音楽とともに生きてきた。
ちょっと大げさかもしれないけど、
そう思っている人って、結構多いのではないか。
振り返れば、私の日常は、
いつも音楽で包まれていた。
マイケル・ジャクソン『Bad』に合わせて、
身体を上下に動かしている1歳の私の映像が、
ホームビデオに残っている。
歩くよりも喋るよりも先に、
音楽に合わせて踊ることを覚えたようだ。
小学生の頃は、よく家族でクルマに乗って出かけた。
〝山へ行こう、次の日曜〟
ドリカムの『晴れたらいいね』を歌いながら窓を開けて、
麦わら帽子が飛ばされないように、遠くの山々を眺めていた。
中学時代の修学旅行では、帰りのバスの中で、
古内東子『大丈夫』が流れてきた。
大人の恋って、今知っているこの気持ちとは、
また違うものなのかしらと、
誰かの顔を思い浮かべながら、ぼんやり考えた。
キャンパスライフに憧れて、
予備校に通いながら聴いたあの曲にも、
採用試験を受けに行く時、
地下鉄の駅の長いエスカレーターで、
必ず聴いていたあの曲にも、
その時その時の気持ちが、一緒に刻まれている。
どんなに時間がたっても、
聴けば、すぐに蘇ってくる。
生まれる前の名曲も、最新のヒット曲も、
すぐに探すことのできる便利な世の中になったけど、
ひとつひとつの音楽との出会いは、変わらず奇跡だと思う。
お気に入りの服で家を出た、よく晴れた朝も、
仕事で失敗をしてしまった、冷たい雨の夜も、
音楽があれば、ドラマチックな場面になる。
自分の人生が、一本の映画だとしたら、
その主役も、監督も、脚本家も、常に自分だ。
それぞれのシーンに必要なBGMは、
いつだって自分で選びたい。
これからもずっと、
音楽とともに生きていくのだと思う。
写真は、実家に置いてきたカセットとMDの山。
今の若い子は、知らないのかなぁ。
Natsumi Uga
テレビ朝日アナウンサーを経て、2019年からフリーとして活動。現在、『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)、自身初の冠番組『川柳居酒屋なつみ』(テレビ朝日)、『テンカイズ』(TBSラジオ)、MCを務める『土曜はナニする!?』(関西テレビ・フジテレビ系)などに出演中。
文/宇賀なつみ
※「宇賀なつみ 素顔のままで」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME4月号に掲載されたものです。