『顰蹙を買う』は日常会話で使える便利な慣用句ですが、正しい読み方や意味、由来が分からない人もいるかもしれません。そこで意味や由来と同時に、使い方や具体的な例文を紹介します。類義語についても触れるので、状況に合わせて使い分けてみましょう。
「顰蹙を買う」の読み方や意味、言葉の由来は?
『顰蹙を買う』は人に対して使う言葉ですが、どのような意味があるのでしょうか?また、理解を深めるために言葉の由来についても解説します。
「顰蹙を買う」の読み方は「ひんしゅくをかう」。意味は「自らの言動によって周囲から嫌われること」
『顰蹙を買う』の読み方は『ひんしゅくをかう』で、この『顰蹙』とは不快に感じて眉をひそめる、顔をしかめて不快の感情を表すという意味です。
『顰蹙』は不快感や嫌悪感、軽蔑を表現する言葉なので、『顰蹙を買う』とは、周囲の人々の不快感や嫌悪感を全て自分が手に入れるという意味になります。
これが転じて、『良識に反する行動や言動をすることで、人から嫌われて蔑まれる(さげすまれる)』という意味の慣用句として使われるようになりました。
「顰蹙」とは何?言葉の意味と由来
『顰蹙を買う』の『顰』は、訓読みで『ひそめる』と読むことが可能です。『ひそめる』とは『眉間にしわを寄せる』ことを指し、『しかめる』と読む『蹙』と並べることで、『眉間にしわを寄せてしまうほどの強烈な不快感をあらわにする様子』という表現になります。
『顰蹙を買う』の『買う』は、『恨みを買う』や『反感を買う』などと同じ使い方で、『自分の行動が原因となり、よくないことを身に招いてしまう』という意味です。
この二語が結びつき、一般的な良識に反する言動をして、『人から嫌われたり、蔑まれたりする』という意味で使われたのが由来になります。
「顰蹙を買う」の使い方や例文
『顰蹙を買う』は日常会話で使用することができますが、具体的にはどのような例文があるのでしょうか。また、誤用である『顰蹙を買われる』や『顰蹙を売る』についても紹介します。
「顰蹙」に「買う」以外の使い方はある?
『顰蹙』は『する』と組み合わせ『顰蹙する』とすることで、相手の行動に対して不快感や嫌悪感を伝えられます。基本的に物事や現象などには『顰蹙』を使用しないので、『突然雨が降ってきて、思わず顰蹙する』という使い方は避けたほうがいいでしょう。
これは、現代の『顰蹙』に『軽蔑する』といった意味合いが含まれているのが理由です。突然の雨に不快感を感じる場合があっても、雨を軽蔑することはありません。
「顰蹙を買われる」「顰蹙を売る」は誤り
『顰蹙を買われる』と『顰蹙を買う』は似ていますが、『顰蹙を買われる』という言葉は存在せず、間違った使い方になります。
『買う』は一般的な『購入する』という意味ではなく、『自分の行動が原因で良くないことを身に招いてしまう』ことを表す言葉。『買う』自体が、身に降りかかる意味を持つため、受身形にはしません。
また、『顰蹙を買う』の対義語として『顰蹙を売る』はあるのか気になる方もいるでしょう。しかし、こちらも辞書に載っていない間違った使い方になります。
『喧嘩を売る』という言葉がありますが、ここで使われている『売る』は『仕掛ける』という意味です。顰蹙を相手に仕掛けることはないため、『買う』に対して反対の意味を持つ『売る』を組み合わせて誤用しないように注意しましょう。
「顰蹙を買う」を使った例文
日常生活で『顰蹙を買う』を正しく使えるように、具体的な例文を紹介します。状況に合わせてアレンジして使ってみましょう。
- 有名タレントの不適切な発言がメディアで大きく取り上げられ、世間から顰蹙を買うことになった
- 重要な試合でやる気のないプレーをして、チームメイトから顰蹙を買ってしまった
- 彼はいつも生意気な態度をとっているので、上司から顰蹙を買うことになった
- 大切な約束を破ってしまい、友人からの顰蹙を買う
「顰蹙を買う」の類語・言い換え表現
類義語をいくつか知っておくと、表現の幅が広がります。言い換えができる慣用句を紹介するので、実際に使ってみましょう。
「顰蹙を買う」の類語1:不興を買う/被る(こうむる)
『不興を買う (ふきょうをかう)/不興を被る(ふきょうをこうむる)』とは、『自分のせいで相手の機嫌を損ねる、相手が不機嫌になってしまう』という意味です。
自分の言動で相手の機嫌が悪くなった様子や、怒って嫌悪感をあらわにした様子を表現でき、目上の人に対して使用する場合が多い表現です。
- 試合で監督の指示を守らなかったことが不興を買ったようで、スタメンから外されてしまった
- 不興を買うのを覚悟して、誰もが言いづらくて黙っていた不満を上司に伝えることにした
- 営業の大事な接待で何度も粗相をしてしまい、取引先から不興を被ることになった
- 先輩は日本代表でチームのエースだが、調子に乗って横暴な態度になり、チームメイトの不興を買ってしまった
「顰蹙を買う」の類語2:反感を買う
『反感を買う』とは、相手に反抗心や反発する気持ちを抱かせることを意味します。
ただし、自分が誰かに対して反抗や反発をする場合は、『反感を買う』とは言わないので注意しましょう。『反感を売る』という言葉も存在しません。
- あの人は常に自慢話をしているので、周りから反感を買う
- 君はいつも自分のことしか考えていないような発言をするから、反感を買いやすいんだよ
- 親会社の役員が上から目線で馬鹿にした発言をしたので、子会社の従業員たちの反感を買った
- 大規模な商業ビルの建設は、近隣住民の反感を買わないように慎重に進められた
慣用句やことわざには、普段なんとなく感じていても言葉にできない感情や状況を上手に言い表しているものが多くあります。知っておくと便利な上に言葉の面白さも味わえるはず。
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構成/編集部