一年を通して活動する椋鳥(ムクドリ)は、住宅街にも生息する鳥です。夏から秋にかけては大群で行動することも多く、鳴き声に悩まされたりフンの被害を受けたりすることもあります。名前の由来や習性とともに、被害への対策についても確認しましょう。
椋鳥とは
買い物帰りや仕事を終えて帰宅する時間帯に、椋鳥が群れを成し、大きな鳴き声をあげている光景を見かけることがあるでしょう。そもそも椋鳥は、どのような種類の鳥なのでしょうか。まずは概要や名前の由来について説明します。
ムクドリ科の鳥
椋鳥とは、「スズメ目ムクドリ科」に属する鳥の総称です。この科には九官鳥(きゅうかんちょう)をはじめ、コムクドリやホシムクドリなどが含まれています。繁殖力や環境適応能力も高く、各大陸に百数種もの椋鳥が分布しているほどです。
体長は約24cm、くちばしと脚は赤みを帯びた黄色をしています。背面は黒や濃い褐色で、顔周辺には白斑が不規則に広がっていることも特徴です。
大群で行動する習性があり、鳴き声も発します。国内に生息する椋鳥のほとんどは一つのエリアに留まって生活する留鳥で、昆虫や果物をエサとして暮らしています。
「おのぼりさん」という意味も
鳥の種類を示す言葉であると同時に、椋鳥には人を指す意味もあります。その代表的なものが、地方から都会へとやってきた人を揶揄する『おのぼりさん』です。
江戸時代には『むくどりも毎年くると江戸雀』と言って、冬場に信越地方などの雪国から出かせぎのために江戸に来た人たちのことを指していました。
名前の由来
実際には昆虫や果実も口にしますが、『椋木(ムクノキ)』をエサにしていることからその名が付いたというのが定説となっています。
群で木々に留まり、日が沈む頃になると「リャーリャー」と鳴く姿は今も昔も変わらないようです。その様子から『群木鳥・群来鳥(ムレキドリ)』と呼ばれ、時とともにムクドリへと言い変わったという説もあります。
大群を成す椋鳥の習性
大群で行動する理由は、どこにあるのでしょうか。椋鳥の習性について掘り下げてみましょう。
天敵から身を守るため
騒がしい鳴き声の方向に目をやると、木々や電線におびただしい椋鳥が止まっていることがあります。これは、お互いの身を天敵から守るために群れで行動するという、椋鳥の習性です。
それぞれが異なる方向に注意を向けていて、1羽が異変に気づくと全ての鳥が逃げられるようにするため、このような行動が身に付いていると考えられています。
椋鳥の繁殖期間は3~7月にかけてと、比較的長いのが特徴です。その後、孵化したひな鳥が成長し、夏を過ぎればみんなで行動できるようになるため、椋鳥の群れは秋に見かけることが多くなります。
また近年は、天敵からの防衛以外にも、群を成す理由があるともいわれています。各自治体が椋鳥対策を講じるようになったことで、追われた椋鳥は別の活動エリアを探します。新たな棲み家を探す群れ同士が合わさり、より大きな群れとなっていくのです。
ただし繁殖期には個別で行動
椋鳥は大群で行動する光景が印象深いため、年中群れを成して行動していると思われがちです。しかし、春から初夏にかけての繁殖期は、個々がそれぞれに行動し、産卵や子育てを行っています。
そのため3~7月下旬にかけては、椋鳥の群れを目にする機会はあまりありません。季節によって、行動形態は変わっていくのです。
どんな被害がある?対策は?
住宅街にも姿を見せる椋鳥は、私たちの生活にどのような影響を与えているのでしょうか。人々の暮らしに与える影響と、被害を抑えるための対策について解説します。
鳴き声による騒音やフン害
椋鳥が鳴きだすと、その音が周辺一帯に響きわたります。大きな群れでは約1000羽以上が行動を共にして、鳴き声は『騒音』といえるレベルに達することもあります。
頻繁に鳴き声をあげる理由は、仲間でコミュニケーションを取るためといわれています。また、夕方過ぎに巣に帰る際、外敵がいないかを確認する意味もあります。
たくさんの椋鳥が棲み家とする街路樹などからは、フンの落下が見られることも多々あります。排せつ物が住宅や車、庭木などに付いてしまい、悩まされるケースもあるでしょう。
野生動物のフンには細菌が含まれていることも少なくありません。人体への影響を及ぼすこともあるため、十分な注意が必要です。
自分でできる対策
街路樹や電線以外にも、一般住宅を巣にしてしまう場合もあります。外壁と内壁の間や雨戸の戸袋は、狙われやすい場所です。
住居の周りで見かけるようであれば、防鳥ネットの取り付けで侵入を防ぎましょう。入り込みそうな隙間に設置すれば、棲み付くこと阻む効果が期待できます。
椋鳥が嫌がる香りを発する忌避剤の使用も有効です。苦手な臭いを発する成分を撒き、寄せ付けないようにしましょう。
忌避剤には、ベランダや軒先などに吊り下げるタイプや、スプレータイプ・ジェルタイプなどさまざまな種類があります。用途や場所に応じて設置することで効果を向上させられます。
構成/編集部