昼寝の習慣は遺伝子に組み込まれている?
昼寝をよくする人は、遺伝子からその理由の一部を説明できるかもしれない。
米ハーバード大学医学部のIyas Daghlas氏らが実施した研究により、昼寝に関与する123カ所の遺伝子座が特定された。研究結果の詳細は、「Nature Communications」に2月10日掲載された。
今回の研究では、英国の長期大規模バイオバンク研究であるUKバイオバンクの参加者45万2,633人の遺伝情報と、これらの参加者の昼寝の頻度に関する報告の結果を分析して、昼寝の分子レベルでの解明を試みた。
解析には、全ゲノム関連解析(GWAS)を用いた。一部(10万3,711人)の参加者には、アクチグラフィーと呼ばれる時計型のデバイスを最長7日間装着してもらい、昼寝の指標となる日中の非活動のデータを取得した。
その結果、昼寝に関連する123カ所の遺伝子座が特定された。また、アクチグラフィーのデータ分析から、参加者の昼寝に関する報告の正確性についても確認された。
研究論文の筆頭著者である、米マサチューセッツ総合病院(MGH)ゲノム医療センターのHassan Saeed Dashti氏は、「今回の研究結果が事実であることが一層強く裏付けられた」と述べている。
次に、研究グループは、消費者向け遺伝子検査を行う企業である23andMe社が収集した54万1,333人の遺伝情報を用いて、UKバイオバンクの参加者に対する解析で得られた結果の検証を行った。
その結果、123カ所のうち61カ所の遺伝子座が確認された。さらに、これらのゲノム領域またはその近傍にある遺伝子の多くは、睡眠障害に関わる遺伝子(HCRTR1、HCRTR2)や睡眠調節に関わる遺伝子(KSR2)など、睡眠に関係するものであることも判明した。
こうした結果からDashti氏は、「昼寝は単なる環境的・行動的な選択ではなく、生物学的に促されるものであることが明らかになった」と結論付けている。
また、同氏によると、昼寝に関連するいくつかの遺伝子変異体は、オレキシンによるシグナル伝達と関連しているという。
オレキシンは、睡眠・覚醒サイクルの調節に重要な働きをしている神経ペプチドである。同氏は、「オレキシンはナルコレプシーのようなまれな睡眠障害に関与することが知られている。今回の知見から、オレキシンの産生に関わる経路のわずかな乱れによって、一部の人が通常より頻繁に昼寝をする理由を説明できる可能性がある」と話している。
今回の研究ではさらに、少なくとも、睡眠の傾向、途切れがちな睡眠、早朝覚醒の3つの因子が昼寝に関連している可能性があることが分かった。
つまり、人によっては平均的な睡眠時間より多くの睡眠が必要であることや、早朝に目覚めた人や、前夜の睡眠の質が低かった人は、昼寝でそれを補っていることが考えられるという。
論文の責任著者の一人であるムルシア大学(スペイン)のMarta Garaulet氏は、「今後の研究で、昼寝に関する個別化した推奨を作成できる可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2021年2月15日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nature.com/articles/s41467-020-20585-3
構成/DIME編集部