『国士無双(こくしむそう)』とは、国内に並ぶ者がいないほど優れた人を指す言葉です。意味をしっかりと理解しておけば、会話の中で上手に使えたり、話の流れを正確に捉えたりできるでしょう。国士無双の意味や語源、似た意味の言葉を解説します。
「国士無双」の意味
『国士無双』は、故事成語と麻雀用語の二つに分けられます。それぞれの具体的な意味を押さえておきましょう。
並ぶ人がいない、優れた人物のこと
国士無双とは、国内に比べる人がいないほどの優秀な人物を指す故事成語です。『国士』は国への忠誠心が強い人物や国で最も優れている人物を、『無双』は二人といないただ一人の状態を意味します。
国内トップレベルの実力を持つスポーツ選手や、グローバルに活躍するビジネスマンを称する言葉として、国士無双が使われるシーンが多いでしょう。
『国内には張り合える相手がいない』と賞賛するときに、褒める意味で用いられる言葉です。
世の中に肩を並べる者がいない人を指す無双は、イメージを派生させてさまざまなシーンで使われています。例えば、『無双状態』『無双する』は、近年流行しているインターネット用語です。
麻雀の役満の名称
麻雀を楽しむ人なら、役名としての『国士無双』の方がなじみ深いでしょう。麻雀の最高役である『役満』にはいくつかの種類があり、その一つが国士無双です。
13種類の特定牌をそろえて上がると、国士無双が成立します。四暗刻や大三元と並び、比較的成立させやすい役満の種類としても知られている役です。
かつては別の名称で呼ばれていましたが、現在は国士無双で定着しています。最後に待つ牌が13種類のどれでもよい状態から上がれば、さらに格の高い純正国士無双が成立します。
比喩として使うことも
麻雀の役満にはさまざまな種類があり、役満ごとに難易度も異なります。
国士無双は比較的成立させやすい役満ではあるものの、役満自体が珍しい役であるため、滅多に見られないことの比喩として使われることがあります。
国士無双は、13種類の牌をそろえて成立させる役満です。そのため、滅多に起こらないことが同時に発生したときなどに『国士無双が成立した』という比喩表現を使えます。
ただし、麻雀を知らない人にとっては、何のことを言っているのか意味が分からないでしょう。比喩表現を使う際は、相手やシーンを選ぶ必要があります。
「国士無双」の由来とその使い方とは?
国士無双は、古代中国の故事から誕生した四字熟語です。言葉の由来や使い方について解説します。
故事から生まれた四字熟語
国士無双は、中国の歴史書『史記(しき)』の中で、大将軍『韓信(かんしん)』を評した表現が言葉の由来です。
後に前漢の初代皇帝となる劉邦(りゅうほう)に、臣下の蕭何(しょうか)が韓信を推薦した際、国士無双の人物であると評しています。
蕭何の進言が聞き入れられ、劉邦に大将軍として任命された韓信は大きな戦果を挙げました。劉邦が天下を取り、前漢の初代皇帝となるにあたり、韓信は多大な貢献をしたのです。
この故事で使われている国士無双が、現在の四字熟語として意味もそのままに残っています。なお、韓信は『背水の陣』の由来となった故事にも登場する人物です。
国士無双を使った例文
国士無双は、国内で最も優れた人材を賞賛する意味の言葉です。文章内で使う場合は、以下に挙げる例文を参考にしましょう。
- 国際的なテニスプレイヤーとして活躍している彼は、国内では敵なしの状態で、まさに国士無双の選手であるといえるだろう
- 非常に優れた塗装技術を持っている君は、業界では国士無双だと思っている。先日の台風で被害を受けた文化遺産の復旧を手伝ってもらえないだろうか
あくまでも『国内』において優れた人物であることなので、使い方には注意が必要です。後述する天下無双と比べ、スケール感は劣ります。
「国士無双」の類語
国士無双と似た意味の言葉に、『天下無双』『蓋世不抜』があります。それぞれの意味や、国士無双との違いを理解しましょう。
「天下無双」
この世に二つとないほど優秀な人物を指す言葉が『天下無双(てんかむそう)』です。国士無双と同様に、史記を語源としています。
天下とは空の下を意味するため、天下無双は全世界において優れた人材を指します。あくまでも国レベルで優秀な人を称する国士無双と違い、天下無双は世界トップレベルの人に使えることがポイントです。
文章内で使う場合は、国士無双と同様の使い方ができます。スポーツやビジネスで世界的に優れた能力を持つ人に対し、圧倒的な記録や実績を賞賛する言葉として用いるとよいでしょう。
「蓋世不抜」
『蓋世不抜(がいせいふばつ)』とは、性格や能力が非常に優れている様子を指す言葉です。蓋世は世の中を蓋(おお)うほど優れていることを、不抜はしっかりと安定していることを意味しています。
世界を圧倒できるほどの性格や才能を持っているという意味では、天下無双と同様のスケール感を備えた言葉です。以下に例文を紹介します。
- 彼は蓋世不抜の能力をいかんなく発揮し、今や世界に名をとどろかせるビジネスマンだ
- 蓋世不抜の大人に育ってほしいという子どもへの思いは、多くの親が抱く願望といえるだろう
構成/編集部