシリーズとかがあるけど、ミドルレンジの上にもう1つ“ミッドハイ”のような層ができた感じです。

LGがスマートフォン事業から撤退

房野氏:LGがスマートフォン事業から撤退することを発表しました。こちらについてもコメントをいただけますでしょうか。

法林氏:本当に残念のひと言です。これまでいい製品を数多く作ってきたメーカーですが、うまくユーザーのニーズに引っかからなかった。LGとしてはテレビとかPC事業が好調ではあるので、そちらに注力していくのかなと思います。

石野氏:日本のキャリアの無茶な要求に応えてきた柔軟なメーカーですし、韓国では「軍隊のSamsung、人情のLG」ともいわれるように親近感の持てるメーカーです。日本法人にも親切で楽しい人が本当に多かったし、撤退は残念ですね。

石川氏:グローバルメーカーは日本キャリアのいうことをあまり聞かないという傾向がある中で、日本メーカーと比べてもそん色ないほど柔軟性があるメーカーでしたね。

石野氏:コラボケータイなども多く発売していますからね。

石川氏:結局LGはブランド力が弱かったというか、だからこそキャリアの考え方に寄せるしかなかったのかなとは思います。

法林氏:つまりSamsungでいうGalaxyみたいな象徴的なブランドを作り上げられなかったのが大きい。ただ実はデバイスを持っているし、ディスプレイを作れる、力のあるメーカーなんですよね。

石川氏:ディスプレイとかバッテリーもそうですし、特許もたくさん保有しているメーカーという強みはあったのですが、日本では活かしきれなかったです。

法林氏:LGがスマートフォン市場から撤退をする上で、売却も可能性としてはあったけれど、技術流出を避けるため、たたむことになった。IT関連・通信関連は扱いが難しいよねという話です。

石川氏:LG社内でもブランドを立て直そうという話はあったようですが、どこかのタイミングで立ち消えになってしまったようです。

法林氏:その分、これからはPCとかテレビとかで頑張ってほしい。特にテレビの売れ行きはかなり好調らしいですからね。

......続く!

次回は、スマホ業界の決算発表について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦

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