少し前に大きなブームを巻き起こした「サラダチキン」。今も「おうちごはん」食材の一つとして、もてはやされている。
「サラダチキン」にかぎらず、鶏むね肉が安定した人気を誇るのは、安価な低脂肪・高タンパク食というのが大きい。
反面、パサパサするとか、味が淡泊で飽きやすいというデメリットがある。Twitterで「#サラダチキン飽きた」というハッシュタグが踊るくらいだから、同じ思いの人は結構いるのだろう。
鶏むね肉が毎日でも食べたくなる
鶏むね肉のそうしたデメリットは、工夫によって解消できる―そう説くのは、料理研究家・管理栄養士の藤井恵さんだ。
「調理の仕方次第で、驚くほどふっくらジューシーに。また、もともと味が淡泊な分、クセがないので、調味料や食材の組み合わせによって和洋中からエスニックまで、いろいろな料理に使えてバリエーションも楽しめます。調理方法や味つけ、食材をプラスすることで、ぐっとおいしくなるのです」
藤井さんは、著書『プラスでおいしく! 鶏むね88レシピ』(扶桑社)の前書きで、こう述べている。
例えば、「パサパサする」という問題については、繊維を断ち切るようにそぎ切りにする、粉・衣をつけて調理して水分を閉じ込めるといったやり方があるという。「淡泊でものたりない」という点については、しっかりもみ込んで下味をつける、衣にハーブや調味料を加える、コクのある食材を組み合わせるなど、解決法を提示。そのコツを生かしたレシピを多数掲載している。
参考までに、本書にあるレシピを3つ紹介しよう。
「鶏の塩から揚げ」
藤井さんがすすめるパサつき防止法の一つに、「マリネする」というのがある。これは、下準備として調味液に漬けておくことで、保水とコーティングの効果が出てパサつきを防げるというもの。「鶏の塩から揚げ」では、塩麴がその働きをする。
【材料(4人分)】
・鶏むね肉:大2枚
・塩麴:大さじ4
・A-卵(溶きほぐす):1個、ニンニク(すりおろす):少し
・片栗粉:大さじ5
・揚げ油:適量
・サラダ菜:適量
【つくり方】
1 鶏肉は大きめのひと口大のそぎ切りにし、保存用ポリ袋に入れる。塩麴を加えてもみ混ぜ、15分ほどおく。
2 ボウルに1を移してAを加えてよく混ぜ、片栗粉をまぶす。
3 揚げ油を160℃に熱して2を入れ、2分揚げ、上下を返してさらに2~3分揚げる。最後に少し温度を上げ、こんがりと色づくまで揚げる。
4 器に盛り、サラダ菜を加える。
「鶏肉とセロリの香味炒め」
鶏むね肉の淡泊なものたりなさを、ニンニクとショウガでカバーしたのがこちら。セロリの香りとキクラゲの食感もアクセントに加えている。
【材料(4人分)】
・鶏むね肉:2枚
・セロリ:2本
・A-しょうゆ、酒、片栗粉:各小さじ1
・ニンジン:1/4本
・キクラゲ(乾燥):10g
・サラダ油:大さじ11/2
・B-ニンニク、ショウガ(各みじん切り):各1かけ、長ネギ(みじん切り):10cm
・C-しょうゆ:小さじ2、塩、みりん、ゴマ油:各小さじ1
【つくり方】
1 鶏肉は5mmの厚さのそぎ切りにし、Aをもみ込む。セロリは小さめのひと口大の乱切りにし、ニンジンは千切りにする。キクラゲは袋の表示どおりに水で戻し、食べやすい大きさに切る。
2 フライパンにサラダ油大さじ1を中火で熱し、1の鶏肉を入れて4~5分炒める。残りのサラダ油をたし、Bを加えて香りが立つまで炒める。
3 1のセロリ、ニンジン、キクラゲを加えて炒め、混ぜ合わせたCを加えて炒め合わせる。
「鶏肉とカブのクリーム煮」
「粉をまぶす」のは揚げ物では欠かせない手順だが、鶏むね肉については、それ以外の料理でもパサパサ感を出さないために有効。この「鶏肉とカブのクリーム煮」では、小麦粉を使う。また、牛乳はコクをプラスしてくれる。
【材料(4人分)】
・鶏むね肉:2枚
・カブ:4個
・A-塩:小さじ1、コショウ:少し
・小麦粉:適量
・タマネギ:1個
・ニンジン:1本
・サラダ油:大さじ1
・水:1カップ
・白ワイン(または酒):大さじ3
・B-牛乳:11/2カップ、片栗粉:大さじ1
・C-バター:20g、塩:小さじ1/2、コショウ:少し
【つくり方】
1 鶏肉はひと口大のそぎ切りにし、Aをもみ込み、小麦粉をまぶす。
2 カブは茎を2cm残して4つ割りに、タマネギはひと口大に切る。ニンジンはひと口大の乱切りにする。
3 フライパンにサラダ油を中火で熱し、1を入れて両面をこんがりと焼く。
4 2と分量の水、ワインを加えてフタをし、中火で7~8分煮る。
5 Bを合わせた牛乳溶き片栗粉を加え、混ぜながら煮立たせる。さらにCを加え、ひと煮立ちさせる。
このように、藤井さんのレシピは、ほんのひと手間かけるだけで、鶏むね肉が劇的においしくなるものばかり。おうちごはんの新たな定番として、くわえてみてはいかがだろう。
藤井恵さん プロフィール
料理研究家、管理栄養士。女子栄養大学卒業後、料理番組講師のアシスタントを経て、料理研究家に。手軽につくれて、見栄えもよい料理に定評街あり、雑誌、テレビを中心に活躍中。幅広い層から人気を集める。『藤井弁当‐お弁当はワンパターンでいい!』が第7回料理レシピ本大賞【料理部門】準大賞を受賞。近著に『身体に優しい長生きスープ』(扶桑社刊)、『居酒屋 ふじ井』(永岡書店刊)などがある。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)