革は靴に鞄、財布、洋服、家具、車のシートなど、誰もが目にすることができる身近な存在なのに、原料や種類、特性までしっかり理解している人は少ないようだ。大人の身だしなみとして、知っておくべき基礎をご紹介しよう。
基本のき。皮、革、皮革の違い
皮は動物の身体から剥いたまま、生の状態を指す。もちろんそのまま放置していれば劣化していく。英語ではSKIN(スキン)やHIDE(ハイド)。
その動物の皮を鞣(なめ)し、腐ったり変質しないようにしたものが革。英語ではLEATHER(レザー)。
皮革は皮と革の総称。英語ではGenuine Leather(ジェニュイン・レザー)。
主な革の原料は食肉の副産物
革になるのは主に牛、豚、羊などの哺乳類だ。重要なことはいずれも食肉用の家畜であり、肉にするために剥いだ皮が利用されている。つまり、革を作るために皮を剥いでいるわけではない。
原料となる動物の中でも、牛は世界で流通している革の80%ほどを占め、とくに細かく分類されている。その他の動物も含め、以下の表を参考にして欲しい。
*表に入れてないが、オーストラリアのカンガルーも高級材料としてスポーツシューズなどに使われている。こちらは食用もしくは害獣として駆除されたものが利用されている。
その他の革原料
革の中にはエキゾチックレザーと呼ばれるものがあります。原料はワニやトカゲ(は虫類)、ダチョウ(鳥類)、サメやエイ(魚類)など。こちらはワシントン条約で保護され、輸出入には厳しい規制がある。
皮から革にするタンナー
鞣しにより、皮を革に加工する人(業者)はタンナー(tanner)と呼ばれ、原皮の質と職人の技術により、革の良し悪しが大きく変わる。フランス、イギリス、ドイツ、イタリアなどが世界の有名どころだ。
日本では、兵庫県(姫路市・たつの市)、和歌山県(和歌山市)、東京都(墨田区・台東区)が三大産地。いずれも水資源が豊富な場所で営まれている。
中でも東京は、純国産の豚皮を使ったピッグスキンの生産地として知られ、浅草界隈では卸問屋、製品製造、流通まで担う町ぐるみの生産体制がとられている。
鞣しの技術
皮から革にする鞣しの技術は次の2つに大別される。
クロム鞣し
薬品(塩基性硫酸クロム)を皮に浸透させるもので、大量に柔らかな革を作ることができる。仕上がりは薄く、着色や加工がしやすい。
タンニン鞣し
古くから使われている技術で、植物性のいわゆる渋を浸透させるもの。クロムに比べると時間も手間もかかるが、革本来の良さが表れる。
*両者を併用した、混合鞣し(コンビ鞣し)という技術もある。
革製品の手入れについて
熱や湿気を嫌うので、できるだけ風通しの良い場所で保管すること。滅多に履かない靴を買った時のまま箱に入れた状態は好ましくない。
雨に濡れた場合
素早く乾布やティッシュペーパーなどで抑えるように水気を吸い取り、清潔なガーゼや柔らかな布で丁寧に、軽く磨き上げてから風通しの良い場所で陰干しする。直射日光は避けること。
カビが生じた場合
表面もブラシや布でこすってホコリを取ると、一緒に取ることができる。が、一度発生すると根が深くなり取りづらくなることがあるので、早期発見早期対処が必要。
ホコリが付いた場合
やわらかなブラシや布でふくか、竹の棒で軽く叩く。スエードやヌバックはブラシ掛け。
革に関する講座や資格
革に関する知識をもっと高めたいという人向けに、日本革類卸売事業協同組合と(一社)日本皮革産業連合会では、HPで簡単なマンガ辞典を公開しているほか、オンラインによる無料の皮革講座(2021年5月末まで)も公開しているので、ぜひ視聴してみよう。
・皮革マンガ辞典 https://www.jlia.or.jp/enjoy/manga/index.html
・オンライン皮革講座Basic(初級) *要登録
https://www.leather-sommelier.jp/page/online-basic
取材協力 丸喜(藤田晃成) https://marukileather.jp/
日本皮革産業連合会 https://www.jlia.or.jp/
取材・文/西内義雄
医療・保健ジャーナリスト。専門は病気の予防などの保健分野。東京大学医療政策人材養成講座/東京大学公共政策大学院医療政策・教育ユニット、医療政策実践コミュニティ修了生。高知県観光特使。飛行機マニアでもある。JGC&SFC会員。