脳卒中後の性生活は気持ちの持ち方が重要、AHAニュース
脳卒中サバイバーはしばしば性機能障害に陥り、その影響が寝室を超えて日常生活全般に及ぶことがある。
そうした人々が立ち向かう障壁や、医療提供者にできる手助けについての新しい洞察が、新たな研究で示された。研究結果は国際脳卒中学会(ISC 2021、3月17〜19日、オンライン開催)で発表された。
研究グループは、ペルーのリマにある医療センターで150人(平均年齢63歳、3分の2以上が男性)の脳卒中患者に対して調査を行い、性交渉の頻度や性機能障害に関連する因子などについて評価した。
その結果、59%の人が何らかの性機能障害に苦しんでおり、性機能が最適だと回答したのはわずか10%にとどまることが明らかになった。最も頻繁に報告された問題は、性交渉の頻度と性的欲求の減少であった。
研究論文の筆頭著者で、米テキサス工科大学健康科学センターの神経内科医であるVictor Montalvan氏は、「重要なことに、性機能障害は、客観的に測定された障害よりも、自分の能力に対する主観的な見方との関連の方が強かった」と述べている。
そのほか、抑うつと、セックス中に脳卒中を再発するかもしれないという恐怖も、性機能障害と関連していたという。
この研究には関与していない、米ネブラスカ大学医療センター看護学部教授のSusan Barnason氏は、「脳卒中サバイバーでのセクシュアリティのあり方に関しては、これまでのところ、かなり限られた情報しかなかった。この研究のおかげで、この問題に関する情報が増えた」と評価する。
Barnason氏は、「脳卒中後のセクシュアリティの回復は、全般的な健康にとって重要だ」と話す。
その理由を同氏は、「セクシュアリティが回復することで、患者は自分が正常で健康だと感じることができるからだ。脳卒中を起こす前に健康的な性生活を楽しんでいた脳卒中サバイバーの場合、元通りの性生活を取り戻すことが、“たとえ、少し麻痺や言語障害があったとしても、全身が機能していないわけではない”と自分を納得させるのに役立つ」と説明する。
Montalvan氏によると、脳卒中サバイバーは身体活動に注意する必要があるものの、セックスは脳卒中再発の特定のリスク因子とは見なされていないという。
同氏は、「私たちがレビューしたガイドラインに基づくと、脳卒中サバイバーが性生活を続けることは禁忌ではない。むしろ、性生活の再開にはメリットがある」と話す。
米国心臓協会(AHA)も、脳卒中後のセックスは「妥当」であり、医療提供者はフォローアップ検査中に脳卒中サバイバーとそのパートナーに対して、性生活について尋ねることを推奨している。
Barnason氏は、医療提供者が患者の性生活の話題を積極的に取り上げることの難しさについて理解を示しつつも、「医療提供者は、患者は必要なことは自分から尋ねるものだと考えがちだ。しかし、医療提供者の方から性的な話題を切り出すことが重要だ」と話す。
一方、Montalvan氏は、今回の研究は、性的な問題について助言を求める膨大な数の患者によって促されたものだと話す。同氏はまた、フォローアップケアの間は、患者も医師も発話や脱力の問題に気を取られていて、性に関わる心配事は見落とされがちだと指摘する。
Barnason氏は、「健康的な性生活はカップルの関係の強化につながり、それは脳卒中からの回復にも役立つ。良好な人間関係を築いている人は、約束を忘れることが少なく、薬をきちんと服用する可能性が高く、抑うつにもなりにくい」と話す。
そして、「良好な性機能の維持は、最終的には心血管の健康と精神的な健康の双方に良い影響を与える」と結論付けている。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般的に予備的なものとみなされる。(American Heart Association News 2021年3月15日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/str.52.suppl_1.P203
構成/DIME編集部