日本では、お世話になっている会社の人や友人、親族が入院した場合、お見舞い金やお花などを贈るのが一般的。では、退院した時の「退院祝い」には、どのようなものを贈るのがふさわしいのだろうか。
本記事では、退院祝いを贈るタイミングや使用する〝のし〟の種類から、金額の相場や定番品まで、覚えておきたいマナーをまとめて解説したい。
退院祝いを贈る際のマナー
まずは、退院祝いを贈る際にふさわしいタイミング、贈り物の表面につけるのしや表書きの種類について紹介する。間違えやすい「快気祝い」についても解説しているので、違いが分からない人はこれを機にチェックしておこう。
退院祝いを贈るタイミングは?お見舞いや快気祝いとの違い
退院祝いとは、退院した人に対して周囲の人が「回復を祝って」贈るもの。お見舞いに行けなかった場合は、その代わりとして贈ることもある。退院祝いには、「早く快復されますように」という気持ちも込められているため、退院からあまり間をおかずに贈るのがマナー。とはいえ、退院直後は身の回りの準備や手続きで忙しいこともあるため、退院後1週間~1か月が目安だ。それ以降になってしまう場合、相手が元気になっているなら「快〝復〟祝い」、自宅療養中なら「お見舞い」を贈ると良い。
よく混同される「快気祝い」や「全快祝い」とは、「入院した本人が周囲の人に回復を知らせ、感謝の気持ちを表す」もの。意味がまったく異なるため間違えないよう注意しよう。
退院祝いに適した掛け紙や表書きの種類
一般的に、退院祝いは「熨斗(のし)なし」で贈るのがマナー。熨斗紙をつけないのではなく、のし(飾り、マーク)のない紙を使用する。また、退院祝い自体はおめでたいことではあるものの入院に付随したものであるため、「水引」は二度繰り返さないお祝い事に使われる「紅白結び切り」のものを使用しよう。現金を贈る場合も同様に、のし飾りのない白い封筒に紅白結び切りの水引が印刷されたものを選ぶ。
表書きは「祝 御退院」や「御退院祝」が基本だが、体調が回復して療養が必要ない場合は「祝 御全快」、退院後も自宅療養する場合は「祈 御全快」など、相手の体調に合わせて適切なものを選ぶようにする。
退院祝いに添えるメッセージ例
退院祝いにメッセージカードを添えたり、メールでお祝いを送ったりする場合には、「退院したことへのお祝い」「体調への気遣い」「家族や周囲の人へのねぎらい」を込めた文章を簡潔に記す。相手の体調や今後の療養の有無により、文面は変化する。
・体調が回復している場合の例(会社関係)
「この度は御退院誠におめでとうございます。ご家族の皆様も安心されたことと存じます。〜日の復帰を心待ちにしておりますが、まずはご無理なさらず、ご自愛くださいますようお願い申し上げます。まずは書中にて、退院のお祝いを申し上げます」
・退院後も自宅療養する場合の例
「この度は無事御退院とのこと、心からお祝い申し上げます。ご看護にあたられた奥様もさぞお喜びのことでしょう。病気は予後が大切と申しますので、しばらくはご自宅にて養生専一にてお過ごしください。まずは書中をもちまして、ご退院のお喜びまで申し上げます」
退院祝いのメッセージでは、避けた方が良いとされる言葉がいくつかある。「寝る、折れる、弱る、4(死)、9(苦)」など不吉な意味を連想させる忌み言葉に加え、「ますます、どんどん、しばしば」のような重ね言葉もタブーだ。また、相手の容体を詳しく尋ねることも失礼に当たる。
退院祝いの相場はどのくらい?贈り物を選ぶ際の注意点
では、実際に退院祝いを贈る際、具体的にどのようなものを選べばいいのか、ここでは金額の相場や定番品を紹介する。
退院祝いの相場は?
退院祝いの相場は、3,000円~10,000円が目安。あまり高額だと相手の負担になる場合もあるため、高くても10,000円以内に抑えると良い。退院した人が家族や親族の場合は5,000~10,000円程度が相場で、現金を贈る場合も同じくらいの金額を贈る。ただし、「4、9」の数字は忌み数字となるため、4,000円や9,000円といった金額は避けるのがマナー。また、本人が望んでいる場合を除き、上司に現金を贈るのは失礼にあたるので注意しよう。
退院祝いの定番品
先述したとおり、高額なものは相手にとって「お返ししなくては」と負担をかけてしまいかねない。相手に気を遣わせない退院祝いに良く選ばれるものとしては、以下の3つが定番だ。
・洗剤、石鹸、タオル
「病を洗い流す」に通じるとされ、年齢や性別問わず誰にでも使いやすい。退院祝いとして贈るなら、スーパーやコンビニで見かける普段使いのものではなく、少し上質なものや、天然素材を使用したものがおすすめ。
・食べ物
「体調不良が消える」という意味で、果物やお菓子などの消え物も退院祝いとして人気がある。本人だけでなく、配偶者や子供も一緒に食べられるものを選べば、家族のねぎらいにもなるだろう。ただし、病み上がりで食べ物を贈る場合は、食事制限がないかあらかじめ確認しておこう。
・花
アレンジメントフラワーやプリザーブドフラワーも、退院祝いの定番の品。明るい色や花言葉で、手入れに手間のかからないものがふさわしいとされる。スイートピーやバラ、ガーベラなどが人気。
贈らない方がよいとされる物とは
一方で、退院祝いに贈るにはふさわしくないものもある。「寝付く」に通じる鉢植えの花や、香りが強すぎる花、ベッドを連想させる枕などの寝具は避けなければならない。また、「苦しい・死」につながる櫛(くし)や、弔事で送ることの多い日本茶は退院祝いには向かない。
退院祝いのお返しはどうしたらいい?
最後に、自分が退院祝いをいただいた時の対応について紹介する。退院祝いやお見舞いのお返しは、退院後に体調が回復したタイミングで、先述した「快気祝い」「全快祝い」のかたちでお世話になった相手へ贈る。
相場は「退院祝い、お見舞いの金額の二分の一から三分の一」程度。快気祝いの場合も、退院祝い同様、鉢植えの花や寝具は避け、食べ物や石鹸などの「消え物」を贈るのが一般的なマナーとされている。