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コロナ禍で仏像にハマる女性が増えている理由

2021.03.28

昨秋、地元京都にある紅葉で有名なお寺を訪ねた。

紅葉を見に来た人たちの列が数百メートルも続いていてびっくりしたが、比較的若い女性の比率の高さも印象的だった。

紅葉だけでなく、本堂の仏像も目当てだったらしく、そこも行列ができていた。

御朱印集めに熱中する「御朱印女子」の存在は知っていたが、仏像を愛好する「仏女(ぶつじょ)」という言葉を知ったのは、その時のこと。各地のお寺を巡っては仏像を愛でる(?)女性たちのことを指し、10年くらい前からひそかなブームになっているらしいが、全貌はよくわからない。

そんな折、『ほっとする 仏像図鑑』(リベラル社)という本を出した、イラストレーター兼文筆家の田中ひろみさんのプロフィールに、「女子の仏教レジャーサークルの丸の内はんにゃ会代表」とあるのを見て、がぜん興味がわき、仏女についていろいろ聞く機会をいただいた。

拝観した仏像は1万体以上

― 田中さんが、仏像の魅力に目覚めたきっかけは、なんだったのでしょうか?

田中さん:大人になり、久しぶりに京都の三十三間堂に行き、1001体の千手観音に圧倒されて恋に落ちました。

私には仏像好きの叔父がいて、大阪在住だったので近県の京都・奈良の仏像を見に連れて行かれていました。でも子供だったので、仏像には全く興味がわきませんでした。大人になり、仕事で東京へ移り住むようになってから、江戸史跡めぐりなどに興味を持ち始めました。いろいろ歩いて年数を重ねるうちにどんどん詳しくなって、史跡巡りの本を出したり、カルチャーセンターで講師をするようになりました。するとお寺に行く機会も増えていきましたが、まだそこまで仏像に興味は持てずにいました。

それが久しぶりに、京都の三十三間堂に行った時、ずらっと並ぶ1001体の千手観音像に圧倒され、突然仏像に恋に落ちたのです。恋に落ちるのに理由がないように、仏像に恋に落ちた理由をうまく伝えることはできません。ただ、幼い頃から叔父に連れられ拝観して回った仏像熱が溜まりに溜まり、一気に溢れ出たという感じでしょうか。

それ以来、日本全国の仏像を拝観に行くようになりました。ちゃんと数えたことはないのですが、四国八十八箇所や西国三十三所・坂東三十三箇所・ 秩父三十四箇所は全部拝観しましたし、バスツアーの同行講師のお仕事で毎月何十寺もめぐるのを十数年やらせていただいたり、テレビの仕事でお寺巡りの御案内や、独自でも拝観でしてまわっているので、トータルで5千寺以上は拝観に行っていると思います。仏像は、展覧会を合わせたら1万体以上は拝観していると思います。

仏像イラストレーターとなったのは、元々イラストレーターということもあるのですが、ほとんどのお寺では写真が禁止のところが多いので、絵に描くようになったというのもあります。仏像を絵に描くと写真より記憶に残り、仏像の特徴など覚えやすいので役にたっています。

田中さんがご朱印帳のデザインもてがける上野大仏(東京都上野)にて

癒し系やイケメンの仏像もいる

― 女性視点でみる仏像の魅力はどんなところにありますか?

田中さん:彼氏と違い、相手の都合を考えなくても、仏像は同じ場所にずっとおられ、いつでも会いにいくことができます。心が折れそうなことがあった時に会いに行くと、仏像は同じ顔のはずなのに慈しみの表情で迎えてくれます。ただそこにいてくださるだけでも、癒されます。イライラしてる時は叱ってくれるように見え、私たちの気持ちに優しく寄り添ってくださるような気がするのが魅力的です。

どの仏像にも癒されるのですが、一番好きな仏像は著書『ほっとする仏像図鑑』の表紙にも載せている京都の禅林寺(永観堂)の見返り阿弥陀さまです。やさしく後ろを振り返ってくださる姿に癒されます。

左下が見返り阿弥陀像

女子は、やはり仏像に対してもイケメン好きが多いと思います。イケメンで圧倒的に人気があるのは、京都の教王護国寺(東寺)の帝釈天像です。『ほっとする仏像図鑑』でも取り上げさせていただきましたが、白馬ならぬ白象に乗る王子様のようです。何と言っても魅力は、切れ長の目に、すっとしたお鼻の現代でも通じる美しいお顔です。「日本一のイケメン仏像」とも言われています。

教王護国寺の帝釈天像(『ほっとする仏像図鑑』より)

「ジャニーズ系のイケメン」と言われているのは、奈良の興福寺の阿修羅像です。実はこの阿修羅には娘がいて、帝釈天と結婚させようと思っていたのです。ところが帝釈天が結婚前に阿修羅の娘をうばったので、阿修羅は帝釈天とずっと戦うことになってしまったというのです。その戦いの場が「修羅場」の語源とされます。

興福寺の阿修羅像(『ほっとする仏像図鑑』より)

仏女のサークルも結成

― 十数年前に「丸の内OLの仏教サークル」という趣旨で「丸の内はんにゃ会」を立ち上げますね。どのようなメンバーととともに、どんな活動をされているのでしょうか?

田中さん:私が現在、代表をつとめる「丸の内はんにゃ会」は2007年に発足したのですが、その当時は今ほどお写経に行くという人が少なくて、みんなでお写経に行こうということから始まったグループです。

今では会員は700名くらいです。みんなで、座禅を組みに行ったり、仏像を拝観に行ったり、お坊さんを呼んで宗派のお話を聞いたり、写仏をしたりなどしました。

印象深いのが、滝行修行にメンバーで行ったことです。2月だったのですが、水に入るだけで冷たいというより痛くて、修行って大変だなと思いました。

コロナ禍でも仏女活動を楽しむには

― コロナ禍のせいで、人が集まって何かをすることを自粛せざるを得ない状況になっています。田中さんのお話を読んで、仏像に興味を持っても、「では有名なお寺をあちこち回ろうか」とは、当分はなりにくいです。さしあたって、おうちにいながらでも、仏女として楽しむ方法はあるでしょうか?

田中さん:ほんとうは、お寺に行って仏像に会いに行っていただきたいのですが、ままならいので、お家で仏像の本を読んで、癒されて欲しいです。コロナ禍があけたあと、本で見た仏像にお会いに行くと、感動もひとしおだと思います。

YouTubeの「田中ひろみチャンネル」では、お寺さんと一緒に、お寺に行かずしてお寺の様子を配信したりしているので、ぜひ見ていただきたいです。

田中さんとお寺のコラボ映像が堪能できるYouTubeチャンネルも

あと、薄い仏画の線をなぞって心を整える「写仏」もオススメです。「写経」は、お経をなぞって心を整える修行として知られていますが、「写仏」は仏画をなぞって心を整える修行で、平安時代から行われていました。無心に仏画をなぞることに集中出来てすっきりしますし、なぞることによって仏像の細部まで理解できるのでオススメです。私は写仏の本も10冊ほど出しています。

田中さんの写仏本の1冊「心やすらぐ仏像なぞり描き」(池田書店)

また、丸の内はんにゃ会も協賛している24時間にわたってノンストップで「なむあみだぶつ」と称え続ける行の「24時間不断念仏」が、5月8日の13時~9日にZoomで開催される予定ですのでよかったらご参加下さい。

田中ひろみさん プロフィール
大阪府出身。イラストレーター&文筆家。奈良市観光大使。女子の仏教レジャーサークルの「丸の内はんにゃ会」代表。カルチャーセンターの講師。京都の三十三間堂で仏像へ恋に落ちて以来、日本全国の仏像を取材し、仏像の本を多数執筆。他に神社仏閣、歴史、史跡、恋愛など幅広いテーマでも執筆。講演もこなす。著書は『心安らぐ仏像なぞり描き』(池田書店)、『クイズで入門 日本の仏像』(講談社+α文庫)、『漫画で学ぶ仏像の謎』(JTBパブリッシング)、『仏像イラストレーターがつくった仏像ハンドブック』(ウエッジ)など約70冊。

文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)

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