資産形成の手段として投資信託の毎月積立が有名ですが、一部に実物資産といわれている金、プラチナ、銀をコツコツ積み立てる方法を取り入れるのもおすすめです。
金、プラチナ、銀の特徴
金、プラチナ、銀は実物資産といって実際にあるモノに投資し、それ自体を必要とする実需も存在します。一方で株式はそれ自体に価値はありませんが、発行している企業がその価値を裏付けています。また、紙幣は発行している国が価値付けており、さらに今ではどの国にも属さず裏付けもない仮想通貨も存在します。
実際にある実物資産は、基本はそのモノに対しての需給で価格が変動し、投資としての需要もあるため実需だけではない価格への影響もあります。ただ、限りある資源であるため、それが必要とされる限り価格は長期で上昇していくものと考えられます。
では、金、プラチナ、銀はどのような特徴があって、どのような実需があるのでしょうか。
■金
金は、ジュエリーとしてインドや中国で好まれ、ジュエリーとしての需要はインドと中国の景気に左右される。
一方、為替が変動制となる前は金が紙幣の価値を裏付けるものとされ、紙幣は金と交換でき、金と交換できる範囲内で紙幣が発行されました(金本位制)。その後、世界恐慌により金本位制は廃止されますが、今でも金はお金の代わりになるものと位置づけられており、各国の中央銀行は、通貨の価値を安定させるために、外貨準備としてドル建国債と同様に金を買って準備金としている。
金がこれまで採掘された総量は約18万トンでプール4杯分で、現在年間3,000トンペースで採掘されている。地球に残されている金は約5万トン程度で、約16年後には採掘できなくなるかもしれない。
■プラチナ
プラチナは、金と同じようにネックレスや指輪などジュエリーとして利用されている。そして金と大きく違うのは、工業用として自動車の排気ガスを浄化する触媒等としても利用されており、今後水素燃料電池の電極触媒としての使用が増える見込みだ。
自動車の需要が60%を占めており、プラチナ価格は自動車の生産量に左右されやすい面がある。そして、金が様々な国から産出されるのに対し、プラチナは南アフリカが73%も占めていることから、南アフリカ共和国の政治経済の影響を受けやすい。
プラチナの有史以来の生産量は、約5,100トンと金の約17万トンと比べてもその30分の1しか生産されておらず、さらに精錬が金より難しいため精錬コストも高く、希少価値が金よりも高い。そういった経緯からもともとジュエリーでも金より価値が高かったが、金への投資が増え金価格を下回っている状態が常態化している。
■銀
銀の用途は様々で、ジュエリーはもちろんのこと、電気関係製品や自動車のシールド、工業製品、最近では太陽光電池での利用による需要が増えている。金価格より価格が低く、価格変動幅が大きい。
これまで採掘された量は100万トンあり、金の約5倍。毎年の採掘量も金の約8倍あり、プラチナや金のような希少性はないが、加工のしやすさ、熱伝導率の高さから、プラチナ同様工業用の用途の割合が高い。工業用の割合が大きいことから、景気変動の影響を受けやすい。
銀の地球に残されている埋蔵量は約40万トンで2040年頃には枯渇する可能性がある。銀は加工のしやすさから工業用として必須の資源で、リサイクルが進んだとしても枯渇すれば希少性が高くなる可能性がある。
最近の貴金属の価格動向
金はそもそも現金の代わりになる安全資産としてみられている。そのため、戦争や株価暴落などの社会不安が起きると買われていた過去がある。ただ、金には現金と異なり金利が付かないことから(現金は銀行に預けると利息を受け取れる)、景気回復し金利が上昇すると下落要因となる。2020年3月の新型コロナ感染症拡大により急落し0.318%まで下落した米国長期金利は、直近2021年3月には1.625%まで上昇した。2020年8月まで史上最高値を付けた金価格は米国長期金利の上昇とともに下落基調となっている。
景気に左右されるプラチナ価格は、新型コロナ感染症拡大により急落し価格が戻ってきたものの、金と較べると軟調であった。景気回復を示す米国経済指標やバイデン政権による大型経済対策、車生産の急回復により価格が上昇している。
銀は、プラチナ同様新型コロナ感染症拡大により急落し価格が戻り、さらに2021年2月には米国個人投資家がSNSで連携して銀に投資し空売りをかけているヘッジファンドに買い戻しを迫り、急騰している。
個人が資産形成するのに貴金属へのコツコツ投資がおすすめ
貴金属投資をする際にまず思いつくのが、ゴールドバーといわれる金の延べ棒や金塊ではないでしょうか。ゴールドバーの金額は1kg700万円弱と高額で、また盗難リスク、一括で購入することの高値掴みリスクも懸念されます。
そこで、毎月コツコツ長期で積立投資するのがおすすめです。貴金属価格は大きな価格変動があるもののコツコツ時間分散をして高いときも安いときも買うことで取得単価を引き下げます。また、限りある資源であるからこそ、価値はいずれ上がっていくものと考えると長期資産形成に適しているものと考えられます。
貴金属に積立できる会社として以下をご紹介します。
■田中貴金属工業
1885年創業の130年以上の歴史のある貴金属会社。
毎月の積立金額を営業日数で割って毎日購入する仕組。
買付手数料は1.5~2.5%で、月々3,000円以上から金・プラチナ・銀に積立可能。積立購入を一時休止する場合その間年間1,320円の口座管理料がかかる。売却はいつでも可能で、売却手数料は無料(売却価格と買付価格の差額があることで手数料が含まれている)。引き出し、コインでの引き出し、またはアクセサリーにすることもできる。
■三菱マテリアル
三菱グループの貴金属会社。
年会費は880円だが、オンライントレードで残高報告書等郵送物停止手続を行えば無料。
毎月の積立金額を営業日数で割って毎日購入する仕組。
買付手数料は2.6~3.1%で、月々3,000円以上から金・プラチナ・銀に積立可能。ボーナス月にプラス積立するときは買付手数料無料。売却はいつでも可能で、売却手数料は無料(売却価格と買付価格の差額があることで手数料が含まれている)。引き出し、コインでの引き出しが可能。
三菱マテリアル(5711)の株主だと、取引手数料が割引になる株主優待がある。
貴金属会社での積立をご紹介しましたが、実物に貴金属と交換予定がないという方はネット証券の方が手数料が安く積立することができます。SBI証券(金・銀・プラチナ)、楽天証券(金・プラチナ)、マネックス証券(金・プラチナ)で積立が可能となっています。
また、貴金属価格に連動する投資信託やETFへ投資するという方法があります。
[NISA][iDeCo][ポイント投資]で着実に増やす!
おひとりさま女子の堅実投資入門
「結婚したいけど、もししなかったら……?」「シングルの人生を謳歌したいけど将来は……」「今の夫と別れたら……」そんな漠然とした不安を抱えている女性は多いと思います。時代の変化も激しいので未来のことはどうなるかわかりません。ですが、備えあれば憂いなしです。将来のために今できるコトからコツコツ着実に進めてみてはいかがでしょうか? 本書ではFPとしてライフプラン作成、家計見直し、資産運用等のアドバイスを手がける大堀さんが投資信託、iDeCo、ポイント投資に絞って解説。 オススメです!
文/大堀貴子
フリーライターとしてマネージャンルの記事を得意とする。おおほりFP事務所代表、CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。