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『生き馬の目を抜く』は、覚えておくと便利なことわざです。さまざまな場面で使用できるので、意味と語源を理解し、正しく使えるようになりましょう。似たような意味で使える類語も紹介するので、会話に合わせて使い分けてみてください。
「生き馬の目を抜く」とは
『生き馬の目を抜く』を正しく使うためには、まずはことわざの意味と語源をきちんと理解することが大切です。意味と語源に加え、『生き馬の目』がなにを表しているのかも解説していきます。
言葉の意味
『生き馬の目を抜く』には、『素早く利益を得る』『抜け目がない』という意味だけでなく、『手段を選ばずに相手の不意をついて利益を得る』という意味があります。
前者であればポジティブな意味合いですが、ほとんどの場合は後者のネガティブな意味合いで使われることが多いでしょう。
生きている馬の目を抜き取ってしまうほど、素早く物事を行うさまを表現しており、ずるくて抜け目がなく、油断も隙もない様子を表しています。
「生き馬の目を抜く」の語源
『生き馬の目を抜く』は、多くのことわざのように、昔の言い伝えや出来事が語源になったわけではありません。単に素早い様子を『生きている馬の目を抜き取ってしまうほど早い』と表現した比喩になります。
馬が選ばれている理由は二つあります。一つ目は古くから人間との関わりが深く、生活の一部になっていたことで、二つ目は馬は脚が速い動物で、そのスピードを強調するために用いられていることが挙げられます。
後ほど紹介する類語に『生き牛の目を抉る(くじる)』ということわざがありますが、牛よりも馬の方が脚が速く、目を抜くことが難しいことから、『生き馬』が一般的に使われるようになりました。
「目を抜く」は「だます」という意味も
『目を抜く』は、『人目をごまかす』や『だます』という意味としても使用されます。
しかし、『生き馬の目を抜く』は『相手の不意をついて利益を得る』という意味なので、『だます』という意味合いは含まれません。だましたり、ごまかしたりしているのでなく、ずるくて隙や抜け目がない様子を表しています。
相手をだますことを、『生き馬の目を抜いているみたいだ』と表現するのは誤用なので注意しましょう。
使い方と例文
では、『生き馬の目を抜く』はどのような使い方をするのがよいのでしょうか?最適な使い方や使用する際に気を付けたい点、具体的な例文を紹介します。
「生き馬の目を抜く」の使い方
『生き馬の目を抜く』は主に人に対して使われる言葉で、『油断できない人』や『隙がない人」などの様子と性格を伝えることができます。抜け目がない人はゆっくり行動しないので、結果的に『素早い』という意味合いも含まれます。
しかしポジティブな言葉ではなく、ネガティブな意味合いが大きいので、先輩や上司などに使用しないように注意しましょう。
『生き馬の目を抜くほど驚いた』など、驚くを付けて使われるケースもありますが、これは誤用になります。似たような言葉に、『相手が油断した隙をついて驚かす』という意味がある『尻毛を抜く』があるので、混同して使用されているようです。
「生き馬の目を抜く東京」
『生き馬の目を抜く東京』は、地方から上京する人へ向けて使用される言い回しで、相手に注意を促すことができます。
人が多い都会では、『隙をついて相手を出し抜くことで利益を得る人』に出会う可能性が高いので、『危ない世界だから油断してはいけない』という意味で使われます。
日常会話ではあまり耳にしない言葉ですが、もし言われた場合は『油断せずに隙を見せないようにしなさい』『世の中には悪い人もいるから気を付けて』といった注意喚起として受け取りましょう。
「生き馬の目を抜く」の例文
『生き馬の目を抜く』は人に対して使われることが多い言葉です。具体的な例文を紹介するので、会話で使用するときの参考にしましょう。
- 生き馬の目を抜く人たちばかりの厳しい業界だ
- 今の職場には生き馬の目を抜くような人がたくさんいる
- 今回の交渉は競争率が高いので、生き馬の目を抜くような人でなければ勝てない
- 生き馬の目を抜くほどと言われている上司は、少しのミスも許さない
- 都会で一人暮らしを始めたら、生き馬の目を抜くような人に注意しなければいけないよと父から教わった
「生き馬の目を抜く」の類語
『生き馬の目を抜く』ということわざ以外に、『素早く隙がない』『相手の不意をついて利益を得るさま』を表す別の言い回しを紹介しましょう。
「生き牛の目を抉る」
『生き牛の目を抉る(いきうしのめをくじる)』は、『抜け目がなく油断できない』ことを表しています。『抉る』は『くじる』と読み、『くり抜く』『心に強い衝動を与える』という意味があります。『生き馬の目を抜く』と意味や語源はほとんど同じです。
- あの人は生き牛の目を抉るような行動力で成功しているが、一緒には仕事をしたくない
- 生き牛の目を抉るといわれる営業の仕事を、この先もやっていく自信がない
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構成/編集部