幸せは、手にしているときは気づくことが難しい。失って初めてその価値に気づいても、ほとんどの場合もう手遅れだ。
でももし、永遠に続く死後の世界が存在していたら……。
2018年よりAmazon Prime Videoで独占配信中の『フォーエバー ~人生の意味~』(全1シーズン・8話)は、穏やかでゆる~い雰囲気がたまらない、オトナのためのブラックコメディ・ドラマ。
暴力的な描写もなく、1エピソード約30分なので、疲れているときでもリラックスして鑑賞できる
主役のマンネリ仲良し夫婦を演じるのは、アメリカの人気バラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のコメディ俳優マーヤ・ルドルフとフレッド・アーミセン。
あらすじ
マンネリ夫婦のジューン(マーヤ・ルドルフ)とオスカー(フレッド・アーミセン)。仲は悪くないけれど、刺激が足りない夫婦生活を送っている。
マンネリ打破のため、毎年恒例の湖旅行をやめて、スキー旅行に変更してみたふたり。しかしオスカーが旅行中に急死したことにより、退屈だが平和なふたりの日々は突然終わりを迎える。
オスカーの死後、ジューンはなかなか立ち直ることができない。そこで気分を切り替えるために昇格試験に応募、念願の役職をゲット。
しかし赴任先のハワイへ向かう途中の飛行機で喉にナッツを詰まらせ、気を失う。
目をさましたジューンの前にいたのは、なんと亡くなったはずのオスカーだった。
見どころ
「物足りない」と思っていた相手でも、いざ目の前からいなくなると耐え難いほど大きな喪失感が押し寄せてくる。
もっとああしておけばよかった、彼・彼女以上の人はいない、等々……。
しかしいざ死後の世界で再会すると、最初は喜び合うものの、しばらくしてまた不満がふつふつと湧いてくる。
そして「これが永遠に続くのか……」と思わずため息が漏れ、ウンザリした気持ちになる。
「もう一度会いたい、ずっと一緒にいたい」と切実に願っていたのは、一体どこの誰だったのか。
本作には“死後の人間に力を与える不思議な泉”が出てくるのだが、泉の力について「近くにいると気づかない。離れて初めてわかる」とオスカーが説明しているのが暗示的だ。
幸せ(平和)って、退屈なもの。今退屈なのは、それだけ幸せだということ。それなのに、手にしているときは幸せに気づくことができない。
そして私たちは退屈を嫌い、刺激を求める。「ここにはない何か」という不確かなもののために、リスクを負ってでも今ある幸せを自ら壊していくのだ。
人間が現状に満足できない欲深い生き物だからこそ文明が発達して、今日の私たちが豊かさを享受できているわけだが……。
どんなに愛情と豊かさに満ちた平和な生活を手に入れても、必ず大なり小なりの欠乏感を覚えるようにプログラムされているから、幸せを維持するのがこれほど難しいのかもしれない。
以前ご紹介した、同じくAmazon Prime Videoオリジナルの『明日への地図を探して』『ブリス~たどり着く世界~』ともテーマが少し被っているので、ぜひ併せてチェックしてみてほしい。
『フォーエバー ~人生の意味~』
Amazon Prime Videoで独占配信中
文/吉野潤子