「PA(Parking Area)」「ATM(Automatic Teller Machine)」など、複数の英単語から成り、それぞれの言葉の頭文字を取った略語のことを「頭字語(とうじご)」と呼ぶ。ビジネス用語や特定分野の専門用語によく用いられ、同じ頭字語でも使う場所が変わると意味がまったく違うことも珍しくない。
本記事では、そんな言葉の一つ「ST」について、さまざまな業界や日常生活の中でどういった意味で用いられているのかを紹介する。
医療・建築・ITなど、それぞれの業界で使われているSTとは?
最初に紹介するのは、建築や医療、IT業界で使われる「ST」。どれも専門的な意味合いが強い用語で、元になっている言葉もさまざまだ。
医療・看護用語のSTは言語聴覚士や心電図の一部分を表す
英語やドイツ語由来の専門用語が多い医療業界では、STは複数の意味で使われている。心電図検査の際のSTとは、心電図の波形の一部の名前で、S波の終わりからT波の始まりの部分を指す。心筋梗塞や狭心症、心膜炎などの場合はこの部分に異常が見られる。
下肢静脈瘤の治療に用いられるSTは、静脈瘤の中に特殊な薬剤を注入して血管をふさぐ「硬化療法(Sclerotherapy)」のこと。
また、リハビリテーションに関連する言葉として、ST、OT、PTがよく使われるが、この場合のSTは「言語聴覚士(Speech Language Hearing Therapist)」を指し、病気や障害により話すことや食べることが難しい人をサポートする専門職。ちなみに、OTは作業療法士、PTは理学療法士の意味。
建築業界では陳列台や陳列ステージの意味
建築業界においても、STはさまざまな意味で使われる。材質としてのSTは「スチール」を指し、店舗図面ではstage、つまり「陳列を行う什器」を表す図面記号のこと。大文字でSTと記されている場合は陳列台、Stと表記されている場合は陳列ステージを表している。その他にも「階段(stair、step)」や、スクールタフライトと呼ばれる「学校用の強化ガラス」もSTと表記される。
IT業界におけるSTはシステムテストのこと
IT用語でSTはシステムテスト(system test)のことを表す。システムテストとは、システム開発の一環として行われる動作テストのことで、開発の最終段階で行われることが多い。総合テストとも呼ばれている。
実際に使用する状況と同じ設定で行い、システムやソフトウェアが仕様書の通りに動作するか、求められている機能、性能を満たしているかを確認し、開発段階では発見できなかった不具合や実際の動作環境との適合性もチェックする。
セキュリティテストや性能テストなど、システムテストは検証する項目によりいくつかの種類に分かれ、システムの規模によっては実行するために膨大な時間やコストがかかる。そのため、納期によってはシステムテストを省略する場合もあるが、テストを事前に行っておくことでシステム全体の品質も向上し、運用後のメンテナンスもしやすくなる。
身近な場面でも使われているST、どんな意味を持つ?
次に、ビジネス以外の分野で使われるSTについて紹介していこう。サッカーや学校の時間割など、身近な場面の用語としてもさまざまな用途で使用されている。
サッカーのポジション セカンドトップ
サッカー用語でSTは「セカンドトップ」というポジションを表す。セカンドトップとはフォワードに分類されるポジションで、センターフォワード(CF)よりも少し下がった位置に置かれ、ゲームの流れを見てパスやドリブルでチャンスメイクをしたり、自らゴールを決めたりする役割を持つ。
サッカー界のスターであるリオネル・メッシもSTの選手として有名だ。また、同じポジションをSS、シャドウストライカーと呼ぶこともある。
パチンコのSTはスペシャルタイム
パチンコの定番システムとして知られるSTは、「スペシャルタイム」の略。現在普及しているパチンコ台の多くがこのSTシステムを搭載している。
スペシャルタイムは、確変、つまり大当たりの確率がアップする確率変動の一種で、一度当たりが出た後、機種ごとに設定された回転数を消化するまでは確変の状態が続くこと。例えば、「ST100」なら大当たりの後に100回転するまでは確変状態が維持され、この間に当たりが出なければ確変は終了する。
ちなみに、STではない普通の確変との違いは、確変の継続に回数制限があるかどうか。普通の確変の場合は、回転数に関係なく次回の大当たりまで確変状態が継続される。
学校の時間割、STは何の時間?
学校の時間割で、HRのように伝達事項や点呼を行う時間のことをSTと表記している場合がある。「ショートタイム」や「ショートホームルーム」の略として用いられており、HRよりは短い時間であることが多い。
また、一部の学校では生徒同士が勉強を教え合う制度を導入していることがあり、その場合に教師の役割をする生徒、Student Teacherの略語としてSTという言葉が使われ、「ST勉強会」のように表記されている。
文/oki