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消毒用アルコールと何が違う?今さら聞けない「次亜塩素酸ナトリウム」の効果と正しい使い方

2021.04.11

除菌行動が習慣化されている今、消毒用アルコールだけでなく、さまざまな除菌剤を耳にするようになった。その中でも、「次亜塩素酸ナトリウム」入りの除菌剤も見かける。しかし実際のところ、消毒用アルコールとどう違うのか、効果など、知らないことも多い。

そこで今回は「次亜塩素酸水溶液」の専門家である三重大学の福﨑智司教授が、全薬工業主催の「次亜塩素酸水溶液及び次亜塩素酸ナトリウムに関するセミナー」で述べていた内容から、役立つ情報を紹介する。

【プロフィール】
福﨑 智司氏
三重大学大学院 生物資源学研究科 教授
広島大学大学院醗酵工学科博士課程後期修了(工学博士)、岡山県工業技術センター入所、食品技術グループ長、研究開発部長を歴任。三重大学大学院生物資源学研究科 教授。日本防菌防黴学会 英文誌編集委員長(兼務)。洗浄・殺菌技術の学術研究を行う傍ら、全国の食品工場において衛生管理の現場指導を 実践。著書に「次亜塩素酸の科学 ―基礎と応用―」(2012, 米田出版)がある。

次亜塩素酸ナトリウムとは?

次亜塩素酸ナトリウムは、次亜塩素酸水溶液の一つだ。除菌剤や殺菌剤に使用されており、家庭でよく使う製品としては、スプレー吹き付け用やベビー用品除菌剤、塩素系漂白剤、浴槽カビ取り剤などがある。


【参考】
●家庭でよく使う市販の次亜塩素酸ナトリウム製品(ppmは濃度)

1.スプレー吹き付け用
次亜塩素酸ナトリウム(100,200ppm)&精製水(全薬工業「P’s GUARD(ピーズガード)」の例)

2.ベビー用品除菌剤(漬け置き用)
次亜塩素酸ナトリウム(10,000ppm)&精製水&pH調整剤

3.塩素系漂白剤(漬け置き用)
次亜塩素酸ナトリウム(約50,000ppm)&界面活性剤(泡立ちなし)

4.浴槽カビ取り剤(フォーム洗浄用)
次亜塩素酸ナトリウム(約50,000ppm)&界面活性剤(泡立ちあり)


そもそも、「除菌」とは「1.洗浄で除去する(菌体数を減少)」方法と、「2.殺菌で死滅させる(生菌数を減少)」方法の2種類がある。

次亜塩素酸ナトリウムの特長は、この除菌の力である「洗浄力」と「殺菌力」の両方を持っているところにあり、これは他の殺菌剤にはない特性だと言う。

特に、汚れの分解力が強いのが特長だ。

●「次亜塩素酸ナトリウム」の身近な利用用途

ちなみに次亜塩素酸ナトリウムは、次のような用途で利用されており、意外と身近なところで使われている。

・水道水の消毒
・食品の殺菌処理
・プール水・温泉水の消毒
・畜産・競馬界での多様な利用

各ウイルスの不活化について

次亜塩素酸ナトリウムや弱酸性次亜塩素酸水溶液は、コロナウイルス、新型コロナウイルス、ノロウイルスを不活化することが確認されている。

1.コロナウイルスの不活化

次亜塩素酸ナトリウム水溶液(50ppm,pH9.8)と0.9%の食塩水に、一定期間、豚コロナウイルスを接触させたところ、0.9%の食塩水は15秒たってもほとんど感染力は減少しなかった。一方で、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は99.99%以上減少し、豚コロナウイルスを不活化することがわかった。

2.新型コロナウイルスの不活化

弱酸性次亜塩素酸水溶液(25ppm,pH6.5)の中に新型コロナウイルスを混合して、一定時間接触させたときの不活化効果を調べた。

1分接触させたところ、ウイルス感染価は検出限界以下となり、99.99%以上減少し、新型コロナウイルスを不活化することがわかった。

3.ノロウイルスの不活化

次亜塩素酸ナトリウムは、濃度約160ppm以上あれば、30秒で99.999%以上ノロウイルスを不活化することがわかった。

消毒用アルコールとはどう違う?

各ウイルスを不活化する次亜塩素酸ナトリウム。現在、日常的に利用している消毒用アルコールとはどう違うのか。殺菌と洗浄の面から比較された。

1.殺菌

手指消毒、手のひらへの塗り広げた場合の比較。

消毒用アルコールは、皮膚の内部に浸透するため、皮膚の常在菌まで殺菌する。消毒効果が高いといえる。一方で、手荒れの原因となる。

次亜塩素酸ナトリウムは、浸透性が低いので皮膚の表層のみに浸透する。そのため、表面通過菌を殺菌する。つまりモノからの付着菌のみを殺菌する。その結果、手荒れは起こらない特徴がある。

2.洗浄

タンパク質汚れが付着したステンレス鋼の洗浄をした場合の比較。

水で洗浄した場合、水の持つ溶解力で、ある一定量のタンパク質を除去できる。

消毒用アルコールで洗うと、エタノールが加わることにより、水の持つ溶解力が著しく減少するため、ほとんどのタンパク質は除去されない。これが微生物の場合には死滅はするが、死骸は表面に残ったままとなる。

次亜塩素酸ナトリウムは、水の持つ溶解力に加え、タンパク質に対して強い分解力があるので、タンパク質の優れた除去率を得ることができる。微生物の場合は、生菌も死菌もすべて除去する。

まとめると、次亜塩素酸ナトリウムは消毒用アルコールと比べて浸透力は低いが、手荒れは防げる。またタンパク質へ分解力は勝っているということだ。

●拭き掃除と漬け置き洗浄の違いで比較

実際の使用シーンでの違いはどうなのか。拭き掃除と漬け置き洗浄において、消毒用アルコールとの比較がされた。

【拭き掃除】
細菌が付着したステンレス鋼を、水、次亜塩素酸ナトリウム、逆性石鹸、消毒用アルコールをそれぞれ染み込ませたふきんで拭いた後の除去率が下記だ。

水 86%
次亜塩素酸ナトリウム 96%
逆性石鹸 82%
消毒用アルコール 35%

【漬け置き洗浄】
タンパク質が付着したステンレス鋼を、次亜塩素酸ナトリウム、逆性石鹸、消毒用アルコールそれぞれで漬け置きした結果、除去率が下記だ。

水 20%
次亜塩素酸ナトリウム 98%
逆性石鹸 22%
消毒用アルコール 8%

除去率において、次亜塩素酸ナトリウムは消毒用アルコールよりも大きく勝っている。

「次亜塩素酸ナトリウム」の正しい使い方

次亜塩素酸ナトリウムは、どのように使うのが正しいのか。それには次の4つのポイントがあるという。家庭用の製品を使用する際の参考にしよう。

1.適切な濃度に水で希釈する

2.一定時間接触させる

一定時間、接触させる必要があるため、漬け置き洗浄やフォーム洗浄、スプレー吹きつけ(複数回)などが必要。

3.水すすぎ(水拭き)を十分する

使い終わったら、必ず水ですすぐ、つまり水拭きをすることが必要。洗浄剤というのは、汚れを除去するのではなく、汚れの代わりに吸着する吸着反応であるからだ。

つまり、掃除後は、水で再度置換(すすぐ)を行う必要がある。次亜塩素酸ナトリウムの残留はサビの原因となるそうだ。

4.水を拭き取る

掃除後、浴槽やタイルカビが発生したり、シンクにサビが発生したりすることがある。その原因は水。水のあるところに微生物は発生するため、必ず水を拭き取ることが大事だ。

「次亜塩素酸水」との違い

最近、よく耳にする「次亜塩素酸水」。次亜塩素酸ナトリウムとの違いはどこにあるのか。

一言で言うと、水溶液のpHが違う。

次亜塩素酸水は「酸性」の溶液であるのに対して、次亜塩素酸ナトリウムは「アルカリ性」の溶液である。

では、酸性とアルカリ性では、効果にどのような違いがあるのか。

●効果の違い

同じ濃度で存在した場合に、次亜塩素酸水のほうが殺菌力ははるかに高い。微生物の中にも侵入して、中からも外からも殺菌効果がある。しかし水以上の洗浄力はない。

一方で、次亜塩素酸ナトリウムは洗浄力に優れており、濃度を上げると次亜塩素酸水と同じだけの殺菌力もある。

濃度の安定性は、次亜塩素酸ナトリウムのほうが安定しているため、容器で保存ができることから、次亜塩素酸ナトリウムは家庭での実用性が高いといえる。

ちなみに、一時期、次亜塩素酸水についてニュース等で話題になったが、厚生労働省の公式サイトにもある通り、次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムとは異なるものであるため、混同しないこととと、正しい使用方法で使用するように留意したい。

【参考】厚生労働省「新型コロナウイルス対策 「次亜塩素酸水」を使ってモノのウイルス対策をする場合の注意事項」

取材・文/石原亜香利

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