■連載/阿部純子のトレンド探検隊
カフェやラウンジ、サウンドアトラクションも登場
「ヤマハ銀座店」が4月にリニューアルオープンした。昨年10月に先行オープンした1~2階エリアに加え、今回は地下2階と地下1階、地上3~5階の5フロアを改装。ヤマハの楽器や音響機器に触れることができるほか、音や音楽に関する最新技術を体験できる参加型コンテンツ、飲食エリアを備えて、五感で楽しむ音楽体験を提供する。
〇1階 カフェスタンド/イベントスペース
ヤマハが開発したコミュニケーションロボット「Charlie(チャーリー)」が出迎えるイベントスペースには、自由に演奏できるピアノも設置。演奏の様子は正面のスクリーンにも映し出される。
チャーリーは世界初の言葉をメロディにのせて会話するロボット。青のリボンが点滅していると相手の声を聞いているというサインで、この間に語り掛けると歌にのせて返してくれる。ほのぼのとした歌声としぐさが愛らしい。5月中旬発売予定で、現在、先行予約受付中。販売はネットのみのため、実機を確かめたい場合は銀座店に足を運んでみると良いかも。
1階の「NOTES BY YAMAHA」は、手軽に楽しめるカフェスタンド。ドリンクは国産にこだわっていて、国内のクラフトシロップを使ったクラフトドリンクやアートラテを提供。ヤマハの音叉マークをあしらったアートラテは「カフェラテ」「静岡抹茶ラテ」(各550円)「アーモンドミルクラテ」(600円)の3種(各種ホット・アイスあり)。
持ち帰り用の「“DORA”YAKI」は「小倉餡&栗甘露煮」「白餡&抹茶クリーム」「苺餡&バタークリーム」の3種(各330円)。1個から販売するが3個~6個のセット買いも可能なので手土産としても使える。以前の焼印は音叉マークのみだったが、4月よりランダムで音符の「ド」「ラ」の焼印が登場。「ド」「ラ」の焼印はどのくらいの確率かスタッフもわからないそうで、箱買いした方が“当たり”の確率も上がるかも?
ドリンクは店内の「music table」で飲むこともできる。テーブルにドリンクのカップを置くとカップの位置をカメラが読み取り、テーブル上に投影された映像と反応して音を奏でる。
〇2階 カフェラウンジ
2階の「NOTES BY YAMAHA」は、ライブラリーにある本が自由に読めて、「Real Sound Viewing」で“生演奏”を聴きながら、音楽カルチャーから発想を得たドリンクやフードが楽しめる、五感で音楽の世界に浸れる空間になっている。
「Real Sound Viewing」は、演奏している映像と合わせて楽器の生音が聴ける、ヤマハが開発を進めているバーチャルライブシステム。自動演奏付きピアノ「Disklavier」に加え、ドラムとウッドベースは、演奏データを電気信号に変換、電気信号を細かい振動に変換し、加振器を介してドラムやシンバル、ウッドベースのブリッジとヘッドを実際に振動させて、自動演奏を可能にする独自技術を使用している。
演奏時間は5分~10分ほどで、平日は30分おきに4アーティストが演奏。土日は14時までは30分おき、14時以降は1時間おきの演奏。タイムスケジュールについてはヤマハ銀座店のサイトを参照。
ラウンジのドリンク、フードは、楽曲、演目、音楽家にまつわるメニューを一部に導入している。シグネチャーはノンアルコールのモクテル4種(各950円)。下記の画像にあるモクテルは、ロッシーニ最後のオペラをイメージした「ウィリアム・テル」と、母が作ってくれたコケモモのジャムを愛したブラームスに因んだ、自家製コケモモシロップを使った「ダミー・デイジー」。
「鱈のソテー、ポトフのコンサントレ」(1400円)は体が弱かったショパンが肉ではなく魚をよく食べていたエピソードから、鱈のソテーと汁なしのポトフを合わせた。ニシンのマリネ「ニシンのエスカベッシュ ビーツのザワークラウト」(900円)は、バッハが貧困時代によくニシンを食べていてニシンに救われたというエピソードに因んだもの。「ローシュティポテト ハム&チーズ」(1100円)は、ロシアの郷土料理のパンケーキサンドイッチ「ブリヌイサンド」スタイル。ワーグナーの好物だった「ローシュティポテト」と呼ばれるスイスのハッシュドポテトをチェダーチーズと一緒にサンドしている。
デザートの「バスク風チーズケーキ コケモモのジャム」(900円)は、「ダミー・デイジー」同様に、コケモモのジャムを添えている。「パフェ“Waltz for berry”」(1500円)はビル・エヴァンスの「Waltz for Debby」にかけたベリーのパフェ。
〇地下2階 ヤマハ銀座スタジオ
最大収容人数200名のスタジオで、音の響きと音の動きを自由に操り、まったく違う空間にいるような変化が楽しめるヤマハ音場支援システム「AFC」を使った音空間を体験できる。
「WONDER FILMING~体感!イマーシブサウンドの世界~」は、架空の映画撮影のシーンにサウンドエキストラとして参加して、手をたたいたり、声を出したりしながら、最新の空間音響を体験できるサウンドアトラクション。予約不要で参加は無料、毎時15分、45分に上映する。2021年7月31日まで。
〇地下1階 ギター・ドラム・シンセサイザー・音楽制作
ヤマハブランドのギター、ドラム、シンセサイザー、音楽製作機器を扱うフロア。防音室「アビテックス」AMGシリーズを採用したドラムの試打室を新たに設置。今までドラムの試打はフロアで行っており、音響の質や会話ができなくなるといった不便さがあったが、試打室は音響が調整されており、他の楽器を持ち込んで合奏もできる。
季節やテーマに応じた内容で展開するコミュニケーションエリアでは、ヤマハのデザイン研究所で設計したものを、家具メーカー「MEXARTS」社が製作した製品を展示。ギタースタンドとして、演奏時はハイスツールとして使えるアコースティックギタースタンド「solo」、クラシックギターフレームとして、演奏時はベンチとして使えるクラシックギターフレーム「classic」。部屋の中にあっても違和感のないデザインが特長。
音楽制作スタジオもリニューアル。ヤマハとSteinbergの音楽制作ツールをシステム展示して、音楽制作のプロセスが体験できる。
自宅で配信できるウェブキャスティングミキサー「AG03」は配信者の間で人気の機器。マイクをつけてトークしたり、iPhoneから曲を流したり、音にエフェクト掛けたりなど誰でもパーソナリティーになれる。電源はUSBケーブルでコンセントも不要のため、ノートPCがあればアウトドアでも使えて、キャンプ場からの配信なども可能。
2015年春に発売された製品だが、最近はコロナ禍によりパソコンを介してコミュニケーションを行う機会が増えて、リモートワークでも使える機器として注目されている。
〇4階 管楽器・弦楽器・打楽器フロア/管弦楽器リペアコーナー
ショーケースで覆わないオープン展示を初めて実施。サックスやフルート、クラリネットといった木管楽器は湿度管理したショーケースで展示しているが、オープン展示はメンテナンスをこまめに行いながら対応する。
5部屋ある試奏室も改装し、音環境をさらに向上。音を吸収するウレタン、音を反射するボードの量をそれぞれの部屋によって変え、調音パネルも数や置き場所を変えて、各部屋で響きが異なる仕様になっている。
コロナの影響でステイホーム中に楽器を始めたい人も増えており、サックスと似た音が出る「ヴェノーヴァ」、37鍵盤ある「大人のピアニカ」といった手軽に始めやすいカジュアル楽器も取り揃える。
「サイレントブラス」はトランペット、ホルン、チューバ、トロンボーンなどの管楽器に装着することで、外に出る音を小さくしながら、演奏をイヤホンで聞くことができるアイテム。自然の音に近い音で聞こえ、音を気にせずに練習できるバックアップアイテムとして昨年かなり売れたとのこと。
【AJの読み】楽器や音楽に縁のない人でも楽しめるコンテンツが盛りだくさん
楽器には全く縁がないので、今まで店に入ることさえなかったが、リニューアル後は体験エリアが充実しており、1階のカフェスタンドはカフェとして気軽に利用できそう。自由に弾けるピアノも設置されているので、ストリートピアノのパフォーマンスがひょっとしたら見られるかも?ハラミちゃん、来てくれないかな(笑)。
2階の「Real Sound Viewing」は驚きのライブ体験。ドラムとウッドベースは見た目では自動演奏だとわかりにくいが、触れてみると振動しており音が出ているのがわかる。トリオとデュオでは聞こえ方が全く違うとのことで、アーティストの演奏を追体験できる新感覚のライブといった印象。地下2階の無料で体験できるサウンドアトラクションも、映像に連動して音場がリアルタイムに変化し没入感があって面白い。
楽器や音楽に縁のない人でも楽しめるコンテンツが盛りだくさんなので、ぜひ足を運んでみてはいかがだろう。
文/阿部純子