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1970年代に東南アジアで起こった連続殺人事件を描いたNetflixのクライムサスペンスドラマ「ザ・サーペント」

2021.05.01

若い時は、誰もが一度は自分探しの旅をしてみたいと思うものだ。人生に対する迷いと不安、そして孤独を抱えた若者は、悪意を持つ人間にとって格好の“獲物”となる。

4月2日より独占配信中のNetflixオリジナルシリーズ『ザ・サーペント』(リミテッドシリーズ)は、1970年代東南アジアで起こった連続殺人事件を描くクライム・サスペンス。

主演は、『預言者』タハール・ラヒム、『女王ヴィクトリア 愛に生きる』『ドクター・フー』ジェナ・コールマン。

実話に基づいているが、犠牲者とその家族への配慮のため人物の名前等に変更が加えられている。

あらすじ

1970年代、西欧から東南アジアを訪れたヒッピーの若者たちが次々と失踪する事件が発生。

タイ・バンコクのオランダ大使館に勤務する書記官ヘルマン・クニッペンバーグ(ビリー・ハウル)のもとに、オランダ人男性から捜索依頼の手紙が届く。タイに旅行に出かけた義理妹ヘレナ・デッカーとその恋人ヴィレム・ブルームが行方不明だという。

「一般庶民のヒッピーなど放っておけ」という上司の反対を押し切り、正義感の強いクニッペンバーグは捜索を始める。

クニッペンバーグは独自に関係者への聞き込み捜査を行い、怪しいフランス人宝石商の男にたどり着く。

その男こそ、偽名を使い分けながら若い旅行者を次々と毒牙にかける連続殺人鬼シャルル・ソブラジ(タハール・ラヒム)だった。

見どころ

良心がないから、声を荒げて怒ることも、焦ることもない。本当は全く思っていない優しい言葉も、真っ赤な嘘も、顔色ひとつ変えずにスラスラと口にする。

心に隙がある時には、そんなシャルルが魅力的に映るのかもしれない。

シャルルと共犯者マリー(ジェナ・コールマン)は、余裕ありげに微笑みながら、もったいぶったウィスパーボイスで甘い言葉をささやく超・胡散臭いカップル。

安全な自宅でタブレット越しに鑑賞していると「胡散くせぇええ!」とイライラするが、異国の地で心細さを抱えるバックパッカーには、きっと“救世主”に見えるのだろう。

思い詰めた表情、不安げな表情をしている旅人を、ハンターのように目ざとく見つけるシャルル。さりげなく共通点を示し、気さくさと親切心をアピールしながら、スルリと心の中に入り込む。

「いくらなんでも、赤の他人に親切すぎる……」と一瞬不審に思っても、旅の孤独がせっかくの直感をかき消してしまう。

日本人から見れば、同じ東洋にあるタイには文化的に親しみを感じやすいが、本作の被害者は西洋人。全く異なる文化への強い好奇心や憧れに比例して、孤独感も強かったのではないだろうか。

そして本作の被害者は、異国での心細さだけでなく、人生への迷いや不安も抱えているのが特徴。バンコクに巣を張り、迷える子羊をじっと待ち構えるシャルルは、まるで毒グモのようだ。

そして、共犯者のマリー(フランス系カナダ人)とアジェイ(インド人)も強力に洗脳されている。マリーもまた、他の被害者と同様に、孤独とコンプレックスに付け込まれてじわじわと支配されたのだから、ある意味被害者でもある。

寂しいとき、不安なときこそ、シャルルのような“救世主の顔をした悪魔”には要注意だ。

Netflixオリジナルシリーズ『ザ・サーペント』
独占配信中

文/吉野潤子

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