ホンダの小型ファミリーカー「シビック」。
1973年12月13日に発売された初代ホンダ「シビック」や、
1979年7月24日に発売された2代目ホンダ「シビック」は共に、経済性を重視した大人しめのコンパクトカーだった。
3代目ホンダ〝ワンダーシビック〟はスポーティな装い
オイルショックの影響から復調の兆しを見せ始めた1980年代、自動車業界はスポーティでパワフルな新車を続々と登場させていった。
そんな中、1983年9月22日にホンダは、「シビック」のフルモデルチェンジを発表した。
3ドアハッチバック、4ドアセダン、5ドアそれぞれが、従来のやや鈍重なイメージを払拭する、1980年代にふさわしいシャープでスポーティなスタイルで登場。新時代の幕を開けた。
ホンダ「シビック」3ドアハッチバック25i
ホンダ「シビック」4ドアセダン35i
ホンダ「シビックシャトル」5ドア55i
ついにDOHC16バルブエンジンを搭載。走りのホンダが帰ってきた!
そしてホンダはシビックに、DOHCエンジンを搭載することを決定。〝ワンダーシビック〟はコンパクトカーを代表するスポーツモデルへと進化していく。
名機「ZC」型エンジンがワンダーシビックのスポーツイメージを決定づけた
1984年10月24日、ホンダは3代目ホンダ「シビック」と兄弟車ホンダ「バラードスポーツCR-X」それぞれに、1590ccDOHC16バルブエンジン=ZC型を搭載することを決定した。
ホンダ「シビック」Si 3ドア
ホンダ「バラードスポーツCR-X」Si
ZC型エンジンは、世界初の異形中空カムシャフトや小型軽量の4連アルミシリンダーブロックを採用するなど、徹底した軽量化を図っている。
ペントルーフ形燃焼室やセンタープラグ方式の採用、等長インテークマニホールドや4-2-1-2のエキゾーストシステムなどにより、135PS/6500rpmの最高出力と15.5kgm/5000rpmの最大トルクを実現する。
サスペンションは、フロントにトーションバー・ストラット式サスペンションを、リアにはトレーリングリンク式ビームサスペンションを採用。また、等長ドライブシャフトがエンジンパワーを均一に前輪へ伝え、発進時やコーナーリング時の安定性を高め、スポーティな走りを可能とした。
また、パワーバルジ付ボンネットは「Si」の証。ボディカラーと同色のカラードバンパーも施された。
ホンダ「シビック」Siの車両重量(5MT車)はわずか890kg。走りもそれに比例して軽快そのものだった。
また、水平基調の明るいインテリアに、サイドサポートアジャスター付ドライバーズシートを奢り、スポーツマインドを高めてくれた。
東京地区の車両価格も5MT車で137万6000円とお手頃。そのため、多くの若者がホンダ「シビック」Si 3ドアに飛びついたのだ。
さらに、1985年3月8日からは、ZC型エンジンを搭載したホンダ「シビック4ドア」Siも発売されている。
ワンダーシビック、とりわけ3ドアモデルは、当時人気だったカーレースの影響もあり、1600ccクラスを代表するスポーツハッチバックの地位を確立した。
後継モデルの通称〝グランドシビック〟では、1989年9月22日よりVTECエンジンを搭載した「SiR」「SiRⅡ」を発売。そして、1997年8月22日には、通称〝EK9〟で伝説の「タイプR」が発売されることになる。
その原点といえるワンダーシビックは、ホンダの80年代を代表する名車なのだ。
ワンダーシビックSiの中古車って買える?
大手中古車販売サイトで確認したところ、2021年2月中旬現在でワンダーシビックのSiは掲載されていなかった。
ちなみに、ワンダーシビックの無改造1300ccのセダンが、1986年式、走行距離8万7000km、5MT、白で195万円! にて掲載されていた。
ワンダーシビックの後継の〝グランドシビック〟のSiは数台が掲載されていたが、5MTモデルは200万円前後が相場になっている。
今後はZC型、VTECエンジンいずれかを搭載するオールドシビックの価格は上昇していくだろう。程度の良いモデルもごく少数になっており、すでにコレクターズアイテム化しているようだ。
もし中古でワンダーシビックのSiを見つけることができたなら、自分の幸運に感謝しよう。
※データは2021年2月中旬時点での編集部調べ。
※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
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文/中馬幹弘