1985年にユタ州ソルトレイクシティで起こった、3件の爆破事件。狙われたのは、いずれもモルモン教の古文書取引に関わっていた人物だった。
Netflixで2021年3月3日より独占配信中のNetflixオリジナルシリーズ『モルモン教徒殺人事件: マーク・ホフマンのいびつな執念』(全3エピソード)では、事件関係者の証言や当時の映像記録などを中心に、奇妙な事件の全貌を解説している。
あらすじ
1985年、“モルモン教の聖地”ユタ州ソルトレイクシティで3件の爆破事件が発生し、3名の死傷者が出た。
被害者は全員、モルモン教の古文書取引に関わっていた人物。その中には、モルモン教の歴史を覆す大発見をした“モルモン教古文書界のインディ・ジョーンズ”ことマーク・ホフマンもいた。
他の2名は死亡し、ホフマンのみが大けがを負いながらも一命を取り留めた。
高値で取引されていた古文書には、モルモン教の教会で教えられてきた教義と矛盾する記載があり、信者の間では物議を醸していた。
事件発生直後は、宗教上の怒りか金の恨みによる犯行と思われていた。しかし警察の捜査で判明した真相は、予想の斜め上を行くものだった。
見どころ
以前ご紹介した『猫イジメに断固NO!:虐待動画の犯人を追え』『ナイト・ストーカー:シリアルキラー捜査録』『事件現場から: セシルホテル失踪事件』など、Netflixには見ごたえがあり学びになるオリジナルドキュメンタリーが揃っている。
本作のタイトルだけを見ると宗教的な、特殊な内容に思えるかもしれないが、実は非常に普遍的なテーマとなっている。今回はモルモン教という宗教がたまたまターゲットになっただけで、まったく同じ動機で別の団体や人間が狙われても不思議ではない。
動機のベースは個人的な憎悪であったが、歪んだ承認欲求や優越感も少なからず混じっていたようだ。
宗教にしても有名人にしても、大勢の人々から支持され注目を集める存在というのは、承認欲求を満たせず社会の片隅でくすぶっている人間にとって格好のターゲットなのかもしれない。
自分自身の才能や魅力では成功できなくても、成功者や人気者、そして神秘的で超越的な存在などにうまく便乗すれば、一瞬で時の人になれる。
そしてこのような人間にとって、他者は自分の目的を達成するためのツールでしかない。
近年では“SNS中毒”“いいね中毒”が問題視されているが、他者からの注目と承認に飢えている人間は昔から本当に多いのだと改めて感じた。
社会的動物である人間は、お金と食べ物さえあれば生きていけるというわけではないのだ。事件の詳細は、ぜひNetflixでチェックしてほしい。
Netflixオリジナルシリーズ『モルモン教徒殺人事件: マーク・ホフマンのいびつな執念』
独占配信中
文/吉野潤子