「人は平均して250人の人間とつながりがある」と唱えたジラートの法則や、「失敗する可能性のあるものは失敗する事象」をユーモアのある文章で表した「マーフィーの法則」など、世の中にはさまざまな「法則」が存在する。
本記事では、数ある法則の中でもビジネスシーンでよく用いられる「パレートの法則」について、定義や活用方法を詳しく解説していく。
ビジネスシーンでよく使われるパレートの法則とは?
はじめに、パレートの法則の基本的な定義や成り立ち、具体的にどのような事象があてはまるのか、身近な例とともにと紹介したい。
パレートの法則は「80対20の法則」
パレートの法則は、世の中のさまざまな事象における割合の関係性に着目したもので「物事の結果のうち8割は、全体の2割の要素が関係している」ことを唱えたもの。
例えばビジネスシーンでは、「売上の8割は2割の従業員が生み出している」「クレームの8割は2割の顧客から発生する」のようなケースが該当し、「80対20の法則」「二八(ニハチ)の法則」とも呼ばれている。
はじめに唱えたのはイタリアの経済学者パレート
パレートの法則は、19世紀末イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートによって発見されたのが起源と言われている。パレートは、所得の分布が時代によって変化せず、一定の割合を保っていることに注目し、「2割の富豪が社会全体の富の8割を所有している」という説を唱えた。
しかし発見当初から、貧困層にはこの法則が当てはまらないといった例もあり、あくまでも自然発生的に起こる事実をもとにした経験則の一つで、厳密な根拠はないとされている。
パレートの法則が当てはまる事象
もともとは経済の分野で発見されたパレートの法則だが、その他の社会現象や自然現象にも該当するケースが多くみられる。具体的な例は以下の通り。
【パレートの法則の例】
・国の人口の8割はその国の国土の2割に住んでいる
・所得税の8割は2割の国民が負担している
・都市部の交通量の8割は2割の道路に集中している
・日常で使用する単語の8割は言語全体の2割でまかなえる
また、アリの巣の中にいる勤勉・標準・怠惰なアリの比率を2:6:2で表した働きアリの法則(262の法則)は、パレートの法則を原型にして誕生したものとされる。
パレートの法則を活用するには
明確な方程式によって導かれる法則と異なり、あくまでも経験則であるパレートの法則は「間違っている」「嘘だ」という懐疑的な声も多い。しかし、使い方によっては日常生活やビジネスの効率化が図れるケースがある。ここからは、パレートの法則の活用法について詳しく解説しよう。
マーケティング、営業戦略における活用方法
パレートの法則を活用できる場面として、新規事業の立ち上げや販売マーケティング、営業が挙げられる。
例えば、新しい商品を販売する時に参考になるのは「全顧客の2割で8割の売り上げが生み出される」とする考え方。ここから、新商品の売り上げの8割は全体の2割の顧客によるものという予測が成り立つ。すると、すべての顧客に対して同じ販売促進プランを実行するのではなく、上位2割の顧客と残りの顧客を分け、営業アプローチや宣伝広告、人材など限られた会社のリソースを上位顧客に多めに割り振るよう効果的な戦略を立てられるはずだ。
また、Wedサイトを利用したマーケティングの場合、「全体の閲覧数の8割は2割のページに集中している」点に注目し、閲覧数の多いページに共通するキーワードやトピックをさらに充実させ、訪問者数の増加を図る方法もある。
時間管理にもパレートの法則が活用できる
日々の業務に費やす時間の管理も、パレートの法則を活用すれば効果的に行える。「その日に達成すべき成果の8割が2割の上位業務に集中している」と仮定すると、重要な上位業務とその他の業務の時間配分を見直したり、不要な業務の選定につながる。
パレートの法則を踏まえた場合、時間内に多くの業務をこなすことが必ずしも正解とは限らないので、タスクを吟味して効率的に業務に取り組むのがおすすめだ。
日常生活ではどのように活用する?
日常生活では、勉強や読書にパレートの法則が活用できる。勉強の場合、すべての問題を同じ密度で勉強するのではなく、過去にも繰り返し試験に出された重要度の高いものを洗い出し、それを重点的に学習する。そうすると同じ勉強時間でもより効率的に結果が得られやすい。
読書も同様で、ある本に書かれている事柄のうち要点は全体の2割ほどに集約されていることが多い。まずは本の肝となる部分を把握したのちに細かい部分を読んでいけば、より短時間で本の内容を理解できる。
ビジネスや日常生活どちらの場合でも、限られた時間や労力を効果的に配分して大きな成果を生み出すことがパレートの法則を活用する上でもっとも重要な点であると言える。
文/oki