■連載/大森弘恵のアウトドアへGO!
フタつきグリルでは本格的なバーベキューができると人気のWeberには、ブランド創始から伝わる「チャコール」、どこでも手軽に使える「ガス」、そして室内でも安心な「電気」のグリルがあるのだが、このたびスマホで設定&調理を指示してくれる電気グリルの進化系、スマートBBQグリルが登場した。
Weber Pulse 電気グリル(5万9990円)
60.5×54×H33cm、重量13.6kg。使用電力は1300W/100V。
見た目とサイズ感は電気式のWeber Q1400によく似ている。ガスカートリッジを取り付けるWeber Q1250と比べると、両サイドのテーブルがない分コンパクト。
ほかのシリーズ同様、専用カート(2万4990円)に載せれば、移動はらくらく。調理しやすい高さで食材の置き場にも困らなくなるので、できればセットで手に入れたいオプションだ。
Weber Pulse 電気グリル(以下、Weber Pulse)を「Weber Grill Academy青山」で購入前のグリル体験ができると聞き、その魅力と使い方を教わってきた。
Weber Grill Academyは、Weberストア青山に併設されたBBQ教室。
Weberのいろいろなグリルの使い方とプロ直伝のレシピを教えてもらえる場で、社員研修や料理好き仲間の交流、なかには親族の顔合わせでも使われているという。
教えてくれたのはブックマン健介さん。幼少期をアメリカで過ごし、アメリカで和食店に努めた後、Weberのシェフになったという。
「アメリカでは週末ごとに各家庭でバーベキューを楽しんでいます。
朝一番にいそいそとコストコへでっかい肉を買いに行き、昼すぎに友人たちを呼んで会話を楽しみながらじっくり焼いて、夕方ごろに焼き上がった肉をみんなで食べるといった感じで日本でいう鍋パ、タコパのイメージです。
もともと料理好きだったので、高校時代は毎週のように友だちの家に呼ばれ、いっしょに肉を焼いていたような気がします。
アメリカで日本の文化や和食を伝えてきましたが、これからはアメリカ文化のBBQを日本に伝えられれば」
Weber Pulseの使い方
Weber Pulseをスマホで操作するには、ほかのスマート家電と同じように、最初にスマホとペアリングする必要がある。
iOS、Androidともに専用アプリ「Weber Connect」が用意されているので、あらかじめダウンロードしておき、あとはアプリの指示通りにするだけでペアリングは完了する。ただし、家族みんなで使えるようにと複数のスマホにアプリをいれておいても、同時には接続できないので注意が必要だ。
使用前は最高温度(315℃)に設定してしっかりプレヒート。この一手間で網もフタも均一に熱が蓄えられ、ムラなく仕上がる。
アメリカ生まれのWeberだから、初期設定は華氏(F)になっている。アプリでコントロールできるので問題ないのだが、やはり日本生まれ・日本育ちの人であれば摂氏(C)のほうがわかりやすい。設定の部分で変更しておこう。
Weber Pulseがただの電気グリルではなく、スマートBBQグリルと呼ばれるのは専用アプリ「Weber Connect」を使ってグリルの設定ができるからだけではない。
アプリには複数のレシピが登録されていて、作りたい料理を指定しておけばその手順を教えてくれ、素材に適した温度を保てる。しかも、肉に温度計を差し込んだまま加熱できるため、中心温度の様子もわかる。
レシピどおりの食材を用意し、温度だって万全に管理していても、肉の切り方や気温などによっては焦げすぎたり生焼けになったりすることがある。ところがWeber Pulseはグリルの温度とともに肉の中心部の温度も管理できるので失敗しようがない。
たとえばステーキの場合、肉の厚み、好みの焼き加減を設定できる。今回は厚み3cmの肉だったが、4cm、5cmの超厚切りであっても同じ焼き上がりになるのがうれしい。
ちなみに画面の下にある「プローブ」とは、肉の中心温度を図る温度計のこと。ステーキでは1本の温度計を使ったが、丸鶏のグリルなど分厚い肉は2つまで使える。
設定ができたら「準備を開始する」ボタンをクリック。
すると肉の下準備の仕方が表示される。
レシピを参考に、オイルを肉の表面に塗ってから塩、コショウを塗り込む。
ここから先は、火をいれるタイミングも肉をひっくり返すタイミングもアプリの指示通りにするだけ。
温度計は真ん中あたりへ真横に差し込むことで均一な仕上がりとなる。両面焼き上がったところで、最後に別の部分にも温度計を刺してムラになっていないか確認して完成だ。
専用アプリ「Weber Connect」はタイマー、温度計、そして料理の先生の役割を担っており、すべての工程ごとにアラームで教えてくれる。
ステーキを取り出し、アルミホイルに包んでしばらく休ませたあとに切り分けて試食。
BBQに限らずグリルやオーブン選びでは、電気はガスよりも火力が今ひとつで、ガスは燃焼時に水分が出るのでパリッと焼き上がらない、チャコール(木炭)は手間がかかるものの焼き上がりは最高でスモーキーな香りをまとうと言われる。
ガス式のWeber Q1250やチャコールを使うスモーキージョーでBBQをした経験と比較しても、Weber Pulseでは燻煙効果が少ないことくらいで、チャコールと遜色なし。ガスのWeber Q1250との違いは正直わからない。
もしかしたら焼き上がったものを並べ、食べ比べれば差があるのかもしれないが、ベチャッとした感じなどないし、ふっくらおいしく焼けていた。
気になるにおい、煙は?
Weber Pulseは電気式のため、使う場所が限られる。
ポータブル電源で使えればいいのだがWeber Pulseの消費電力が1300W。キャンピングカーに搭載されているエアコンが600〜1000Wなので十分なサブバッテリーを搭載しているものでなければWeber Pulseを使うのは厳しいし、2時間、3時間かけてじっくり火を通すような調理ではサブバッテリーが空になりかねない。
やはり自宅やベランダ、庭など安定した電力を確保できる場所でないと使いづらいだろう。
半面、Weber Grill Academyは換気設備が整っているということもあるがにおいも煙もごくわずか。熱線が焼き網の周囲を通っているので肉汁が熱線にふれにくく、これがにおいや煙を抑えるのに効果があるそうだ。また、熱線+鋳鉄の焼き網のおかげで遠赤外線が多く放出され、パリッと仕上がるとも。
電気式なので風が強い日や寒い時期には室内でBBQを楽しめ、においがこもらないので使用後のストレスもない。これはガスやチャコールにはないメリットと言える。
使用後はフタを閉めて高温にし、ブラシでゴシゴシと炭化した食材をこそげ取るだけ。余分な脂を受け止めるトレイがあるので、そこをきれいにすればだいたい手入れは終了する。このあたりはほかのWeberグリルも同じで、非常に簡単だ。
フタの汚れが気になるならコントロールパネルを取り外せば少々水をかぶっても大丈夫。強弱ではなく温度設定ができるのでオーブンのような操作性だが、手入れはホットプレート並みの手軽さとなっている。
専用アプリ「Weber Connect」に登録されているレシピは全部で5カテゴリ30種類以上で、これはどんどん追加されていく。プロのレシピも豊富で、料理初心者による初BBQであってもプロ並みのグリル料理ができるのが頼もしい。
レストランでのパーティーはまだまだ難しい時代だが、Weber PulseがあればおうちBBQでプロの味を再現できる。おうちキャンプを充実させる道具になりそうだ。
【問】WEBER-STEPHEN PRODUCTS JAPAN合同会社
取材・文/大森弘恵