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何がどう便利?アップルの紛失防止タグ「AirTag」を使ってみてわかった〇と×

2021.05.11

■連載/石野純也のガチレビュー

 iPhoneでもiPadでもMacでもない、新たなデバイスがアップルから登場した。失せ物防止タグの「AirTag」が、それだ。いわゆるIoTデバイスの1つで、様々な持ち物に取り付け、紛失時の発見を助けるというのがAirTagの位置づけだ。iPhoneやiPadの「探す」アプリから利用する形で、特別なアプリをインストールすることなく利用できる。

 小型ながら、本体にはスピーカーを搭載。部屋の中でどこに置いたか忘れてしまった時には、iPhoneやiPadの探すアプリから音を鳴らして、場所の手がかりを得ることができる。UWB(超広帯域無線)対応のiPhone 11以降なら、無線とARを使ってAirTagまでの距離や位置を画面に表示させることが可能だ。

 近くにあるものだけでなく、外出時に紛失してしまった持ち物も探せる。AirTagはBluetoothで、周囲にあるiOSデバイスと通信するためで、iPhoneやiPadなどを通じて、自らの位置をクラウド上にアップロードする仕組み。リアルタイムではないものの、比較的近い時間に、どこにあったかを探し当てることができるというわけだ。では、実際の精度や使い勝手はどうか。発売に先立ち、実機をテストすることができた。その実力をチェックしていこう。

アップル初の失せ物防止タグとなるAirTag

財布にも入るコンパクトさで、セットアップや取り付けは簡単

 タグというと、平べったい四角の板を思い浮かべるかもしれないが、AirTagのデザインは、どちらかと言うと碁石に近い。サイズ的には、碁石をやや大きくした程度。500円玉をひと回り大きくしたようなサイズ感だ。厚さは8mmあり、日本で流通している硬貨よりも厚いが、マチがしっかり取ってある財布の小銭入れには、きちんと収まる。ステンレス面が傷つくことは少々気になるものの、そのまま財布に入れておくことも可能だ。

表裏で処理が異なる。ステンレスと樹脂を組み合わせたデザインで、形状は碁石に近い

8mmとコインより厚いが、マチのある財布には収納できる

 同時に発売されるアクセサリーを使えば、カバンやバッグ、鍵などの持ち物に取り付けることもできる。アクセサリーはアップル純正のもの以外にも、様々なサードパーティーが発売している。デザインや素材の好みに合わせて選択できるのは、うれしいポイント。iPhoneやiPadでサードパーティーのエコシステムを広げてきたアップルならではの特徴と言えるかもしれない。

キーリングやバックなどに取り付けるためのループといったアクセサリーも発売される

 コンパクトなため、持ち物に取り付けやすいのはメリットだが、スピーカーを搭載するためか、本体からは弱い磁力が出ていることもあり、財布に入れる際には注意が必要だ。クレジットカードやキャッシュカードなどの磁気ストライプを備えたカードや、店舗の会員証、駐車券などは、なるべく近づけないようにしておいた方がいいだろう。カード類と現金を別々に持ち歩き、後者の財布にだけ入れておけば安心できそうだ。

 セットアップは簡単で、iOS 14.5以上のiPhoneを近づけると、画面上にポップアップが表示され、手順に従って画面をタップしていくだけですぐに設定が完了する。専用アプリなどをインストールする必要がないどころか、アプリを開く必要すらないため、誰でも簡単に使い始めることができそう。こうしたシンプルさには、AirPodsやApple Watchなどのアクセサリーで培われたノウハウが生かされていると言えそうだ。

セットアップは画面に表示されたポップアップの指示に従っていくだけと簡単だった

音だけでなく、UWBで正確な位置がわかって便利

 紛失のシチュエーションは、主に2つある。1つは部屋の中でどこに置いたかわからなくなってしまったパターン。家の鍵などを、決まった場所に置いていなかったり、家族と一緒に帰宅して上着のポケットの中へ入れっぱなしにした時に、起こりがちだ。かく言う筆者も、後者のケースで翌日、どこにあったかを探し回ることがある。もう1つは、外出時に、置き忘れてしまうシチュエーション。AirTagは、どちらの場合でも失せ物を探せるよう、設計されている。

 前者のケースは、iPhoneやiPadとAirTagの距離自体がそれほど離れていないため、Bluetoothで両者が接続されている。そのため、iPhoneやiPadの探すアプリからAirTagに対し、音を鳴らすよう指示を出すことが可能だ。探すアプリを起動し、「持ち物を探す」タブで、設定したAirTagを選んで「サウンドを再生」ボタンをタップすればいい。徐々に音が大きくなっていき、どこにあるのかの手がかりをつかむことができる。最大音量はそれほど大きくないが、甲高い高音が使われているため、耳につきやすい。

サウンドを鳴らして、大体の位置を聞き分けることができる

 また、iPhone 11以降のUWB対応iPhoneを持っている場合、より直感的にAirTagの場所を確認することが可能だ。UWBとAR(拡張現実)を組み合わせて使うことで、AirTagの方向や距離がiPhoneの画面上に表示される。つまり、iPhoneの指示に従って歩いていけば、なくしたものが見つかるということだ。距離や方向はかなり正確で、音を頼りにするより、はるかに見つけやすかった。AirTagを本格的に活用したいのであれば、iPhoneを11以降の最新モデルにすることをお勧めしたい。

iPhone 11以降の場合、UWBを使ってより正確な位置を表示することが可能だ

 ただし、近くにない時には、音を鳴らしたり、UWBで位置を表示させることはできない。離れた部屋に置いている時など、BluetoothやUWBといった電波が受信できることが不可能な距離が空いている時には、利用できない旨が表示される。家の中にあることが確定しているにも関わらず、音を鳴らせない時には、iPhoneを持って家の中を歩き回ってみてもいいだろう。

iOSデバイスの数の力ですぐに見つかる、発見者の連絡を待つことも可能

 もう1つのシチュエーションである外出時の紛失の場合は、他人のiOSデバイスに頼ることになる。上記のとおり、AirTagは近くにあるiPhoneやiPadなどと通信して、自身の位置情報をクラウド上にアップロードする。その位置を、ユーザーが探すアプリから参照できる仕組みだ。と言っても、通信している相手には、そのことが知らされない。通信内容も暗号化されているため、プライバシーが漏れる心配はないので安心だ。

 このようにスマホとの通信で位置情報を更新する仕組みは、AirTag以前に登場した失せ物防止タグにも実装されているが、最大の違いはその数にある。AirTagの場合、アプリのインストールが不要で、対象になる端末の数がケタ違いに多い。特に日本では、iPhoneユーザーの比率が高く、都市部であればAirTagとiOSデバイスが通信できる確率は非常に高くなる。通信するスマホがなく、位置情報が更新されないという心配が少ないのはAirTagの魅力と言えるだろう。

探すアプリを開くと、マップ上にAirTagの一覧が表示される

 実際、あえて家に置き忘れたAirTagの位置情報は、きちんと更新されていた。これは、家族のiPhoneを経由したためだと思われる。同様に、会社など、人の多い場所に置き忘れても、すぐに位置を検出することができるはずだ。位置情報はiPhoneのGPSや基地局との通信で記録されるため、わずかなズレは生じてしまうものの、筆者のケースではかなり細かく特定できていた。ただし、地下で通信環境が悪い場所などでは、見つかりにくいケースも考えられる。過信は禁物だが、精度は低くない。つけておいて損はない失せ物防止タグと言えそうだ。

 他人のiPhoneを通じて位置がわかった場合、持ち主のiPhoneには通知が届く。また、どこに置き忘れたのかがわからない場合は、「紛失モード」をオンにしておくといい。この状態にすると、連絡先やメッセージを記載して、AirTagをタップした人に見せることができる。運が良ければ、発見した人が電話をかけてくれる可能性があるというわけだ。

紛失モードをオンにすると、電話番号やメッセージを相手に伝えることができる

 AirTagにはNFCが内蔵されており、紛失時にタップすると、ユーザーが設定した情報を読みにいくことができる。情報はWeb上に掲載されており、AirTagをタップすると、そのページに飛ぶことが可能になる。専用アプリが不要なため、iPhoneはもちろん、AndroidでもNFCに対応してさえいれば、持ち主の情報を見ることができる。発見者がiPhoneユーザーでなくてもいいため、連絡をもらえる確率はさらに上がりそうだ。

発見者がNFC対応端末でタップすると、電話番号やメッセージを見て持ち主に連絡を取れる。画面はAndroidのもの

 ただし、AirTag自体の存在が知られていないと、いくら発見できてもあまり意味がない。そのまま放置されていれば自分で探しに行くことは可能だが、少なくとも、発見者から連絡をもらうことはできない。落とし物がスムーズに見つかるようにするためには、AirTagの知名度をもっと上げていく必要がある。これは、iPhoneユーザーだけでなく、Androidユーザーにもだ。そのためのプロモーションは、ぜひ積極的に行ってほしい。

 仕組み上、落とし物が必ず見つかることまでは保証できないが、なにもつけていないより、確率は大きく上がる。iOSデバイスの数が多いこともあり、発見も速い。1つあたりの価格が3800円とリーズナブルなため、気軽に購入できるのもうれしいポイントだ。転ばぬ先の杖として、重要な持ち物に取り付けておいてもいいだろう。

【石野’s ジャッジメント】
質感        ★★★★★
持ちやすさ     ★★★★★
位置情報の正確さ  ★★★★
連携&ネットワーク ★★★★
バッテリーもち   ★★★★★
*採点は各項目5点満点で判定

取材・文/石野純也

慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

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