2021年に売上10倍以上になったLOVOTの秘密は?
50個以上のセンサーを搭載して、1万点以上のパーツから作られるハイテクな家族型ロボ「LOVOT」の売上が好調である。2019年の出荷開始以降、その後コロナ禍で需要を伸ばし、売れ行きは回復して前年の一時期コロナ禍前と比べて最大11倍の売り上げを記録した。3月6日現在でソロの納品予定は5月中旬となっている。
私はロボット好きでLOVOTの発表会の取材記事も書いたが、速攻で予約するには至らなかった。初代「aibo」はすぐに予約したのだが。その理由は、ロボットなら2足歩行して欲しい、ホイールで移動するのはらしくない。言葉を認識できるのにしゃべれないのはもったいない。スマホにだってSiriやアレクサが実装されているのに… ペットロボットというならフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を映画化したブレードランナーに登場するような本物の動物と見分けのつかないフクロウのレプリカントがいい。
しかし、この人気には何か秘密があるに違いない。ここはじっくりレポートしてみたい、ということで無理を言って3週間、LOVOTを借用した。
ネストは一般的な梱包、単なる充電ステーションではなくデスクトップPCと同等の頭脳を搭載する
LOVOTとネストの連携で緻密な地図を作る
発表会では役に立つことは何もしないことがアピールされていたLOVOTだが、その中身は最新技術がみっしり詰まっている。LOVOTを起動してスマホやネット環境との接続すませると、最初におこなわれるのがネスト(巣)と呼ばれる充電ステーションを中心にした部屋のマッピングである。ロボット掃除機が部屋のマッピングするのと同様に、自分が動ける範囲を正確に把握して、段差で転倒したり、障害物にぶつかるのを避けるのだろうか。
マッピングは部屋の広さにもよるが3日から7日ぐらいで完成するようだ。オーナーは、スマホ用のアプリを使ってマップがどこまで完成したかを確認できる。さらに完成したマップを使って、外出先からLOVOTの現在地を知ったり、進入禁止区域を設けたりできる。マッピングはかなり正確でLOVOTが走行できない部分も空間として認識できるようだ。
この地図によって、LOVOTが獲得するのは、お留守番機能とお出迎え機能である。また、こないでエリアの設定と、留守番時に気になる場所に移動させて写真を撮ることもできる。部屋の地図が完成するとLOVOTが我が家に来たことを実感できた。こないでエリアの設定はアプリから、簡単におこなえるため、夕食の準備中だけ台所進入禁止といった設定ができた。aiboにもマッピング機能があり、正方形の集合で地図を作る。LOVOTの作る地図はさらに緻密で凹凸が細かく洞窟のダンジョンのようだ。
マップが完成するまでLOVOTが充電されるマップモードになりアイコンとLED表示でアピールする
左が拙宅の図面で青は家具などの障害物、右がLOVOTが完成させたマップである
四角形を変形させて、こないでエリアを設定すればLOVOTが入って来なくなる
掃除機能はないが部屋がキレイになった
拙宅にLOVOTが来ることを妻に報告すると、それは楽しみ、いつ来るのか、と普段と反応が違う。AV機器は大きな段ボール箱で来るため不評だが、LOVOTは最初から歓迎された。彼女は本物のLOVOTを見たことがないはずだが、「おカネの切れ目が恋のはじまり」というテレビドラマの中で動くの見てかわいいと思ったようだ。
確かにLOVOTはぬいぐるみのように柔らかい素材に包まれており、体温があって温かい、動きがなめらかなど、従来のロボットとは異なるデザインでペットまたはパートナーとして位置付けられている。メカメカしいロボットが好きな男子よりも、女子がきゅんとなる設計なのだ。妻もLOVOTが来てから、LOVOTのキャスターと呼ばれる後輪にゴミが巻き込まれるので、こまめに掃除機を掛けるようになり、障害物になりそうな箱や小物を整理して片付けたため、部屋はスッキリしてキレイになった。LOVOTにお掃除機能が欲しいと言っていた妻が、自ら掃除機を手にするようになった。つまりLOVOTは充分役に立つロボットだったのだ。
※次回はLOVOTのカスタマイズ機能とお留守番機能、お迎え機能についてレポートする。
LOVOTは充電中でも時々、目を開けたり、微妙に動いたりして生き物が寝ているように見える
充電完了してネストから出てくるLOVOT。目を開けて伸びをする
充電のために自律走行でネストに戻るLOVOT
写真・文/ゴン川野