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GIGAスクール構想でChromebookがシェアを拡大する一方でiPadが苦戦している理由

2021.05.16

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。近年急速にシェアを伸ばすChromebookと最新型iPadについて話し合っていきます。

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GIGAスクール構想で一気にシェアを拡大するChromebook

石川氏:Chromebookのシェア拡大の要因として、GIGAスクール構想における端末は1台4万5000円以下と定められており、低価格な製品が多いChromebookが受けた。また、Chrome OSだと生徒だけでなく先生も同じスタートラインで始められることが多いのが利点とされています。

 セキュリティ面においても、データはPC本体ではなくクラウドに保存するというChromebookの性質上、もしPCが壊れてしまっても別のパソコンでGoogleアカウントにログインすれば以前の状態が復元するという利便性も受け入れられる要因。純粋にクラウドにデータがあるので先生も管理しやすいでしょう。

 もともとChromebookは日本で精力的に展開してきたわけではなかったので、ここに来ての急激なシェア拡大には目を見張ります。

【参考】文部科学省|GIGAスクール構想の実現へ

石川氏

石野氏:GIGAスクール構想に基づいて、これだけChromebookが採用されるとなると、Googleも力を入れて来ますよね。

石野氏

石川氏:NECがChromebookを開発していますが、教育市場向けでしょう。

法林氏:国内メーカーでChromebookに取り組んでいるのはNEC、dynabook、富士通ですね。

法林氏

房野氏:各家庭でChromebookを子供用に購入するのですか?

房野氏

法林氏:いや、学校から支給されるのが一般的。1人1台ずつ支給されていて、学校が許可すれば、自宅に持って帰ることもできます。ChromebookはもともとGoogle Workspaceと同じ仕組みで管理システムが出来上がっている。例えば学校側が自宅で生徒が何を使っていいのか、ダメなのかなどを設定できます。

 シャープ(dynabook)からはLTEモデルのChromebookが発売されているけれど、Wi-Fi接続だけではなく携帯電話回線を利用するのは、学校で100人といった単位の生徒が一斉にWi-Fiに接続したらちゃんと機能するのかという話があるため。また、自宅にWi-Fi環境がない生徒でも自由に使えるようにするためです。

LTE内蔵「Dynabook Chromebook C1」

石川氏:Wi-Fi接続にすると教室はもちろん、体育館や校庭にもWi-Fiで繋がるように環境を整えなければいけません。それならLTEのほうが環境を構築しやすいよねという方向に通信業界としても持っていきたいでしょう。

法林氏:課外学習に使えるのが大きいよね。

石野氏:アクセスポイント1つで教室全体をカバーするのは難しい。教室の前側の生徒だけ通信速度が遅くて課題の提出が遅れた……なんて事態が起きるかもしれませんしね。

石川氏:モバイル業界としては、学校教育でLTEや5Gがどんどん利用されてほしいところだし、GIGAスクール構想向けの料金プランなどがあるのかもしれません。

房野氏:学校側が基地局の建設を手伝ったりといったことも考えられるのでしょうか。

法林氏:私学であれば可能でしょう。学校は同時にアクセスする人数がある程度事前に計算できるので、通信会社としても工事計画を立てやすい。

アップルはGIGAスクール構想の波に乗り遅れた?

房野氏:アップルはGIGAスクール構想に対して何か取り組んでいるのでしょうか。

石川氏:かなり頑張って取り組んでいますね。

石野氏:廉価版のiPad(「iPad」第8世代)を販売したのも教育市場へのアプローチを見据えてでしたが、Chromebookと比べるとまだ価格は高いですね。

iPad(第8世代)

法林氏:前に聞いた話だと、学校関係者の中でもiPadは教材の候補に上がることも多いが、やはり予算が折り合わないようです。

石野氏:Chromebookは、LTE通信が使えてキーボードもついて4万5000円以内に収まるモデルがある。iPadはあくまでタブレットなので、キーボードの用意には別途お金がかかってしまう。

法林氏:通信キャリアとアップルが直接提供すれば価格を抑えることができて、iPadを採用する学校が出てくるかもしれないけど、大体は候補に上がっても予算の問題でなくなってしまう。

 今、GIGAスクール構想で導入されている端末は、約44%がChromebookでWindowsとiPadがそれぞれ23%ほど。アップルとしてはGIGAスクール構想が始まる前から日本の教育市場に参入する準備をしていたにも関わらず、いざ始まってみるとChromebookに半分持っていかれたとなるとショックは大きいでしょう。

石川氏:GIGAスクール構想が始まる前からデバイスの導入を始めていた、私立などお金のある学校では、iPadを使っていて評価が高かったのですが、GIGAスクールでは4万5000円の予算に決まったことで、締め出されてしまった形です。

石野氏:新しい「iPad Pro」もそうですが、クリエイティブな方向に性能を振ってしまったので、意識の高い私立などでしか使われなくなってしまっています。

新型「iPad Pro」

房野氏:Windows陣営は対抗していけないのでしょうか。

法林氏:対抗できないとはいっても約23%のシェアは持っているし、GIGAスクール構想が始まる前からWindows PCを導入している学校もあります。

石野氏:4万5000円という価格でWindows PCとなると、基本性能がやはり落ちてしまいます。メモリ4GB以下のモデルなどになってしまいますから。

法林氏:その値段で使えるWindows PCはまず数が少ない。これはOSの軽さが違うので仕方のない部分です。ただWindowsは「Windows 10s」というストアアプリしか利用できない代わりに動作の軽い製品なども出てきています。

 PCからスタートしたのかスマートフォンからスタートしたのか、iPhoneからなのか、それぞれの成り立ち方が違っていて一長一短があるのですが、中でもGoogleはうまくやった。

房野氏:マイクロソフトでいうSurfaceのようなモデルをGoogleが出す可能性はありますか。

法林氏:一応、Pixelbookという製品はあるけど日本では販売されていません。

Google Pixelbook

石野氏:PixelbookってChromebookの中では高かったんですよね。

石川氏:もともと高いモデルだったんだけど、2019年にPixelbook GOという安いモデルも展開はしています。注目なのは小中学校でChromebookを使ってきた世代が初めてスマートフォンを持つときに何を選ぶのかです。Googleは親しみがあるでしょうし、データもクラウドにあるといった時に、iPhoneでも使えるけど、自分はAndroidのスマホを選ぶ……となると面白いかもしれません。

石野氏:Pixelブームが来るかもしれませんよね。

google Pixel 4a(5G)

石川氏:もちろんAQUOSやarrowsでもいいのですが、Androidのスマートフォンが選ばれる可能性は大いにあります。

房野氏:Google純正の「Pixelタブレット」のようなものが販売される可能性は考えられますか。

法林氏:Googleがハードウエアを作るという点に関しては、スマートフォンやイヤホンこそ出ていますが、ノートPCやタブレットはコストもかかるので、今の日本法人の規模だと、厳しいかもしれません。もしこのままChromebookのシェアが伸び続けたらわかりませんが、今Chromebookを販売しているメーカーの活躍の場を取りかねないという問題もあります。

 もう一つ面白いのがチップの話。ARM系と86系とがありますが、例えばdynabookはLTEや省電力の事を考えてクアルコム製を搭載します。インテルも頑張ってきた分野ですがあまり成果は出ておらず、その結果が顕著に現れ始めました。

石川氏:今後も注目の市場ではあるのですが、小中学校にはすでにデバイスを配り終わっている。高校がこれからなので、dynabookとしては高校生を対象にLTE対応モデルでいきたいという感じなのでしょう。

法林氏:スマートフォンとも共通する部分ですが、20万円のモデルに搭載されている性能が、全ての端末に必要なのかという話。文章や図を書くくらいの使い方であれば安いモデルのほうがいいとなりますよね。

石川氏:Chromebookのもう1つの良さがOSアップデートの保証期間が長いところ。dynabookのChromebookは2028年くらいまであります。Androidスマートフォンでもやって欲しいところですが(笑)

法林氏:もちろん性能的に8年使えるかどうかは、別問題だけどね。

石川氏:ただ導入する側としては小学校6年間使えるとありがたいですよね。

房野氏:少し話は戻りますが、アップルは今後どのように教育市場へ参入していくでしょうか。

石川氏:数をとるためにどのように安くするかという話になります。価格改定だったり、キーボードとペンをセットにしてもっと安くするといった工夫は必要でしょう。

法林氏:アップルがどう戦いたいかにもよるけれど、教育市場ではやはり、キーボードのセットは必要です。

石野氏:今回発表されたiPad Proは技術のショーケースのようなもので、5G通信対応であれもこれもできますという製品なので方向性は違います。

法林氏:iPadの考え方は、iPhoneを大きくすると動画や電子書籍を見るのに便利だという進化の方向だけど、iPad OSになった頃からPCライクにしたいようにも見える。ただし、クリエイター向けの高性能タブレットという方向性では、ほぼ1強といえるほど強力なので、iPadとしては高価格で高付加価値の路線を続けていくのではないでしょうか。教育市場でシェアを広げるのであれば、iPad(第8世代)の価格をもっと安くしなければ厳しいでしょうね。

房野氏:通信キャリアとしては、Chromebookと通信回線をセットで販売するといったケースも増えていくのでしょうか。

石川氏:Dynabookがソフトバンクから発表されていますし、 ドコモも法人向けに販売するという話もあるので、キャリアは通信回線とChromebookのセット販売にどんどん取り組んでいくでしょうね。

法林氏:Chromebookは、PCを持っている人がサブ端末としても使えるし、外出先で簡単な原稿を書くのにも都合がいい。学校での使用も同様で、Chromebookはそのあたりがよくできています。

石野氏:iPadはあくまでタブレットで、タブレットを必要としている法人市場も確実にある。代替となるAndroidタブレットは、有力なモデルが市場にほぼない状態なので、そこではアップルは強いですね。

石川氏:数年前にGoogleの製品担当者から、Androidベースのタブレットの売上を伸ばすのではなく、Chromebookで勝負していくと聞いています。モバイル端末で大画面のモデルはChrome OSでやっていくようです。

房野氏:Chrome OSとAndroid OSの互換性はどの程度のものなのでしょうか。

法林氏:完全ではないけれど、AndroidでPlayストアからインストールできるアプリはほぼ、Chrome OS上でも動かせる。解像度や操作面で厳しいアプリもありますが。OSをAndroidからChromeにして、その上にアプリを入れちゃいましょうというスタンスがChromebook。

石野氏:海外ではSamsungがタブレットを販売していたりもするのですが、日本市場にはないですね。ただタブレットのニーズは必ずあって、Chromebookが満たせているという話は聞かない。

法林氏:実は今、Androidタブレットで一番売れているのはAmazonのFire HDがダントツです。ただ、あれはAndroidを「Fire OS」という形で独自にカスタマイズしてありますが。

石川氏:街中で使われている業務用のタブレットを見ると、Androidベースのものが多いはずなので、カスタマイズ次第で需要を満たしていけるということでしょう。一般市場だと価格競争になってしまいます。

法林氏:タブレットはコンシューマー向けの市場としてはあまり美味しくないと思う。

石野氏:ハイエンド市場はiPadが独占しているし、ローエンド市場は利益に繋がりにくい割に筐体がでかくてコストがかかる。LTE対応していないモデルも多いので通信事業者にも納入しにくいので、ビジネス的に難しいのは事実でしょう。

石川氏:一般ユーザーとしてはスマートフォンがあれば大体の用事は済んでしまいますしね。

法林氏:個人的にはiPadは便利で好きなので、ぜひ試してほしい。もちろんこれはAndroidユーザーにもです。ただし、価格はそこそこ高いですし、通信環境をどうするという問題はある。Androidユーザーは選択肢が限られるので、ChromeBookに興味は移ってしまいますよね。

石川氏:あとタブレットは買い替え周期が長いです。スマートフォンは2〜3年で買い換える人も多いですが、タブレットはかなり長く使えちゃうので難しい市場です。

法林氏:iPadを使っていて動作が重くなるといった話はあまり聞かない。なので、ぜひ多くの人に使ってほしいけど、やはり問題は価格でしょうね。

......続く!

次回は、最新のiPad、iMacについて話し合う予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦

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