ビジネスレターなどの時候の挨拶として使われる『立夏』は、いつどのような季節なのでしょうか?より詳しく知るために、立夏のイメージや夏至との違いについても解説します。毎年やってくる立夏についての知識を深めましょう。
「立夏」とは?
毎年日にちが変わる『立夏(りっか)』は、どのような日を指すのでしょうか?日にちが変わる理由についても紹介します。
暦の上では「夏の気配を感じ始める頃」
夏が立つという漢字から想像できる通り、立夏とは『夏の気配を感じ始める頃』のことです。暦の上では夏に入り、暖かい日も増し夏めいてくる時期です。地域にもよりますが、みずみずしい新緑が鮮やかな時期でもあります。
ビジネスレターなどでは時候の挨拶として、「立夏の候、貴社の一層の発展を心よりお祈り申し上げます」や「まだ肌寒い日もありますが、立夏を迎え暦の上では夏になりました」のように使われます。
二十四節気の一つ
立夏は太陽の運行に基づいて作られた『二十四節気(にじゅうしせっき)』の一つで、季節の節目です。二十四節気では1年が24個に分けられており、それぞれに季節の特徴を表す名前がつけられています。立夏は春分と夏至の中間にあり、立春から数えて6番目に当たる節気です。
二十四節気の中でも、大きく四つに分けたものは『二至二分(にしにぶん)』と呼ばれる、春分・夏至・秋分・冬至に当たります。続いて、二至二分のそれぞれの中間にあり、季節の始まりを意味する立春・立夏・立秋・立冬も『四立(しりゅう)』と呼ばれ、重要な節気です。
二十四節気上での夏は、立夏から始まり小満(しょうまん)・芒種(ぼうしゅ)・夏至・小暑(しょうしょ)・大暑(たいしょ)までとなります。
毎年日にちが変わる理由
立夏の日付は固定ではなく、毎年日にちが変わります。その理由は、暦と太陽の運行にずれがあるためです。
もともと日本で使われていた暦は、『太陰太陽暦』と呼ばれる月の満ち欠けと太陽の運行を基にしたものでした。しかし、太陽の動きと密接な関係にある農業中心だった生活では、月と太陽の動きを組み合わせた暦が分かりづらいというデメリットがあったのです。
そこで取り入れられたのが、中国で作られた暦である二十四節気です。しかし、暦の1年が365日なのに対し太陽年は365.2422日で、約6時間のずれがあります。
約6時間の遅れを取り戻すために設けられているのが『うるう年』ですが、実際には少し戻り過ぎてしまいます。このような時間のずれが、日にちが変わる理由です。
七十二候で見る「立夏」のイメージ
二十四節気をさらに3等分し細分化したものが、『七十二候(しちじゅうにこう)』です。気候や動物・植物の変化など繊細な季節の移り変わりを表しています。
古代中国で作られたものですが、日本の風土や気候に合うように作り変えられています。七十二候から立夏のイメージをより深く感じ取ってみましょう。
初候「蛙始鳴」
5月5日から9日ごろは、立夏を3等分した最初の候『蛙始鳴(かわずはじめてなく)』です。蛙(かわず)はカエルのことで、カエルが鳴き始める時期という意味です。
都会では経験することはほぼありませんが、冬眠から目覚めたカエルが活動し始め、夜になるとカエルの声が鳴り響きます。自然豊かな田舎では、夏の訪れを告げる風物詩の一つです。
子どもの頃に歌った「カエルの歌が聞こえてくるよ」で始まる『カエルの合唱』を思い出す人もいるのではないでしょうか?
次候「蚯蚓出」
5月10日から14日ごろは、真ん中の候で『蚯蚓出(みみずいずる)』と呼ばれています。冬眠していたミミズが活動を始め、土の中から出てくる時期になります。
都会ではあまり見かけることがなく存在感の薄いミミズですが、農業では欠かせない大切な存在です。ミミズが土の中を通ることで空気や水が循環され、植物の成長をサポートしているためです。
落ち葉などの有機物を食べて出る糞は、肥料の役割を果たし栄養豊富な土壌が出来上がります。土を肥やしてくれる大事な存在であることが、七十二候に選ばれている理由かもしれません。
末候「竹笋生」
5月15日から19日ごろは、最後の候『竹笋生(たけのこしょうず)』です。実際に見たことがない人もいるかもしれませんが、タケノコが土から出てくる時期になります。タケノコは成長速度が速く、土から芽が出て10日前後が食べ頃と言われています。
タケノコの旬は春先のイメージがある人もいるかもしれませんが、種類により収穫期には幅があります。日本産のタケノコの中には、5月から6月に旬を迎えるものもあるのです。
「立夏」と「夏至」の違いは?
立夏と夏至は混同されがちですが、異なる節気です。夏至がどのような日なのか紹介します。
「夏至」は昼の時間が最も長い日
二十四節気において立夏が夏の始まりであるのに対し、夏の始まりと終わりの中間にある夏至は、夏らしさが増していく時期に当たります。しかし、実際には梅雨時で夏らしさを感じないことも多いでしょう。
夏至は1年を通して太陽が最も高い位置に到達するため、『昼の長さが最も長い日』としても知られています。農業においては、夏至を目安に田植えをすることも少なくありません。夏至から11日目に当たる『半夏生(はんげしょう)』までに田植えを終わらせるのがよいという風習もあります。