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いろは四十八文字をそれぞれ頭字とする「上方いろはかるた」にも採用されていることわざ、「二階から目薬」。耳にしたことがあっても、中には正しい使い方を理解していない人も意外と多いのではないだろうか。
そこで本記事では「二階から目薬」の意味や由来をわかりやすく解説した上で、実際にどんなシーンで使うのかも併せて紹介したい。会話の中で使い方を誤ると相手に失礼になることもあるため、これを機に正しい使い方を理解していこう。
「二階から目薬」とは?正しい意味と由来を解説
まず、「二階から目薬」がどのような意味なのかと、言葉の由来を解説する。似たような表現と間違いやすい解釈も併せてチェックしてほしい。
「二階から目薬」の読み方と意味
「二階から目薬」の読み方は「にかいからめぐすり」。この言葉には、大きく2つの意味がある。一つ目は、物事が思うようにいかずもどかしい様子。建物の二階から下にいる人に目薬をさすことを想像してみてほしい。何度やってもうまくいかず、もどかしい気持ちになるはずだ。
2つ目は、回りくどくて効果が得られないこと。目薬をわざわざ二階からさしても命中する確率が低いことから「あまり効率的でない状況」を表現する。 「二階から目薬」とまったく同じ使い方をする言葉に「天井から目薬」という表現がある。
よくある間違いとして「二階から目薬をさして命中するくらい確率が低い」、つまり「まぐれ当たり」の意味で解釈されることもあるが、これは正しい表現ではない。例えば「宝くじで一等が当選するのは二階から目薬だ」という使い方は間違いだ。
江戸時代に発売された「風流御膳義経記」に由来する慣用句
「二階から目薬」の由来は、1700年(元禄13年)江戸時代中期に発売された『風流御膳義経記』の浮世草子に登場した「二階から目薬をさす仕掛け、さりとは急な恋ぞかし」という句。
浮世草子とは当時の世相や人情を描いた文学作品の一種で、この句は「二階から目薬をさそうとするとは、なんて急な恋ですこと」という意味。さまざまな解釈があるが、二階から目薬をさす距離を男女の距離感になぞらえ、恋愛の妙を詠っている。
ただし、現在のような液状の目薬が一般的に広まったのは、江戸時代後期から明治時代初期頃。この句が有名になった江戸中期の目薬は、「瞼に塗る軟膏タイプ」が主流であった。
「二階から目薬」の類語
「二階から目薬」のもどかしさを表す意味での類語に「隔靴掻痒(かっかそうよう)」という四字熟語がある。「靴(くつ)を隔(へだ)てて痒(かゆ)きを掻(か)く」と訓読みし、足がかゆい時に靴の上からどれだけかいてもかゆみが無くならず、はがゆい様子を表す言葉だ。
また、「御簾を隔てて高座を覗く(みすをへだててこうざをのぞく)」ということわざも似た意味を表す。「御簾」とは目の細かいすだれのようなもので、視線を遮るために使用されていたため、御簾越しに高座を覗こうとしても中が良く見えないことから、思い通りにいかないじれったいさまを意味する。
効果が期待できないという意味を表す類語では、「焼け石に水」「杯水車薪(はいすいしゃしん)」という表現がある。
「焼け石に水」は、熱く焼けた石に水をかけてもすぐに蒸発してしまい、水をかけたくらいではなかなか冷えないことから、まったく効果が無いわけではないが、わずかな努力や援助では効果がほとんど期待できないことを表す。
「杯水車薪」は、杯(さかずき)一杯の水で、燃えている車一台分の薪の火を消そうとする様子から、少ない援助ではほぼ役に立たないことの例えだ。
二階から目薬の使い方と例文
最後に、「二階から目薬」の具体的な使用例や英語ではどう表現するかを紹介する。
どんなシーンで使う?
先述の通り「二階から目薬」は、思い通りにいかない状況や、回りくどくてなかなか成果が期待できない状況を表す言葉。日常生活でもどかしい思いをする時、非効率な方法やわずかな援助でなかなか成果が上がらない場面に対して使う。
【例文】
・「相手に自分の気持ちを気づいてもらうのを待っている君を見ていると、二階から目薬だよ」
・「会社の経営を立て直すのに、この金額では二階から目薬だ」。
・「遅刻癖のある彼に、そんな優しい注意の仕方では二階から目薬だ」。
英語ではどう表現する?
では、英語では「二階から目薬」をどう表現すればいいのだろうか。英語で伝える場合、思い通りにいかない、もどかしい状況をストレートに説明する方法と、回りくどい様子を比喩的に表す方法の二つがある。
【1.状況をストレートに説明した場合】
・「That`s a terribly inefficient way to do it.」(それを行うには、その方法は非常に非効率的だ)
・「He spoke in a roundabout way.」(彼は回りくどく話した)
【2.比喩的に表現した場合】
・「Far water does not put out near fire.」(遠くの水は近くの火を消さない)
・「Fanning the sun with a peacock`s feather.」(くじゃくの羽で太陽をあおぐ)
英語圏の人に「二回から目薬」を説明する時にも、これらの表現を参考にしてほしい。
文/oki