故事やことわざには生活に役立つ内容が含まれることから、時代を超えて言い伝えられているものは数多くあります。しかし中には意味がよく分からないものもあるでしょう。『子子孫孫』もその一つかもしれません。意味や由来、類語や使い方を解説します。
「子子孫孫」とは
あまり見かけることがないかもしれない『子子孫孫』という言葉ですが、その字面から何となく意味をイメージできるのではないでしょうか。しかし意味を的確に理解していないと、なかなか使いこなせるようにはなりません。『子子孫孫』の意味について解説しましょう。
「孫子の代まで」という意味
『子々孫々』と表記することもありますが、使用する際には、多くの辞書で紹介されている『子子孫孫』が本来の形だと考えておくとよいでしょう。一般的な読み方は『ししそんそん』ですが、『ししそんぞん』と発音する場合もあります。
意味は『子から子へ、孫から孫へと長く受け継がれていく』ことを指します。普遍的なものが、時代を超えて引き継がれる様子を表しています。
長い期間にわたって継承されるとはいえ、それぞれの時代を独立したものとして扱うために、踊り字の『々』を使用せず、『子子孫孫』とするという説もあります。
語源は中国の書物「書経」
語源は、古代中国の歴史書である『書経(しょきょう)』にあります。439~589年にまとめられたと伝えられる本書は、伝説の聖人とされる堯(ぎょう)や舜(しゅん)をはじめ、当時の天子や諸侯が記した政治上の心構えや訓戒、戦に臨むうえでの覚悟などがつづられたものです。
書経の中の『梓材』には、『已(ああ)茲(かく)の若くにして、監(かん)惟(こ)れ曰はん、萬年(ばんねん)に至るまで、惟れ王の子子孫孫、永く民を保(やす)んぜんと欲す』という箇所があります。
この言葉が日本に伝わり、708年の『続日本紀』巻第四和銅元年七月条で初めて書物に出てきたといわれています。
「子子孫孫」の類義語
『子子孫孫』と同じように、これから先の血統にまつわる意味を持つ言葉があります。類義語について、主なものをピックアップして紹介しましょう。
「子孫」
『しそん』と読むこの言葉は、『一つの血統を受け継ぎ生まれてきた、あるいは、これから生まれてくるもの』という意味を表しています。『子』『孫』の二つの文字を使っていることから、イメージしやすい言葉です。
『子』と『孫』という二つの文字で構成されますが、二親等までの間柄に限定されません。そのまた先にまでつながる血統を指します。
『徳川家康の子孫にあたる人』『子孫の繁栄を願う』というように使われます。実際の孫は子どもの子どもですが、それに止まらず末永い家系の連なりを表しているのです。
「後代」
『こうだい』と読み、『一つの時代を基準として、それより後の時代』を指す言葉です。現時点から未来を示していることから、『子子孫孫』に類似するといえます。
使い方としては『後代にまで名声をとどろかせる』『後代からも尊敬の念を抱かれた先人』などが挙げられます。
また『後世(こうせい)』も、同義語として使用されることの多い表現です。『後世にまで引き継ぐべき偉業』『その価値は後世にまで残るだろう』のように使用します。
「後裔」
読み方は『こうえい』で、『はるか遠く昔の時代に存在したある人物や一族から、代々続いてきた血族』という意味を持っています。主に、かつては高い位にあった人の血統を受け継いでいる場合に用いられることが多いでしょう。
『織田信長の後裔』『豊臣秀吉の後裔』のように使われます。後裔における『後』の字は『子孫』を意味していて、一方の『裔』も『すえ』つまり『子孫』を表している言葉です。
異なる字をあてて『後胤(こういん)』とすることもあります。『胤』は『血筋・血統』を示す言葉です。
「子子孫孫」は未来、「先祖代々」は過去
『先祖代々』という言葉を聞いたことがあるでしょう。『祖』は直系尊属の二親等、ある物事(血筋・家系)の始まりを表し、『祖父』は『父のその前の父』つまり『おじいちゃん』を指します。
そして、『祖』が『先』まで連なる様子を表すことで、はるか過去にまでさかのぼる血筋を示しています。
対して『子子孫孫』は、これから未来の家系についての言葉です。孫の孫、そのまた孫と未来永劫続いていく血統について表します。
「子子孫孫」の使い方
『子子孫孫』の言葉の意味を理解したところで、続いて日常生活での使用法について見てみましょう。例文とともに紹介します。
使い方と例文
『子子孫孫』はある人を起点として、その功績や偉業、思いなどが代々継承され、言い伝えられる様を表現する際に用います。一般的にはよいことに対して使用するものです。
- 彼の果たした社会的貢献は、子子孫孫にまで語り継がれるであろう
- 先祖から授かった稼業は、子子孫孫引き継いでいってもらいたい
- 我が家の繁栄は子子孫孫に至るまで続いてほしい
悪行や失態について使うケースはあまり見られません。『彼がしでかした罪は、汚点として子子孫孫にまでついてまわった』といった使い方は相応しくないといえるでしょう。
構成/編集部