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空き家の所有者は知っておきたい「空き家対策特別措置法」と上手な活用法

2021.04.01

空き家対策を推進する「空家等対策の推進に関する特別措置法」、通称、「空き家対策特別措置法」が施行されてから5年が経過した。その間、市区町村の空き家に関する取り組みも進み始め、2020年3月末時点で空家等対策計画が全市区町村の7割で策定されている。※1

空き家活用サービス「アキサポ」を提供する株式会社ジェクトワンではこのほど、47都道府県の中、空き家の総戸数が最も多い東京都※2で空き家を所有する人を対象に、その実態を把握すべく、「2021年 東京都空き家所有者に対する意識調査」を実施した。

※1 国土交通省の報道発表資料「空家法施行から5年、全国で空き家対策の取組が進む」(令和2年11月26日に発表)による
※2 平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計による

【1】都内空き家所有者の空き家に関する法制度等の認知度について

■「空き家対策特別措置法」の認知度は、40.4%と5割を下回る結果に

都内の空き家所有者に、空き家対策に関する指針と制度、計画に関する事項をまとめた「空き家対策特別措置法」について知っているか尋ねたところ、「法律の具体的な内容まで知っている」と回答した人は11.6%、「法律があることを知っている/名前を聞いたことがある」と回答した人は28.8%、残る約6割(59.6%)の人が「知らなかった」と回答した。

「具体的な内容まで知っている」、「法律があることを知っている/名前を聞いたことがある」の回答を合わせた「空き家対策特別措置法」に関する認知度は40.4%と5割を下回っており、施行から5年が経過しているものの、国の対策について当事者である空き家所有者に充分に浸透していないことが明らかとなった。

■空き家物件を所有する地域の空き家条例の認知度(条例の有無の認知を含む)は31.4%

都内の空き家所有者に、空き家物件を所有する地域で空き家に関する条例が制定されているかを知っているか尋ねたところ、「条例の具体的な内容まで知っている」と回答した人は8.6%、「条例があることを知っている/名前を聞いたことがある」と回答した人は16.2%、「条例がないことを知っている」と回答した人は6.6%で、最も多い回答は「わからない」(68.5%)となった。

「条例の具体的な内容まで知っている」、「条例があることを知っている/名前を聞いたことがある」、「条例がないことを知っている」を合わせた空き家条例に関する認知度は31.4%にとどまり、「空き家対策特別措置法」の認知度よりもさらに低い結果となった。

■放置した年数別では、10年以上前から放置している空き家所有者の法制度の認知度が最も低い

「空き家対策特別措置法」の認知度について、空き家を放置した年数別で比較すると、最も認知度が高かったのは、空き家を所有してから「1年以上~5年未満」の人の58.5%、続いて「5年以上~10年未満」(51.1%)となった。

一方で、「1年未満」(29.5%)および「10年以上」(26.5%)の人の認知度は低く、空き家を所有したばかりの所有者と「空き家対策特別措置法」施行前から長年空き家を放置し続けている所有者の認知度は3割に満たない結果となった。

空き家物件を所有する地域の空き家条例の認知度(「条例の具体的な内容まで知っている」、「条例があることを知っている/名前を聞いたことがある」、「条例がないことを知っている」を合わせた割合)を、空き家を放置した年数別で比較すると、最も認知度が高かったのは、空き家を所有してから「1年以上~5年未満」の人で50.1%、続いて「5年以上~10年未満」(30.3%)、「1年未満」(24.9%)となり、「空き家対策特別措置法」の認知度と同様に「10年以上」の人が最も低く19.8%だった。

空き家に関する法制度等の認知度は未だに低く、特に空き家を所有したばかりの所有者と、長年放置し続けている空き家所有者には、空き家対策に関する情報が届いていない状況と言えるだろう。

■借り手・買い手探しの検討をしていない所有者の8割近く(77.8%)が空き家の法制度について認知していない

「空き家対策特別措置法」の認知度(「法律の具体的な内容まで知っている」、「法律があることを知っている/名前を聞いたことがある」を合わせた割合)について、借り手・買い手探しの検討有無で比較すると、「検討していない」と回答した人の認知度は22.2%、「検討している」と回答した人の認知度は63.0%となった。

空き家物件を所有する地域の空き家条例の認知度(「条例の具体的な内容まで知っている」、「条例があることを知っている/名前を聞いたことがある」、「条例がないことを知っている」を合わせた割合)について、借り手・買い手探しの検討有無で比較すると、「検討していない」と回答した人の認知度は17.4%、「検討している」と回答した人の認知度は48.8%となった。

借り手・買い手探しを検討している人は、空き家に関する法制度等の認知度が比較的高い一方、検討していない人の認知度は低いことがわかった。空き家に関する法制度等の認識と、空き家活用への意欲は比例していることがうかがえる。

■【まとめ】都内空き家所有者の空き家に関する法制度等の認知度について

都内空き家所有者の空き家に関する法制度等の認知度は、「空き家対策特別措置法」が施行されてから5年経った現在でも半数以下と、未だ空き家を所有する当事者に充分には浸透していない。放置した年数別にみると、特に空き家を所有して「1年未満」、「10年以上」と、空き家を所有したばかりの所有者と長年放置している所有者の空き家問題への意識が低いことがわかった。

空き家を所有して「1年未満」の所有者の認知度が低いことは、空き家所有者となる前の段階から空き家に関する情報が届いていないことが予測され、「10年以上」空き家を放置している人に対しては、当事者意識が薄れてしまっていることが考えられる。

また、借り手・買い手探しの検討をしていない人の認知が低いことからも、空き家問題の解決に向けて、行政や市区町村の法制度や対応施策の情報が当事者に届いていないことが問題点の1つと言えるだろう。

【2】都内空き家所有者の空き家活用検討の有無、検討した際の相談先について

■空き家活用について検討したことのある人は全体で44.7%となり、半数に満たず。

都内の空き家所有者に、所有する空き家を貸すことや売却することを検討したことがあるか尋ねたところ、「少しでも検討したことがある」と回答した人が44.7%、「全く検討したことがない」と回答した人が55.3%となった。都内の空き家所有者の半数以上が空き家の活用について考えていないことがわかった。

■相談先として最も多かったのは不動産会社で47.4%、公的機関への相談は10.4%。

空き家の活用を検討した際に相談した先を尋ねたところ、「不動産会社」(47.4%)、「リフォーム会社」(17.3%)、「役所、公的な相談窓口」(10.4%)、「マッチングサイト・マッチング会社」(5.9%)、「建物の解体会社」「NPO」(各3.7%)、「弁護士」「税理士」(各2.2%)、司法書士(1.5%)と公的機関や企業等へ相談した人の合計は65.9%。そのほかの身近な相談先として「家族、親戚」(18.5%)、「友人、知人」(11.1%)、「誰かに相談はしていない」と回答した人は23.0%となった。

■相談先を年代別にみると、不動産会社がいずれの年代でもトップ。

年代別にみると、空き家活用を検討した際の相談先として最も多かった「不動産会社」と回答した人の割合は、年齢が高くなるにつれて減少傾向にあるものの、いずれの年代でも相談先としてトップとなった。

「役所、公的な相談窓口」への相談は、「30代」(21.9%)、「40代」(19.4%)は2割程度あるものの、50代以上の人は0%という結果となり、公的機関に相談をしていないことがわかった。

一方で、高齢者は「家族、親戚」や「友人、知人」など、身近な人への相談する傾向にあり、まだ空き家活用に向けて具体的な窓口へ相談できていないことがわかった。

■空き家活用に向け検討した割合は、23区外よりも、23区内の空き家所有者の方が高い。

23区内の空き家所有者で、貸す・売却することを検討した人は46.1%、そのうち公的機関・企業等に相談した人は32.5%。23区外の空き家所有者では、貸す・売却することを検討した人は42.3%、そのうち公的機関・企業等に相談した人は24.3%と空き家活用に向けた検討と具体的な機関への相談については、23区内のオーナーの方が比較的高い結果となった。

■【まとめ】都内空き家所有者の空き家活用検討の有無、検討した際の相談先について

空き家を貸すことや売却することを検討した人よりも「全く検討したことがない」と回答した人が5割強となり、都内空き家所有者の半数以上が空き家の活用について考えていないことがわかった。

実際に空き家活用を検討したことがある空き家所有者の相談先として最も多かったのは不動産会社で、年代別に見ても、いずれの年代でも相談先としてトップとなった。

一方で、役所など公的機関への相談は、30代~40代では2割程度あるものの、50代以上は全く相談しておらず、高齢者は「家族、親戚」や「友人、知人」への相談にとどまる傾向が浮き彫りとなった。

また、公的機関・企業等に相談をした際の不満の声としては、「ネット等で得られる情報以上のものがない」「担当者の知識不足」「担当者が不明でたらいまわしにされた」など情報不足や体制に不満を呈する意見がみられたことから、今後このような相談先の対応力の向上や改善が求められていると言えるだろう。

■「2021年 東京都空き家所有者に対する意識調査」から得られた示唆

「空き家対策特別措置法」の施行から5年経ち、全市区町村の7割で空家等対策計画が策定されている状況だが、本調査の結果、いまだ、空き家に対する知識や情報は空き家所有者に充分に届いていない状況であることがわかった。

空き家問題の解決に向けては、特に空き家を所有する前の段階、また、空き家を長年放置し活用への意識が薄れてしまっている所有者に向けて、情報を訴求できるような施策に取り組むことが重要。今後は、行政や市区町村が空き家に関する身近な相談窓口であるということを周知するための啓発に加えて、国や自治体が民間企業のサービス等と連携し、空き家問題に対する問題意識の啓発と空き家問題解決に向けた取り組みも必要だといえるだろう。

また、年齢の高い人ほど、身内への相談に留まる、もしくは誰にも相談をしていない傾向があるため、親の相続等で空き家を持つ割合の高い50代~70代に向けた取り組みを検討することが重要であるといえる。

<調査概要>

出典元:アキサポ空き家総研(株式会社ジェクトワン)

構成/こじへい

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