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『思う』と『想う』の違いをご存知でしょうか?『思う』は幅広いケースで使えるのに対し、『想う』は感情を込めたい場面で使います。適切に使い分けることで、表現の幅がより広がるでしょう。両者の意味の違いを解説し、その他の『おもう』も紹介します。
「思う」と「想う」の違い
『思う』と『想う』は、考える対象への気持ちの大きさが違います。単に頭や心で考えるときに使うのが『思う』、より感情を込めたいシーンに適しているのが『想う』です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
「思う」は頭・心で考えること
『思う』は、広い意味での『主観的・感情的な心の働き』として使う汎用性の高い言葉です。単に頭で考えたり、心に感じたりすることを意味します。
『思索』『思考』『思案』『思慕』などの熟語があるように、考えを巡らせたり細かく考えたりする意味で使うことも特徴です。以下に挙げる例文のように使います。
- 今日は夕方から雨が雪になると思う
- 脱サラして新しく事業を立ち上げようと思う
- 誰からも縛られず、思うままに生きる人生でありたい
「想う」は心で考えること
物事や人に対して『特別な感情を抱く』ときには、『想う』を使用します。『想像』『感想』『予想』『発想』などの熟語があるように、思うに比べてより積極的に心を働かせるイメージです。
考える対象に気持ちを込めたい場合は、想うを使うのがふさわしいでしょう。例文をいくつか紹介します。
- 何十年も東京に住んでいると、故郷を想う気持ちがより強くなっていくものである
- あなたのことを想うと夜も眠れない
- 日々忙しく過ごすばかりではなく、かつての楽しかったことを想い、懐かしさに浸る時間も大事だ
「思う」と「想う」の使い分け
『思う』と『想う』を適切に使い分けられれば、表現の幅をより広げられます。それぞれの意味の違いをきちんと理解し、文章作成の際に役立てましょう。
「思う」は幅広い意味に使う
汎用性の高い『思う』は、幅広い意味として使えます。考えたことや感じたことを表現する、ほとんどのケースで使用可能です。
新聞や公用文でも、常用漢字である『思う』が使われます。『想』は『ソウ』の音読みのみが常用漢字であり、『おも‐う』という訓読みは常用漢字の読み方として認められていません。
『想う』がふさわしい場面でも、新聞や公用文では『思う』が採用されています。
また、考える対象となる物事や人に感情が込められていても、『おもう』こと自体が主観的な意見なら、選ぶべき漢字は『思う』です。『彼のことを想う』と『彼は素敵だと思う』の違いを理解しましょう。
「想う」は感情を込めるときに使う
単に考えることや願うことを表す『思う』と違い、『想う』は特別な感情を込めるときに使う言葉です。
『思う』に比べて使用頻度は低くなりますが、『思う』と『思う』の違いを理解して使い分けられれば、表現の幅がぐっと広がります。
愛する人や大事な家族、大切にしたい生まれ故郷など、感情を大きく動かす対象は人によってさまざまです。自分にとって特別な存在である人や物事に対してより強い気持ちを表したいケースでは、積極的に『想う』を使いましょう。
『想う』は、小説・詩・歌詞などの創作文で使う言葉としても適しています。『思う』と上手に使い分けることで、登場人物の感情をより豊かに表現できるはずです。
知っていたらすごい!その他の「おもう」
『思う』や『想う』以外にも、『おもう』と読む漢字にはいくつかの種類があります。それぞれの意味や使い分け方を解説します。
「念う」
『一心におもう』『一途におもいを込める』『心に留め続ける』といった意味を持つ言葉が『念う』です。
『信念』『執念』『念願』などの熟語があるように、強い気持ちを表現する際に使われます。使い方を確認しておきましょう。
- なかなか実家に帰れず墓参りもできないため、1日1回は先祖を念うように心掛けている
- 彼女が一生懸命に頑張っている姿を知っているから、私も彼女が成功するようにいつも念っている
- おみくじの『願望』に書かれている『念うに任せない』とは、物事がうまくいきにくいという意味である
「懐う」
『懐かしい』の漢字を使う『懐う』は、『しみじみと感じる』『いつまでも心に留めておもい慕う』という意味の言葉です。
関連した熟語には『述懐』『懐古』『懐疑』などが挙げられます。以下の例文で使い方をチェックしてみましょう。
- 遠く離れた異国の地から、日本に住む年老いた両親のことを懐う
- ニュース番組でふと流れた田舎の風景を見た後、しばし故郷への懐いにふけった
- 天末にて李白を懐う(罪を犯し遠くに流された李白をおもい、杜甫が詠んだ詩)
「憶う」
『憶う』は、『記憶』『憶測』『追憶』などの熟語にある『憶』を使った『おもう』です。『心に留めて忘れない』『おもいやる』『推し量る』といった意味を持っています。用例は以下のとおりです。
- 毎日のように彼女と楽しく過ごしたあの頃のことを憶う
- 亡き父への憶いをつづった作文が、校内で実施されたコンクールで最優秀賞に選ばれた
- 仲の良い高校時代の同窓生を集めて、「鈴木先生を憶う会」を開催しようと考えている
構成/編集部