
誰しも一度は「骨折り損のくたびれ儲け」という言葉を耳にしたことがあるはず。現在では、会話で使われることはあまりないものの、ビジネスパーソンの教養として意味や使い方を理解しておいて損はない。
そこで本記事では、「骨折り損のくたびれ儲け」の正しい意味や使い方を解説する。似た意味を持つ言葉も併せて覚えて、上手に使い分けしてほしい。
「骨折り損のくたびれ儲け」とは?
まずは、骨折り損のくたびれ儲けの正しい意味と由来を紹介する。誤用してしまうと、相手に真意が伝わらないだけでなく、自分が恥をかくことになるため、まずはしっかりと正しい意味を把握してほしい。
意味は「苦労するだけで利益がないこと」
骨折り損のくたびれ儲けとは、疲弊するほど労力を使ったにも関わらず、思ったよりも結果や利益がでなかったことを表現したことわざ。「骨折り損」はせっかくの苦労が無駄になること、「くたびれ儲け」は疲労を得たことを意味する。つまり、「せっかく苦労をしたのに得たものは疲労だけ」という状況だ。このことわざは、無駄なことをしてしまった後悔の気持ちを表す際に用いられる。
ことわざの由来は「こんにゃく屋さん」
骨折り損のくたびれ儲けは、とある”こんにゃく屋さん”の話に由来すると言われる。こんにゃく屋を営んでいた権兵衛は、こんにゃくが売れないことに悩んでおり、どうしたらこんにゃくが売れるかを考えた結果、こんにゃくのサイズを大きくすることにした。そのお陰で、お店は大繁盛となりすぐにこんにゃくは売り切れた。しかし、売値を元の値段のままにしていたため、ほとんど原価でこんにゃくを売ったことに気付く。
労力をかけた割にほとんど利益が上がらず、ただ疲労だけが残った権兵衛のこの状態をことわざにしたのが「骨折り損のくたびれ儲け」だ。
英語ではどう表現する?
骨折り損のくたびれ儲けの英語表現は「Great pains but all in vain」。「苦労/痛み」の意味を持つ「pain」と、「無駄に」の意味を持つ「in vain」を用いて表現するのが一般的だ。「Great pains but all in vain」を直訳すると「大きな苦労があったが、すべて無駄になった」となる。
「骨折り損のくたびれ儲け」の正しい使い方と例文
ここでは、「骨折り損のくたびれ儲け」の正しい使い方と例文を紹介する。省略表現と実際の使い方をチェックしよう。
「骨折り損のくたびれ儲け」を短く言うと「骨折り損」
骨折り損のくたびれ儲けを「骨折り損」と略して表現する場合がある。骨折り損とは「苦労をして損をした」「苦労をする以外、利益がなかった」と言う意味で、「骨折り損のくたびれ儲け」と「骨折り損」はどちらも同じ意味で使われる。
「骨折り損のくたびれ儲け」の例文
ここでは、「骨折り損のくたびれ儲け」を使った例文をいくつか紹介する。日常会話で上手に使えると、スマートな印象を与えられるはず。
【例】
・初日の出を見るために山へ登ったが、曇りで見られず、骨折り損のくたびれ儲けになってしまった。
・数量限定の商品を買うために早朝から行列に並んだが、売り切れてしまって何も買えなかった。骨折り損のくたびれ儲けだ。
・徹夜で会議資料を仕上げたのに、急に会議が中止。骨折り損のくたびれ儲けになってしまった。
骨折り損のくたびれ儲けと似た意味を持つことわざと四字熟語
「骨折り損のくたびれ儲け」には、似た意味を持つことわざと四字熟語がある。これらの言葉を使い分けることができれば、より自分の状況を相手に伝えやすくなるだろう。
権兵衛が種蒔きゃ烏がほじくる
「権兵衛が種蒔きゃ鳥がほじくる」とは、人が苦労してやったことが無駄になってしまうこと。権兵衛が種を蒔いているのに、そのすぐ後から鳥がほじくって種蒔きを台無しにしてしまう様を表現している。
労多くして功少なし
「労多くして功少なし」とは、苦労した割に成果が出ないこと。「労」は労力、「功」は手柄や偉勲のことを指す。苦労をしたにも関わらず、手柄が極めて少ないことを表現する言葉で、「骨折り損のくたびれ儲け」の類語として用いられる。
往返徒労
「往返徒労」には、無駄に往復する、無駄足を踏むという意味がある。「往返」は往復すること、「徒労」は無駄な労力のことを指す。実際の使い方は「図書館に本を借りに行ったが、休館日だったため往返徒労に終わった」「仕事が終わってから急いでスーパーに向かったのに、お店側に都合で1時間早く閉店してしまっていた。往復徒労だ」など。
「くたびれ損の銭失い」とは?
まれに「くたびれ儲けの銭失い」という言葉を使う人がいる。中には、骨折り損のくたびれ儲けの類語だと勘違いしている人もいるかもしれないが、これは「安物買いの銭失い」と「骨折り損のくたびれ儲け」が混在した間違ったことわざ。うっかり使ってしまうと恥をかくことになるため要注意。
ちなみに、安物買いの銭失いとは「値段の安いものは品質が悪く、すぐダメになってしまうことから、結局損をする結果になる」ことを表現する言葉だ。
文/oki